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【編集秘話】「下咽頭がん ステージ4」の宣告から『歯科医療のシステムと経済』出版まで 水谷惟紗久編集長 From being diagnosed with ``Hypopharyngeal cancer Stage 4'' to publishing the book ``Dental care system and economy''

 日本歯科新聞社で発行した書籍の制作の裏側をご紹介する【編集秘話】シリーズ。その書籍が生まれた背景や苦労話など、担当編集者だけが知る著者の人柄や魅力もお伝えします。


 今回の【編集秘話】は「歯科医療のシステムと経済 ―18世紀から21世紀まで」の水谷惟紗久(月刊『アポロニア21』編集長)。

水谷惟紗久(MIZUTANI Isaku)
Japan Dental News Press Co., Ltd.

歯科医院経営・総合情報誌 月刊『アポロニア21』編集長
1992年早稲田大学第一文学部卒業、1996年慶応義塾大学大学院文学研究科修士課程修了。北里研究所研究員(医史学研究部)を経て、1998年より現職。2009年早稲田大学大学院社会科学研究科修士課程修了。2017年より大阪歯科大学客員教授。日本医史学会会員。
趣味は中古カメラ集め。病気で声帯を失ったが、人口咽頭機を使いながら、講義や講演も行っている。
【著書】『18世紀イギリスのデンティスト ―歯科医療の起源、そして「これから」』『歯科医療のシステムと経済 ―18世紀から21世紀まで』(ともに日本歯科新聞社)


「下咽頭がん ステージ4」の宣告!

 『月刊アポロニア21』編集長の水谷惟紗久は、40代後半の若さで下咽頭がん・ステージ4の宣告を受け、2018年12月19日に手術をしました。
 1カ月後、退院してなんとか働き始めるも、取り切れなかった病巣の治療のため、再び2カ月入院して、放射線や抗がん剤の治療を受けることに。

 水谷編集長は、「声を出せないことは何とかクリアしていけると思っていたが、その時ばかりは絶望的な気持ちになった……」と言います。そして、「この先、治る保障もない今、自分が後に残したいことはなんだろう… …」と考え、思い立ったのが、本の執筆だったと言います。

入院中から、本の準備がスタート!

 「本なら、発行日が決まっている雑誌と違って、放射線治療などを受けながら、体調の良いタイミングを見て準備が進められる。ずっと、まとめたいと思っていた医療システムの歴史などを本にしよう!
 それから、アポロニア21で取り上げてきた大事な内容も、一緒にまとめよう!」 そう考えて、必要な資料をそろえて入院しました。

 体調の波に翻弄されながら、【第1章 歯科医療システムの過去と未来】の準備が始まったのです。

 看護師さんから、「水谷さん、パソコンのキーボードの音がうるさいって、周囲から苦情が入ってますよ!」と怒られながら…。

※闘病の詳細は、『アポロニア21』2019.6月号「安田登編集室」に掲載

安田先生と、久保寺先生にご協力をお願い!

 退院後は、接着『月刊アポロニア21』でおなじみ、接着歯学の第一人者、安田登先生に、【第2章「21世紀の歯科が見える15のキーワード】について相談しました。

 すると、「水谷君、働きすぎだよ! 病気で入院したんだからもっと休んだほういいよ!」と心配し、執筆・編集をお手伝いしてくださることに。

 次に相談したのが、『アポロニア21』で、長年、国内外のデンタルショーについて報道してくださっている久保寺司先生(東京都開業)です。

 久保寺先生は、「ちょうど、デンタルショーレポートの流れをまとめる重要性を考えていたので、驚きました」と、執筆を快諾してくださり、【第3章 国内外の展示会から見えたデンタル器械市場の動き】の掲載も決まりました。

「忖度しない」3人組

 この3人の共通点を勝手に挙げさせていただくとしたら、ズバリ、極めて「忖度しない」こと。だから、周囲から支持される、本音の報道をしてこられたのではないかと思います。

 本の校正では他に、以下の先生方にもご協力いただきました。

赤司征大 先生(ホワイトクロス代表)
二木立 先生(医療経済学者)
深井穫博 先生(深井保健科学研究所所長)
石井拓男 先生(東京歯科大学 社会歯科学研究室)

本の仕上がり日が偶然にも!!

 こうしてつくった本が出来上がったのが、偶然にも、水谷編集長の手術日から一年後の2019年12月19日でした!

 ちなみに水谷編集長の体調は…。「タバコをやめて、お酒もほとんど飲まなくなったので、ごはんがおいしい!」。料理の腕もどんどん上がっているとのこと。

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大好きな納豆も、ますますおいしく

 声が出ないことも、「周りが心配するほど不便はない。電気式の人工咽頭機を使ってるから、取材もできるし……」と、平然としています。

人工咽頭機
声を出すための人工咽頭機
人工咽頭機wo
喉に押し当てると声が出る

 某社長のセリフが傑作です。「水谷さんは元々変わってるから、機械を使って話していても、以前よりもう少し変わった人になったというだけ 」。

 心配して応援してくださったみなさま、本当にありがとうございました。


「歯科医療のシステムと経済 ―18世紀から21世紀まで」の立ち読み動画



【追記】

 記事を読んで、「人口咽頭機ってどんなもの?」と思った方も多いと思います。
 水谷が話している様子は以下の動画からも、ご覧いただけます。ご興味がありましたら、ぜひ視聴してみてください。  



この記事を書いた人
水野麻由子【日本歯科新聞社制作局】
制作局ディレクター、歯科出版アドバイザー。歯科医院経営・総合情報誌『アポロニア21』の企画・編集に25年以上携わり、経営書を中心に50冊以上の書籍を企画・取材・編集。
ヒトの「肩書」と「顔」がなかなか覚えられないが、才能は忘れない。ヒト、モノ、会社などの「ここがすごい!」という光っているところを見出すのが得意かも。
〔主な担当書籍〕
『歯科医院デザインCatalog』シリーズ
『「歯科プロサポーター」24人に聞いた・よくある経営の悩みと解決法』
『歯科医院のラクわかり経営学』
『100円グッズから始める 歯科医院の整理・収納アイデア集』
『事例に学ぶ・歯科法律トラブルの傾向と対策』
『歯科医院のためのTHE指導・監査』
『食べる・飲むメカニズム』

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