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自作曲の想い出.1「チングルマの詩」

作曲日:1998年9月12~14日。
ある人の紹介で北アルプス黒部立山アルペンルートのコンサートが入るようになって4~5年経った頃だったでしょうか。佐藤弘和君と一緒に二重奏のコンサートで行こうという事になって、3泊4日の日程で立山の室堂から下った天狗平という所にある立山高原ホテルに向かったのです。

新幹線で越後湯沢まで行き、その後富山から富山電鉄に乗り換えて立山駅からケーブルカー高原バスでやっと着くのですが、その富山電鉄の中で
電車の中に他の乗客がいなかったこともあって、二人でギターを出してポロポロとつま弾いていました。ふと私が話した「佐藤君は作曲が出来るから良いね~!」という会話の中で彼が珍しく「シキさんも出来ますよ!むしろ向いているかも!」というので「ではここで一曲作ってみようかな」という事になりました。前から彼から習えるなら作曲をと思っていて事もあり、和声や対位法、形式学など、どんな風に教えてくれるかわくわくしていたのですす。
ところが彼はいつもの穏やかな表情で「では、まずはどんな曲にするかイメージしましょう!」というのです。丁度ホテルの前に高山植物のチングルマの群生場所があったので、長い冬の雪の下で耐えて、短い夏に可憐な花を咲かせた後は風車のような種子の形になり、また雪に埋もれるという話をすると「ではそれを音にしましょう!僕が採譜しますよ。」丁度調弦していたホ長調で前奏を作ると「おぉ!雪の降る感じですね!」と私が思ってもいない事を話して進めて行きます。「サビはⅡ-Ⅴでこんな感じかな?」と聞くと
「3拍子に変わったのですね。躍動的で短い夏が来ましたね」と続けます。
結局下書きが電車の中で出来て、ケーブルカーに乗り換えたのですが私は最初から最後まで魔法にかかったようで「え!作曲法は?和声学は?」と
悩んでいるうちに出来ました。最後まで私を乗せてくれるイメージの話しかしなかった記憶があります。

でも後年になって、彼の作曲法は本当に自然体で書いている事を知って
この時の事がやっと納得できました。

次に日に雄山~大汝山~富士ノ折立と2人で縦走したのも良い想い出です。

雄山頂上から後ろは剣岳

そして四半世紀経った今では、この曲は上海音楽院の教授の台湾のギタリスト葉登民さんがCDに入れてくれたおかげで、中国のサイトで本当に色々な方が弾いてくれています。あの時に電車の中で書いた曲が中国でこんなに弾かれている事は嬉しくもあり、今でも不思議な気持ちです。








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