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「歯科技工現場の本音は一つじゃない」月刊『アポロニア21』水谷編集長の余談ノート2022年8月

本原稿は『アポロニア21』の2022年8月号の「編集後記」を改変したものです。

 医院経営の情報誌である本誌でも、歯科技工に関するテーマを扱う機会が増えてきました。取材させていただくのは、歯科技工士だけでなく、歯科医師、企業経営者なども含まれます。
 特に技工関連の取材では、予定調和のようなインタビューになることはなく、どんなテーマで、どんな落としどころの記事にすればよいか分からず冷や汗をかくことが珍しくありません。ところが、後々まで「楽しかった」と思い出すことが多いのです。それだけ歯科技工関係者の本音が複雑だからかもしれません。
 例えば、「勤務時間は長いのに、収入は多くない」という訴えは、技工士会や保険医協会などから盛んに出されてきましたが、一方で、「そんなことを言うから、若い人が技工業界に来なくなる」と、苦々しく思っている歯科技工士養成校、大手ラボ経営者も少なくありません。どちらがより正しいとは言えず、どちらも恐らく業界の本音なのでしょう。
 今回、日本歯科技工士連盟の佐藤幸司氏から、「歯科技工は製造業か医療か」という長年のテーマについてご意見をいただきました。「歯科技工はサービス業として、裁判で結論が出ている」という趣旨ですが、国際的には一貫した見方がありません。
 悪くいえば「どっちつかず」だった日本の歯科技工は、同じ「ラボ」と言いつつ、さまざまな業態が同居。近年では、患者さんや他職種とのコミュニケーション能力が求められる場面も少なくなく、養成校でもカリキュラムに盛り込む例があります。それだけ産業としての伸びしろが大きいということかもしれません。

この記事を書いた人
水谷惟紗久(みずたに いさく)
歯科医院経営総合情報誌『アポロニア21』編集長。
1969年生まれ。早稲田大学第一文学部卒、慶応義塾大学大学院文学研究科修士課程修了。
社団法人北里研究所研究員(医史学研究部)を経て現職。国内外1000カ所以上の歯科医療現場を取材。勤務の傍ら、「医療経済」について研究するため、早大大学院社会科学研究科修士課程修了。
 主な著書に『18世紀イギリスのデンティスト』(日本歯科新聞社、2010年)、『歯科医療のシステムと経済』(日本歯科新聞社、2020年)など。10以上にわたり、『医療経営白書』(日本医療企画)の歯科編を担当。大阪歯科大学客員教授(2017年~)。
 趣味は、古いフィルムカメラでの写真撮影。好きな食べ物は納豆。2018年に下咽頭がんの手術により声を失うも、電気喉頭(EL)で取材、講義を今まで通りこなしている。

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