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私が大好きな泣ける曲。

皆さんにもありますか?
聴くと泣きそうになったり、自然に涙がこぼれ落ちてしまう曲。
私にも何曲かあります。

まずは「F.ショパン / 24の前奏曲作品28より第4番ホ短調」は心が少し寒い日に流れるともう自動的に涙がこぼれ落ちてしまいます。
元々「クリシェ」クリシェとは、コード内の一音を半音または全音で上行させたり下行させたりする作曲技法です)は作曲を学んだ時から大好きだったのですが、このショパンのメロディの美しさ+和声進行のグラデーションが絶妙で、繰り返した時ですら和声の色に変化があり、少し奏者に歌われるだけで泣きそうになります。この曲は不思議とコンサートだけではなく、
日常で流れても割と琴線に触れるようです。

例えばビートルズの「ミッシェル」もバスの半音進行のクリシェを使用していて、聞くと良い曲だなとも思いますし、少しほっこりしますが泣きそうにはなりません。

ところが、不思議な現象としてコンサートで聴いて涙がこぼれた曲と
録音でも駄目な曲。自分が弾くと涙が出そうになる曲とがあり、
よくよく考えてみるとやはり名演奏や想い出に関係している物、
そうでは無くて全く何もない状態でも音が流れると涙がこぼれそうな曲と色々なパターンがあることが分かりました。

コンサートで自分自身が嗚咽も無く持っていたプログラムが気が付くと
びしょびしょになるぐらい涙がこぼれた事が一度ありました。

1987年にスペイン留学中に奨学生として参加したサンティアゴ・コンポステーラの音楽講習会で、毎晩のように演奏会が開催されていて我々奨学生は全て無料でした。

その中の一つにピアニストのアリシア・デ・ラローチャの演奏会がありました。プログラムは前半がオールF,モンポウ、後半がオールE、グラナドス
(というのも彼女の叔母と母親はグラナドスにピアノを習っていたそうです!)という素晴らしいものでワクワクしながら、当日会場だったコンポステーラの大聖堂の中に入って行ったのですが、見たことも無いような
凄い人の数です!
奨学生は席が指定されていてありがたいことに割と良い席でした。
しかし、肝心の巨匠ラローチャが弾くピアノの下にまで座っているお客さんがいるのです。

しばらくすると、初老の貴婦人とラローチャが入って来たので「あぁ、譜めくりの方を連れてきたのかな!」と思っていたら、ラローチャが静かに
「今年亡くなった偉大な作曲家マエストロ・モンポウのオマージュとして今夜のコンサートは開催されて、前半は全て彼の曲を演奏すると決めたら、
私の親友のモンポウ夫人が今日ここに聴きに来てくれました」
と彼女を紹介すると軽く会釈をしたお二人がまるで連弾を弾くように隣り合わせで座ったのです。

モンポウ夫人はモンポウのピアノのお弟子さんで年が離れすぎており、スペインのそのころの保守的な世相感もあって、愛し合っていた二人なのですが、然るべき年に彼女がなるまで何年も結婚を待ってから結婚したことを知っていた私はこれだけで少し胸が熱くなりました。

そして、ラローチャの弾き始めた曲が、、。
モンポウの「内なる印象」という曲集だったのです。
第1番〈哀歌〉(第1曲~第4曲の連作)、
第2番〈悲しい鳥〉、
第3番〈小舟〉、
第4番〈ゆりかご〉、
第5番〈秘密〉、
第6番〈ジプシー〉
の全9曲から成る曲集なのですが、もう1曲目の和音の音から泣けました!今でも想い出すだけで泣きそうになります。


これが音楽の力なんだ!と感動して周りを見るとほとんどの方が
ハンカチを使っていてまたびっくり!
演奏会に来るまでは夕食中に友人たちと「折角ラローチャ聴けるのだから本当はイベリア全曲聴きたかったよね~!」なんて話してへらへらしていた自分が思わず恥ずかしくなりました。

でも、この後この曲を聴いて良い曲だなぁとは毎回思いますが、
これ以降泣くことはありません。
後にも先にもこれだけ涙がこぼれたのは、この日が最初で最後でした。

このラローチャの演奏会を聴けた事は私の一生の宝物です。

そして、ここまで音楽で人を感動させる事は、私自身の叶えたい夢でもあります。





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