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オークリーの帽子

25年くらい前、マリナーズのイチロー選手がかけていたサングラスが話題になった。あのスタイリッシュなデザインのサングラスはなんだ?

サングラス=「レイバン」だった時代。ティアドロップやウェイファーラーといった今も変わらぬ定番の形。でも、イチローのかけていたそれは見たこともない近未来的な優美さと鋭さで、日本の特にスポーツ選手の心を鷲掴みにした。

イチローのサングラスが欲しい!

「ネット検索」なんて言葉すらなかったので、そもそもどこのメーカーのサングラスかもわからない。調べようがない。

スポーツ雑誌や野球雑誌の記事からどうやら「Oakley」というメーカーらしいことがわかった。オークレイ?オークリイ?誰も正しい読み方がわからない…

次に入手した情報によると「とんでもなく高い」らしい。10000円出せばレイバンが買えるのに、その3倍はするらしいぞ…

到底買えそうもないが、一度実物を見てみたい。手の届かない高嶺の花だとわかるといっそう想いが募るのが人情というもの。東京の直輸入している店にしかないとわかり完全に諦めた。イチローの勇姿を見るだけで十分だと思った。

今の若い人には想像もつかないだろうが、日本に進出していなかった「オークリーのサングラス」とはそれほどの幻の逸品だったのだ。

ところが思わぬ形で本物を手に取り、さらには試着する機会が訪れた。ボブスレーの大会でカナダのカルガリーに行き、ショッピングモール内にオークリーショップがあったのだ!

このチャンスを逃してはいけない。日本では入手困難だ。値札を見ると日本で買うよりいくらか安い。買う気満々で試着する。

ところが、日本人向けモデルがなかった頃のオークリーを知る同年代の人たちはわかると思うけど、これがもう絶望的に似合わない…。

鼻が低くて顔がのっぺりとした、映画「テルマエ・ロマエ」風に言うと「顔平たい族」にオークリーのサングラスは無理なのだ。もっともレイバンだって似合いはしないのだが。

値段が高いのも厳しいが、似合わないのはさらに辛かった。イチローのカリスマ性が神々しかった。

喜び勇んでオークリーショップに入って手ぶらで出てくるのも寂しい。棚にキャップが置いてあったので冷やかしでかぶってみたらこれがピッタリ。頭が大きい自分にはサイズの合う帽子が日本ではまず売ってない。さすがカナダ、スケールが違う。

似合わないサングラスで受けたショックも、ちょうどいい大きさのキャップを手に入れて少しは和らいだ。

それから25年、今でも現役でかぶっている。全然傷む気配がなくて恐ろしく丈夫で長持ちしている。

ちなみにMade in ドミニカ共和国。さすがはドミニカン、タフな作りをしている。

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