メディアとの付き合い方を考える落語家たち
落語ネット配信に消極的だった桂まん我が、配信に踏み切った理由
「来たい人が来て、楽しんでくれればいい」と考えていたが、ある時、女性ファンからはがきが届いた。
「私は90歳を超えた高齢者ですが、独り住まいで家事なども自分でしています。落語会の連絡をいただいて、うれしく楽しみに待っていました。当日、家から出てみると、やっぱり出かけるのが怖くなり、出席をあきらめました。せっかくの機会なのに残念で残念でなりません」。はがきの両面が文字で埋め尽くされていた。
介護職に就くファンからは「職場の雰囲気はピリピリしていて、こんな時こそ笑いがほしい。チケットを購入したが、万が一でも職場の人に迷惑をかけるようなことがあってはならないと母に怒られ、キャンセルすることにしました」とメールが来た。
寄席というチームプレーを前提にしているとはいえ、落語が「ひとり芸」である以上、落語家としてどのように生きいていくか、どんな落語をどこで誰を相手にやるか、全てはそれぞれの落語家に任されている。
新型コロナウイルス感染拡大という環境の大変化により、それぞれの落語家は、メディア、特にネットメディアとの付き合い方について考えなければならなくなった。配信を、あるいはSNSを「やる」「やらない」どちらをとるにしても、落語家としての自分の生き方における大きな選択となる。
はっきりしたのは、地方在住者や入院患者から配信を希望する声がとても多いこと。このリクエストに答えるべきなのかどうか。難しい。
配信をやるとして、回線の問題から、ネタの選択、演出まで、考えることは山ほどある。ほんと、たいへん。
アマチュアの落語会主宰者として考えること
僕自身は、自身のキャパシティ(資金力を含む)から配信を手掛けることは今のところ諦めている。もともと「生落語の楽しさをシェアしたい・シェアしてほしい」というコンセプトを掲げてはじめた企画だし。いまのところは視聴者として楽しむだけで、自分で手掛ける気はない。
「自分だったらどんな配信落語をやるかなあ」と、そういう事はちょっと考えるけど。
むしろ、これも当初から考えていた「落語に関する情報流通の促進」を改めて進めていきたい。
SNSやブログなどによる情報拡散と、得意客を管理するeCRM的なアプローチは、生落語を楽しむ落語ファンを増やすためにますます必要になる。アマチュアながらも、この分野の仕組を少しでも進化させて、ITの力で落語家とファンの距離を縮めたい。
次回『シェアする落語』のご案内
そんな事を考えながらやってる落語会の宣伝を入れておきますね。
真打昇進を控えていまますます進化している柳家小太郎。初めて落語を聴く人から落語マニアまで、しっかりと楽しませる力を持っている。ただ自分で配信はやらないし、SNSはあえて使わない。そこには彼の考えがある。
なので、こちらでサポートしたいなと。
前回ご出演の様子はこちら。↓是非クリックしてご覧ください。
ご多分に漏れず定員を大幅に減らしていることもあり、すでにもう結構埋まっています。ご興味ある方はぜひご予約を。後でキャンセルも可能です。
よろしくお願い致します。