其の一 〜飲み会の途中で、さらりと帰ってみたい〜
「今日はこれくらいで帰るわ!楽しかった。また飲もうね!」
ずるい。本当にずるい。飲み会の途中で、これをさらりと言って帰れる人、ただただずるい。
"世の中には二種類の人間がいる"
というのは、自らが考えた二択を、冗談めかして発信する時の常套句。これに当てはめるならば
「世の中には、飲み会の途中でさらりと帰れる人間と、最後までだらだら居残る人間がいる」
になるだろうか。私は、後者だ。
"自分が帰ったあと、何か楽しいことが起きるんじゃないか"
これ。このどす黒い感情が心を覆い尽くす。自分が帰ったタイミングを見計らったかのように、今日一番の、もしかしたら金輪際起こり得ないほどの楽しいことが爆誕するんじゃないか。自分抜きの場で、いや、自分が抜けて、空気が変わったからこそ起こる何か。そこから始まる幸せ空間。考えれば考えるほど、おちおち帰ってなどいられない。情けない。
"気にせず帰れるやつ、バケモノか"
私が葛藤でもがき苦しんでる中、スッと立ち上がるアイツ。みんなに「え〜、帰っちゃうの?」と言われても、爽やかスマイルでさらりと。なんで、、、なんでそんな屈託のない笑顔で帰れるんだ。何なんだその余裕は。余裕のバケモノか。
"結局は何も起きない"
そう。起きないんだよ。何も。楽しいのは楽しい。でも、自分の人生を決定的に変えてしまうようなことなんて、何も起きやしない。何十回も、何百回も同じような時を過ごしてきて分かってるはずなのに…………
あ〜、やっぱりさらりと帰っておけばよかった