「歯科技工現場の本音は一つじゃない」月刊『アポロニア21』水谷編集長の余談ノート2022年8月
医院経営の情報誌である本誌でも、歯科技工に関するテーマを扱う機会が増えてきました。取材させていただくのは、歯科技工士だけでなく、歯科医師、企業経営者なども含まれます。
特に技工関連の取材では、予定調和のようなインタビューになることはなく、どんなテーマで、どんな落としどころの記事にすればよいか分からず冷や汗をかくことが珍しくありません。ところが、後々まで「楽しかった」と思い出すことが多いのです。それだけ歯科技工関係者の本音が複雑だからかもしれません。
例えば、「勤務時間は長いのに、収入は多くない」という訴えは、技工士会や保険医協会などから盛んに出されてきましたが、一方で、「そんなことを言うから、若い人が技工業界に来なくなる」と、苦々しく思っている歯科技工士養成校、大手ラボ経営者も少なくありません。どちらがより正しいとは言えず、どちらも恐らく業界の本音なのでしょう。
今回、日本歯科技工士連盟の佐藤幸司氏から、「歯科技工は製造業か医療か」という長年のテーマについてご意見をいただきました。「歯科技工はサービス業として、裁判で結論が出ている」という趣旨ですが、国際的には一貫した見方がありません。
悪くいえば「どっちつかず」だった日本の歯科技工は、同じ「ラボ」と言いつつ、さまざまな業態が同居。近年では、患者さんや他職種とのコミュニケーション能力が求められる場面も少なくなく、養成校でもカリキュラムに盛り込む例があります。それだけ産業としての伸びしろが大きいということかもしれません。