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炎の導火線
「ジャンプはやめてこっちを聴いてくれ」
と、ヘビメタとギターに狂っていた友達が言ったのは1984年の中1のことだ。
「あんなものはヴァンヘイレンじゃない」とも言っていた。
あんなものとはこれのこと。
今では間違いなく差し替えられるだろう、赤ん坊がタバコを持ってるジャケット。
ヴァン・ヘイレンのアルバム、「1984」。めちゃくちゃ売れた。その中の1曲「ジャンプ」がラジオでも流れまくり、洋楽を聴かない人でもイントロだけは知っているくらい流行った。
ギター好きの友達がこの曲の何が気に入らなかったのかというと、神と崇めるエディ・ヴァン・ヘイレンがキーボードを使っているからだ。
邪道だと言い切った。
「堀、こっちを聴いてくれ」と渡されたのがこちら。当時はCDじゃなくてレコードだったが。
デビューアルバム「VAN HALEN」、邦題は「炎の導火線」…
よくぞこんなタイトル考えたなと13歳の少年でもそのセンスにビビったが、ジャケットは最高にクールだった。
エディ・ヴァン・ヘイレンのギターが炸裂する。
YouTubeはおろかBSもCSも何もない時代、エディがギターを弾いているところが見たくても見る手段がない。
スピーカーから出てくる音を聴きながら、どうやって弾いているのか必死に想像したものだけど、さっぱりわからない。
レコードを返しに友達の家に行き、そのフェンダーのギターでちょっと弾いてくれよと頼んでみた。
ライトハンド奏法というんだけど俺にはできない、無理だ。と断られたけど、ダビングしたカセットテープをウォークマンで聴いてシビれるだけでも満足だった。
雑誌の写真を見てもエディはいつもニコニコしていたし、どの曲も基本的に陽気でハッピーだった。
エディと同世代のマイケル・シェンカーやゲイリー・ムーア。それより上の世代のジェフ・ベックやリッチー・ブラックモアはみんなしかめっ面で気難しい雰囲気で(イメージ戦略的にキャラを作っていたにせよ)、どこか親しめなかった。
泥臭いブルージーな曲調の往年のギターヒーローに比べて、ヴァン・ヘイレンは明るい、わかりやすい、超絶テクニックを出し惜しみしない。デュラン・デュランやカルチャークラブを聴いて喜んでいた中学生をロック好きに変えた。
あれから35年、これからも変わらずロックを聴き続ける最初のきっかけを与えてくれたヒーロー。
それが僕にとってのエディ・ヴァン・ヘイレン。
〜おまけ〜
ヴァン・ヘイレンのレコードを貸してくれた友達が、使わなくなったギターをやるよと言って青いフェンダーのギターと小さなアンプをくれた。
さっそく弾いてみたものの、指先の皮がめくれて流血。そのまま押し入れに眠ったまま…
ギターが弾ける人はそれだけで尊敬する。