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のん主演、映画「私をくいとめて」が日本版「アメリ」で最高だった

「私をくいとめて」という映画を見ました。

最近観た「おっさんずラブ」の林遣都ロスからの、のん&林遣都共演。綿谷りさ原作。

一人暮らしの30代の会社員女性(みつ子/のん)はお一人様を謳歌する日々だったが、仕事を通じて知り合った男性(多田くん/林遣都)とご近所仲間であることが判明、「お惣菜を渡す」仲に。二人で食べるわけでもない、多田くんから返されることもない、ただ渡すだけの関係(この設定、綿谷りさの天才がスパークしてる...)を1年続けたあと、徐々に距離が縮まっていく。

もうとにかく、のんさんの演技がめちゃくちゃよかった。「のんの一人芝居であり、のんファン以外には全部見るの無理」みたいな感想コメントも多かったけど、とんでもない。彼女の作品を見るのは初めて(あまちゃんですら観てない)の私でしたが、2時間越えの映画があっという間、あ〜〜終わらないで〜〜〜、って思うやつでした。

張り巡らされた自意識の幕を少しずつ上げて、緊張をしながらも、人に近づいていく。フランス映画「アメリ」と通ずる魅力があったなあ。(人に優しいけれど、妄想癖がありちょっと風変わりな女性アメリが、ちょっと風変わりな趣味を持つ青年と少しずつ近づいていくお話)

私はこういうの、相当好きらしい。

主人公みつ子は飛行機の離発着が死ぬほど苦手で、パニック発作的な描写がある。また、彼女が普段から話し相手にしているのは、自分自身であることを自覚しながらの「A」という人格(基本姿は見えないが会話できる)。

私自身はパニックで息ができなかったり倒れたりすることも、人格がいくつもあらわれることもないけれども、なんとなくわかる感じがする。

以下、めちゃくちゃ感覚的な話だけど…

作品を見ていると体の中で響くものがある。これはなんだろう?と心の中を追うと、音はないんだけど、周りに膜があることに気づく。逆にその音を感じられないから自分で何か生み出さなければ落ち着かず、ざわざわしている感じ。

人は何かを感じて、人に伝えて、人から伝えられて、その網の上で安心できるんだけど、一人でいると何を感じてもどこなもやれず全部自分で処理しなければいけない。自分に跳ね返ってくる。だから逆にうるさかったりするのかもしれない。現に私は一人でいると全然暇にならない。私は私の相手をしているから結構忙しい。

一人はどこよりも安全な世界だけど、この私一人では、一人でいることを制御しきれない。たぶんそれが孤独ということなんだろう。

このタイトルの穴埋め問題を解いていいなら、孤独と書く。私を(孤独から)くいとめて。

この映画を観て初めて感じたことだけど、もしかして私も、網の隙間から孤独の底へ落ちてしまいそうになっているのかもしれない。

サントラというか、この映画はこの曲のMVでもある、というくらい物語と密接な関係にある歌。曲も大滝さんの声もすばらしすぎて、観終わったあとずっと聴いてたし、歌ってました。明るくて、切なくて、前を向いていて、何度でも聴けます。やばい。


感想の続きをまだ言いたいんだけど、ちょっとネタバレになるので、それでもいい人だけ読んでね。





「つきあったら、私はどう変わるんだろう。」
「何も変わらない。俺が隣にいるだけだよ。」
「それなら私にもできるかもしれない」

私的なこの映画のクライマックスはここ。ただ俺が隣にいるだけ?そんなこと、あるんだろうか。いや、ない。絶対にない。お互い一人だった時のままではいられない。多田くんは、自分自身の一部であるAとは違うのだから。この二人だってつきあってみたら、変わるだろうしぶつかり合うだろう。それでも、こんな風に言ってくれるのって、私にとっては最高オブ最高。

林遣都さんの演技も、Aの前野朋哉さんの演技も本当に素晴らしかったです。なんにしたって、私も前向いて生きていこう。そう思える作品でした。(2022/2/26)

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