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【アポロニア21編集部対談】編集者がたどり着いた「持続可能な医院経営」

 歯科医院経営・総合情報誌『月刊アポロニア21』が、2023年の12月号で、
創刊30周年を迎えました。
 記念として掲載した編集長と副編集長の対談の中から、「持続可能な経営」についての話を抜粋してご紹介します。
 今までたくさんの開業医の先生と出合ったから見えた考察を、雑誌に書ききれなかった本音も交えて語ります!

【対談】
■『月刊 アポロニア21』編集長 (㈱日本歯科新聞社/1997年より在職)
水谷 惟紗久(みずたに いさく)

■『月刊 アポロニア21』副編集長(㈱日本歯科新聞社/94年より在職)
水野 麻由子(みずの まゆこ)

◆ 医院経営の成功モデルって?


水谷編集長 よく「歯科医院経営の成功モデル」について聞かれることがあるけど、答えはひとつじゃなくて、多様な方向性があると思う。
 「ドクター一人で専門性を高める」でも、「郊外の大規模医院で、多くの歯科医師・歯科衛生士とシステマティックに働く」でもいいんだけど、結局のところは「自分自身が歯科医師として満足できるか」が重要なんじゃないかと……。

水野副編集長 たしかに、【「今、キッズモデルがもうかるらしい」という話を聞いて小児歯科の専門クリニックをつくった歯科医師が、開業後に「自分は子どもが嫌いだった」と気付いて絶望した】【「早く臨床から手を引いて経営に特化するのが成功」という話を聞いて外来に出なくなった院長が、毎日がつまらなくなってしまった】などのを聞いたこともあります。
 他人の話を聞いて「〇〇が成功」と思い込み、自分の苦手なことをメイン業務にしてしまうと、「院長のエネルギー効率」を損なってしまうと思っています。

水谷 エネルギー効率?

水野 結局、得意なことをしているのが、一番疲れないというか……。無理して苦手なことをすると、患者さんからの評価も下げてしまいます。治療内容にしても、診療スタイルにしても、得意なことに集中してもらった方が、医院の経営もうまくいくと思うんです。

◆ もはや、一人では頑張れない時代


水谷 たしかに、自分に合わない経営モデルを導入して、医院がおかしくなった例は、今までたくさん見てきたかも……。
 他のドクターに、「すごいすごい」と言われていろんな雑誌から引っ張りだこだった先生が、数年もたたないうちに噂を聞かなくなったりなんてザラだし。編集者から見て「周りが憧れるような短期的な成功」は要注意だと感じる。
 万人に共通の成功モデルがあるのではないところが、経営の面白さかもしれない。
 とはいえ、現在はある程度、歯科医院が大型化していくことは避けられない面がある。診療報酬も、かかりつけ歯科医機能強化型歯科診療所(か強診)など、規模拡大を後押ししている気がするし。
 そうなると、「採用」「人事・労務」「感染対策」「マーケティング」など、得意なこと以外にも多くの責任と業務が院長にかかってくる。
 ボクは、うまくいっている先生は、周囲の力を上手に頼っているなと思ってる。信頼できる税理士さん、コンサルタントなどにサポートしてもらったり。もちろん、それにはコストもかかるし、互いの相性も大事だったりするんだろうけれど。

水野 一人で全部やるというのは、難しいですよね。人事労務の面でも、大企業並みの整備が求められる時代ですからね。歯科医院経営は大変なのだとあらためて思います。

◆活躍し続ける条件


水野 今まで、取材などを通して活躍する先生を見続けてきて、真面目なだけだといつか心やカラダが折れてしまう……というのも痛感しています。
 活躍している先生は、当然、理想が高い傾向にあります。理想が高い分、理想通りにならない自分やスタッフにジャッジする時間が長く、エネルギーの消耗が激しくなります。
 そのことを自覚せずに、「短距離走」的に全力疾走し続けてしまうと、あるときバタッと倒れる…というシーンに何度も出合いました。

水谷 それって、歯科医師の先生に限らずだけどね。自分でどれだけ無理してるかなんて、なかなか分からないから……。

水野 水谷さんも下咽頭がんステージ4を経験してますからね…。
 バタッと倒れた時点で、自分の無理に気づいた先生が、生活スタイルや考え方を変えると、また元気になっていくんですよね。
 「リフレッシュも大切な仕事」と気づくのが大事だと思います。
 「患者さんに感謝する」「周りに頼る」「ある程度のミスを許す」「休息の時間、楽しむ時間を大切にする」などの姿勢になると、顔色も良くなっていきます。
 持続可能な歯科医院経営のためには、ゆるさを意図的に保つことが求められる時代になってきたと実感しています。

 水谷 ボク自身、がんを経験した後、「できること」「できないこと」「しなくても良いこと」に分けて、「できること」から優先的に手を付けるようにするようになり、気が楽になった感じかな……。
 「〇〇でなければダメ」などの「べき論」から、少し距離を置くことが、何ごとにおいても持続可能な仕事につながるんじゃないかと思う。



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