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揉めるのは普通!「医院の親子承継」3つのトラブル予防法 —歯科雑誌編集者が見た、聞いた
こんにちは。日本歯科新聞社です!
今回は、よく見聞きする、歯科医院の親子承継のトラブルについて考えます。
歯科専門の経営コンサルタントの先生は、
「私たちの目の前で、親子で取っ組み合いのケンカが始まるのもザラだよ!」
とおっしゃっていました。たしかに、
「一緒に働く父親とのストレスから、酒浸りで体がガタガタ…」
「息子が院内のルールを勝手に変えて、スタッフが困惑している…」
そんなふうに、カラダも医院もこじれて大変なケースをたくさん見聞きしてきました…。
1994年から歯科医院経営誌『アポロニア21』の取材などを通して得た見聞を元に、3つのトラブル予防法をご紹介します。
1. お金の情報を共有しましょう!
「子息が医院を継ぐかもしれない…」、そう考えた院長にまずお勧めしたいのは、お金に関わる情報を書き出すことです。
① 土地・建物の「権利」「預貯金」「証券」などの資産
② 銀行などからの借り入れ(完済時期)の状況
③ 設備・器材・サービスなどのリース契約
④ 大まかな医業収支
⑤ その他(相続に関係すること)
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「問題はお金だけじゃない!」と思うかもしれませんが、まずは資産、借金に関する情報が共有できれば、承継のメリットやデメリットが見えやすくなります。
例えば、承継に関わるお金の行方を考えただけで、「やっぱり継がせるべきじゃないかも…」「思ったより継ぐメリットがないかも…」などの判断も付きやすくなります。こうした決断は、早い方がお互いのダメージが少なく済むはずです。
【失敗事例:お金の話があいまいだったために…】
●「初期投資が少なく済むと思ったら、高額器材がリースだったなんて!」と、子息が継いだことを後悔
●父が亡くなったとたん、兄弟から「医院が建っている土地を売って、お金を分けろ!」と言われ、閉院せざるを得なくなった
家族間の事業承継では相続問題が切り離せないため、お金の問題を整理しておくことがトラブル予防には大切のようです。「妻や事務長が把握していて、私は分からないんだよね…」という院長は、この機会にぜひ把握することをお勧めします。
2. 情報を活字にして共有しておきましょう
次に、お金以外の「医院の現状」「決め事」「これからの予定」などの情報を共有するのに大事なのは、何と言っても活字にすることです!
患者さん・スタッフとのコミュニケーションと同じで、「言った」「言わない」のトラブルを避けるために重要なことです。
さまざまなトラブルを見てきた経験から、以下の項目も書いておくと良いと感じます。
・交代予定時期
・交代前の、子息の勤務形態や予定給与
・交代後の、親の勤務形態や予定給与
・決定権の確認(例えば、「院内の診療・運営の決定は、その時点での開設者が行う」など)
【失敗事例:曖昧なままスタートしたために…】
・いずれ分かってくれるだろうと、細かい話はせずに息子を呼び寄せた。後で事情を知った嫁が怒り、他県に引っ越してしまい、孫とも会えなくなった
・「どうせオレが継ぐのだから」と、息子が医院のルールを勝手に変えてしまい、困惑したスタッフが現院長に苦情
親子承継では、「聞いてない。知っていたら継がなかった!」など、曖昧なスタートに起因するトラブルが多い印象です。
「分かってくれるだろう」「そのうち何とかなるだろう」といった希望的観測で失敗するのもありがちなパターンです。
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頭のチャンネルを「家族→ビジネスの承継相手」と切り替えて、最初にきちんとした情報共有と決め事をしておくことが、トラブル予防のカギになりそうです。
3. 第三者を活用しましょう!
承継について話し合う場合、お勧めなのは第三者に立ち会ってもらうこと。
顧問契約している税理士、会計士、コンサルタントなどに、「今度、息子が一緒に働くことになるかもしれないので、大まかな医院の状況を説明しておきたい」と、紹介がてらの立ち合いをお願いしてみましょう。
第三者が介在した方が、親子でも、お互いにビジネスの話と、覚悟を持って話し合うことができるのではないでしょうか。
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【失敗事例:親子2人だけで話したために…】
・「医院を継いでほしい」と父に言われ、「医院の理念」などを言われたが、経営の数字については父も知らないようだった。あとで妻にお金の話について聞かれたが、答えられなかった
・開業30年以上の歯科医院。保険中心で高齢の患者が多い。承継の意志を息子に伝えたところ、「時代遅れの医院を継ぐメリットがよく分からない」と言われ、何も答えられなかった
親子で話をすると、「自分は患者さんのためにがんばってきた!」など、感情的な話に終始してしまうことが少なくないようです。
税理士さんなどに事前に相談すれば、「承継を考えるなら、このようなことを説明しておいてはどうですか?」などのアドバイスも期待できます。上手に周囲の力を借りましょう。
まとめ
「親族ゆえに、漠然とスタートしてしまった」というのが、後々のトラブルの原因になることが多いようです。
事業承継という意識を持って、「現状・これからの情報共有」を活字化し、第三者の力も借りて話し合うことが、後々のトラブルを防ぐカギとなりそうです。
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【「9章:承継・売買・閉院」の目次】
Q.これから親の医院を継いで改装もする予定。どう進めていけばいいのか?(回答:岩渕龍正)
Q.父から承継するタイミングと、何を準備すればよいかが分からない!(回答:原 裕司)
Q.実家の医院に勤務し始めた。高齢の患者さんが多く、将来が不安。(回答:本多隆子)
Q.そろそろ父から院長を交代してもらう予定。父に退職金を支払うべき?(回答:角田祥子)
Q.親が理事長をしている医院で院長になったが、スタッフが私の指示に従ってくれない。(回答:小原啓子)
Q.後継者がいない。事業承継をしたいのだが…。(回答:木村泰久)
Q.親から医院を承継することを決めたが、何から手をつければよいか分からない。(回答:渡辺貴之)
Q.親子承継で、税務面での問題があると聞いた!(回答:渡辺貴之)
Q.勤務医(親族外)に承継する場合、何に注意すればよいか? (回答:渡辺貴之)
Q.医療法人の売却を「社員」から反対された。理事長の独断ではダメなの? (回答:黒田めぐみ)
Q.後継者がいないため売却を考えている。売却しやすい医院とはどのようなものか? (回答:渡辺貴之)
Q.売却する際、あらかじめ気をつけるべきポイントは? (回答:渡辺貴之)
Q.売却後に起きやすいトラブルが知りたい!(回答:渡辺貴之)
Q.承継・売却するのに良いタイミングを知りたい(回答:小畑 真)
この記事を書いた人
水野麻由子【日本歯科新聞社制作局】
制作局ディレクター、歯科出版アドバイザー。歯科医院経営・総合情報誌『アポロニア21』の企画・編集に25年以上携わり、経営書を中心に50冊以上の書籍を企画・取材・編集。
ヒトの「肩書」と「顔」がなかなか覚えられないが、才能は忘れない。ヒト、モノ、会社などの「ここがすごい!」という光っているところを見出すのが得意かも。
〔主な担当書籍〕
『「歯科プロサポーター」24人に聞いた・よくある経営の悩みと解決法』
『歯科医院のラクわかり経営学』
『100円グッズから始める 歯科医院の整理・収納アイデア集』
『事例に学ぶ・歯科法律トラブルの傾向と対策』
『歯科医院デザインCatalog』シリーズ
『歯科医院のためのTHE指導・監査』
『食べる・飲むメカニズム』