231223_普通じゃない人生を生きる普通の人
2023.12.23.Sat.
先月、祖父が亡くなった。
忌中のまま年を越すことになる。
祖父。
お通夜、告別式と親戚と色々な思い出話の中
印象的な話がふたつ。
ひとつは、いつだって「(家族の)みんながちゃんと働いているか?」ということをずっと気にしていたらしいということ。
そしてそれが、彼自身が転職しながらも仕事は休まずに誇りを持ってやっていたというのに起因するだろうということ。
たしかに、ボケ始めたあと久しぶりに会ったら何十年も行っていないはずの「今日の仕事」の話をしてくれたっけ。
ふたつめは、「(父や叔母が)いい人と結婚した」と口癖のように言っていたという話。
我が子たちが、結婚をして家庭を持つ。時々家族を連れて顔を出す。
そんな日々が幸せだったのかもしれない。
84歳。
戦後、京都府北部の片田舎で思春期を過ごした祖父。
兄弟姉妹も多いお家で、人生も決して順風満帆だったわけではないと伝え聞く。
仕事を持って経済的に自立すること。
家庭を持って家族と暮らすこと。
これは日本社会で長らく「普通の幸せ」として描かれてきたことだ。
祖父が、我が子や孫や親戚に対して祈っていたのは
きっとその「普通の幸せ」を手に入れることだったのだと思う。
さて。
そんな祖父の通夜のあと、夜通し蝋燭の番をしながらやっていたのは、舞台「Marvelous! 須藤香奈の人生」の映像編集作業。
主人公の須藤香奈は「普通の人生なんてつまらない!」と、気づけば“天才舞台演出家”になっていた。
求められ続ける演出家。自分の才能と闘い続ける人生は、とてもとてもしんどそうだ。
だけど。
その走り続ける人生が、いつのまにか香奈にとっては普通になっているし、
その“普通じゃない”人生の中で香奈が抱く葛藤は、みんなが抱く“普通の”悩みだったりする
年が明けたら、一般向けの配信が始まる。
ぜひご覧ください。
「普通」の定義がどんどんと曖昧になっていく現代。
生きるって難しさを、命の終わりに直面してなお一層、感じている。