忍殺TRPGソロリプレイ【ウィズアウト・ソング】
◇前置き◇
ドーモ。しかなです。当記事はしかながニンジャスレイヤーTRPGのシナリオを遊んだ結果を元に作成したテキストカラテ……所謂リプレイとなります。気楽に読めるよ。
前回のヤクザ事務所に引き続き、今回も公式のサンプルシナリオに挑戦していきます。
挑戦者は女の子大好きディスグレイス。果たしてなにが起こるのか。青少年のなんかは大丈夫なのか?
とりあえずやってみよう。よろしくおねがいします。
◇ダンゴウ◇
ヤモト・コキ。アラバキ・ブシド・ハイスクールの女子高生。アーチ級のニンジャソウル憑依者。既にスカウトを打診したソウカイニンジャを含め、何名かのニンジャとクローンヤクザを殺害。
「今までチョコマカと逃げ回ってイラつかせてくれたもんだが……ようやく潜伏先がわかった。シルバーカラスってニンジャを知ってるか?」
「いえ、寡聞にして」
元ブラッドカタナ・ヤクザクラン事務所にて、油断ならぬニンジャたちのダンゴウが行われていた。ミコー装束の女を見やるスーツ姿の男。その顔はシリアスだ。
「俺様にとっちゃ知らねえニンジャでもねェ。フリーランスだが……テメェが爆発四散させたブラックマンバとかいうサンシタとは比べ物にならん手練れだ。カラテだけ見るんならテメェと互角かそれ以上」
「……その者が、ターゲットを保護していると?」
「どういう風の吹き回しか知らんがな。なんにせよ、テメェがやることはシンプルだ……そいつの自宅に殴り込んで、ガキを捕まえてこい。シルバーカラスの野郎にはオトシマエをつけさせてやれ」
ミコー……ディスグレイスは眉根を寄せる。捕獲任務。それなりの使い手をいなしながら。成る程、たしかに『歯応え』がある。
いずれにせよミッションを拒否するつもりはない。彼女とてスーツの男……ソニックブームと同じ、スカウト部門である。
「かしこまりました。それで、シルバーカラス=サンの所在というのは?」
「マンション『せなまし』のB棟303号室」
「成る程……エッ?」
聞き覚えのある名前に、ディスグレイスは思わずソニックブームを見つめる。隣に座る少女、キールバックも同様だ。ソニックブームは呆れたような目で彼女らを見返した。
「そうだ。テメェらがヨロシクやってたあのマンションだ。……そもそも連中のヤサが割れたのも、テメェんとこのシャープキラー=サンがタレコミ入れてきたからだ」
彼は一口チャを啜る。目の前に運び込まれていた重箱からマグロ・スシを取り咀嚼。
「そこも含めてテメェにお誂え向きだッて言ってんだよ……いい機会だ。ご近所にアイサツでもしてこいや」
「は、ハイ。その、人員はこちらで調整しても?」
「好きにやれ。ガキを逃さねえよう、こっちからもクローンヤクザを何体か送ってやる。他に質問はねェな? 後はよしなにやれ」
◇事前準備◇
「足元は見えない、とはよく言ったものですね……」
ソニックブームの前を辞したディスグレイスがまず向かったのは事務所の電算機室。フリーランスのニンジャでソウカイヤと接触のないものなどほとんどいない。現にシルバーカラスとてソニックブームと面識があった。
つまり、ソウカイネットへの接続履歴も残っている。そこを遡り更に情報を得ようというのだ。ハッキングそのものは然程の難易度でもないが、さてどこまで深く潜れるか。
ディスグレイス:ハッキング
8d6 → (1.3.3.3.3.5.6.6) テンサイ!
数秒後、彼女は口角を吊り上げた。シルバーカラスのUNIXを完全掌握! データのみならず、そのカメラやマイクまでをも支配したのだ。つまり奴らの生活パターンは筒抜け!
「キールバック=サン、シャープキラー=サンに連絡を。念には念を入れます」
「ハイヨロコンデー」
背後に控えていた妹分に声をかけてから、彼女はベストの襲撃タイミングを割り出す。例えば例の女子高生が入浴している時間帯に攻め入れば……
■ハッキング成功により、初期配置を操作な■
■なお今回は縮小版マップを使う■
「……ん」
ハッキングを終えようとしたディスグレイスはとあるログに目を留めた。カギ・タナカなる男の通院履歴。その病状……
「どうかされましたか? お姉さま」
「いえ。……ブッダも意地の悪いことをなさる」
首を傾げるキールバックに構わず、ディスグレイスは立ち上がった。己のやることは変わらぬ。殺し、奪う。それだけだ。
◇本編開始◇
「フーン、フフーン……」
薄汚れた路地裏を歩くセーラー服の少女あり。頭上に天蓋めいて張り巡らされたLANケーブル網から滴り落ちる重金属酸性雨の滴を避けながら、彼女は背後を振り返る。
その視線の先、路地裏交差点地帯に並んで立ち尽くすのは四つ子めいた男たち。揃いのスーツ。揃いのサイバーサングラス。威圧的だ。
だが少女が恐れる様子はない。当然だ。彼女は彼らが忠実な生きたバリケードであることを知っている。
「フンフーン、フフフーン……」
ご機嫌に鼻歌を歌いつつ、少女はマンションの前で立ち止まる。そしてLANケーブル天蓋の隙間から覗く四階の一室に視線を定め、朗らかに笑みを浮かべた。
彼女の名はシャープキラー。無慈悲なるソウカイニンジャの一人である。
ニンジャ名:シャープキラー
【カラテ】:7(+1) 【体力】:8/8
【ニューロン】:5(-1) 【精神力】:4/4
【ワザマエ】:7(+1) 【脚力】:6
【ジツ】:1(カラテミサイル) 【万札】:1
近接攻撃ダイス:9
遠隔攻撃ダイス:5
回避ダイス:9
【特筆事項】:
【名声】:7
**バスタード・カタナブレードツルギ**はアジトに保管
【装備品】:
カタナ
【サイバネ】
▶︎ヒキャク
▷ブースターカラテ・ユニット
【スキル】:
●連続攻撃2、●連射2、●疾駆
○キラーマシーン教育
【説明】
アサシン養育施設「アシサノ私塾」の出身者。
持ち前の身軽さをサイバネ脚で補強し、イアイで敵を仕留める。
しかしもっとも恐るべきはその執念深さと残忍性だ。
SK:ポイント到達 いつでもOK
DG:今キールバック=サン解錠中。少し待つ
「少し、ね」
大して時間は掛かるまい。シャープキラーは頭上を仰ぎ、最適な侵入経路を計算する。ディスグレイスとの任務。心が躍る。
キールバック:解錠
8d6 → (1.3.3.3.3.4.5.6) 成功
ピポッ。メッセージの着信!「イヤッハー!」シャープキラーは内容を確認することなく跳躍! キールバックのことだ。この程度は造作もなくこなすだろう。
彼女は壁を、看板を蹴り上がり、そのままターゲットのいるベランダを目指す……!
◇侵入:1ターン目◇
音もなく駆け込んでいった。キールバックの背を見守り、ディスグレイスは微笑した。そして背後に控えるクローンヤクザ二名に簡易なハンドサインで待機命令を送る。足止めとしては役に立つだろう。
もっとも、まずはこの部屋からターゲットを逃走させないことが肝要。そのためにわざわざこの時間帯を選んだのだ……浴室から微かにシャワー音。
ディスグレイスは悠々と室内にエントリー。待機していたキールバックの肩を叩き、浴室への扉を指差す。無言で駆けていく影を見ながら、ディスグレイスはベランダへ視線を向けた。そこで示し合わせたかのようにシャープキラーが着地。
ここまではパーフェクト。次はターゲットのカラテ次第だ。
◇◆◇◆◇
敵意が迫っている。ヤモト・コキが気づいたと同時、浴室の照明が落ちた。次いで駆け込んでくる影!「イヤーッ!」「イヤーッ!」投擲されたクナイをかろうじて回避!
だがそれでは足りぬ。ヤモトの卓越したニンジャ第六感は密かに迫る危機を察知! 半身に構えを直す! その脚すれすれをなにかが掠めていくのを感じ、彼女は背筋を冷やした。
キールバック:生体弾フェイント
(1.2.3.6.6)(1.3.3.5.6)
ヤモト回避
(4.5)(2.4)
「ニンジャ反射神経はそれなりのようですね。ドーモ。ヤモト・コキ=サン。キールバックです」
「……ドーモ。キールバック=サン。ヤモト・コキです。あンた、一体……!」
◆ヤモト・コキ (種別:ニンジャ)
カラテ 3 体力 3
ニューロン 5 精神力 5
ワザマエ 5 脚力 3
ジツ 5 万札 1
◇装備や特記事項
カルマ:善
装備:カタナ
スキル:『オリガミ・ミサイル』
◇『オリガミ・ミサイル』:ヤモトは【精神力】を消費することなく『カラテミサイル』を使用できる。
「想像もつかない? ずいぶんと呑気だこと」
暗闇の中、ヤモトの瞳だけが桜色の輝きを放っている。押し入ってきたのは自分と同じく女で、ニンジャ。身体中にベルト巻きつけたクナイと背負うカタナが威圧的だ。
「面倒なので用件だけ言いますね。私たちと一緒に来てください。おとなしく従ってくれれば、あなたの同居人は見逃してあげても」
「イヤーッ!」「イヤーッ!」
ヤモト:カラテ
(1.2.3) 失敗
慣れぬカラテ・パンチはいとも容易く捌かれる。キールバックの眉間にシワが寄った。
「抵抗する気なんですね? まあいいですけど。そんななりでどこまでやれるか、見せてください」
立ちはだかるニンジャは自分よりも小柄だ。しかし状況故か見た目以上の威圧感がある。ヤモトは状況判断した。ここは狭すぎてオリガミが飛ばせない。なにより……服とカタナを回収する必要がある!
◆◇◆◇◆
「キールバック=サン、おっ始めた? ヤモトチャンだっけ。オフロに踏み込んできたのが男じゃなくてよかったよね。不幸中の幸い……アハッ」
「無駄口を叩くのをやめなさいなシャープキラー=サン。遊びに来たのではないのですよ」
ディスグレイスは眉を潜め、シャープキラーを咎める。当の少女は既に室内に上がりこみ、我が物顔でリビングのUNIXを弄っていた。
「もう少し緊張感をもったらどうなんです? ここは既に敵陣……」
「ダイジョブダッテ。ディスグレイス=サンもいるんだからさ……よし!」
パワリオワー! UNIXが派手な電子ファンファーレを吹き鳴らす! ディスグレイスは肝を冷やした。
「ちょっと!」
「ン? アー、ゴメンね? けどもう向こうも気づいてるでしょ。変わんないって」
「いい加減にしなさい! ならば余計に遊んでいる暇がないことはわかるでしょう!?」
「重要そうなデータはさっさと回収しとかないと。フリーランスなんかディスグレイス=サンと私がちゃっちゃと片付けちゃうからね!」
シャープキラーは変わらぬ朗らかな笑み。UNIXから回収したフロッピーディスクを大事に胸元へ仕舞い込むと、リラックスした様子で立ち上がった。
シャープキラー:ダッシュ移動
シャープキラー:アンコモントレジャー回収
1d6 → 5 「暗黒メガコーポ機密データフロッピー」獲得
◇2ターン目◇
ディスグレイスは苦い顔をする。やはりこの小娘は連れてくるべきではなかったか? しかし敵はフリーランスとはいえあのソニックブームに一目置かれるニンジャ。不確定要素は可能な限り少なくしておかなければ……
「イヤーッ!」「ンアーッ!? い、イヤーッ!」「イヤーッ!」「ンアーッ!?」
キールバック:専念生体弾フェイント
(1.2.4.5.6)(1.2.3.5.6)
ヤモト回避
(1.6)(2.2) 【体力】3→2
ヤモト精密
(1.2.5.6.6)
キールバック回避
(2.2.4.4.5.6.6.6.6)
カウンター! ヤモト【体力】2→1
浴室から響くカラテシャウトと悲鳴を、彼女は他人事のように聞き流す。アーチ級ソウルの持ち主といえど、憑依して時間が経てばその力も落ち着いてくる。浴室内という閉鎖空間で頼りのジツを封じられたニュービーがキールバックに敵うものか。
シルバーカラス:発作
1d6 → 6 起こらず!
「イヤーッ!」
そこを風めいて鈍色の影が襲った。ディスグレイスは目を細め「イヤーッ!」「イヤーッ!」強烈な斬撃を弾き飛ばす! だが彼女は眉根を寄せた。反撃のカラテもまた同じ運命を辿ったからだ。飛び離れた相手に向け、ディスグレイスはオジギを繰り出す。
シルバーカラス:強斬撃
(1.3.3.3.4)(2.2.3.3.4)
ディスグレイス回避
(3.3.6.6)(1.5.6.6)
カウンター二連! シルバーカラス回避
(4.5)(5.5)
「ドーモ。シルバーカラス=サン。ディスグレイスです。そこにいるのはシャープキラー=サン」「ドーモ!」
「ドーモ。ディスグレイス=サン、シャープキラー=サン。シルバーカラスです」
◆シルバーカラス (種別:ニンジャ)
カラテ 9 体力 9
ニューロン 6 精神力 6
ワザマエ 9 脚力 6
ジツ 0 万札 5
◇装備や特記事項
カルマ:善
装備:カタナ、ZBRアドレナリン注射器、トロ粉末
スキル:
『連続攻撃2』『連射2』『疾駆』『タツジン(イアイドー)』
シルバーカラスはイアイを構える。そのアトモスフィアにわずかな焦りを感じとり、ディスグレイスは微笑した。
「まさに押っ取り刀といったところのようで。そのまま寝ていてもよかったのですよ? そうすれば厄介ごとに巻き込まれずに済んだのに」
「生憎、もう巻き込まれてるもんでね。……ソウカイヤだろ、お前ら」
「然り。花を摘みに参りました」「桜を手折りに、って言ったほうが的確かな!」
軽い調子でディスグレイスの言葉尻に乗るシャープキラーに、シルバーカラスは苛立たしげな視線を向ける。
「お前は知らない顔じゃない。ここしばらくこの辺を嗅ぎ回っていたな? ウカツだったぜ。密偵の可能性を思いつきもしなかったとは」
「アハハ! ヤモトチャンと同じ女子高生だから油断しちゃった? アハハハハ!」
アトモスフィアにそぐわぬ朗らかな笑い声が室内を満たす。腹を抱えていたシャープキラーは「イヤッハー!」ほとんどノーモーションで急加速! 抜刀! シルバーカラスの首を狙う!
シャープキラー:フェイント
(1.1.2.2.4)(1.4.5.6)
シルバーカラス回避
(3.3.4.5.6)
「イヤーッ!」耳障りな鋼の音が笑みを掻き消す。至近距離で切り結んだまま、シルバーカラスは静かに睨みを利かせた。
「フェイントの掛け方は年相応みたいだな。雑だぜ、イアイが」
「アー……さすがにこれじゃダメか! イヤーッ!」「イヤーッ!」
刀身を弾きあい、距離を取る。ディスグレイスの隣に着地したシャープキラーはクルクルとカタナを回してみせた。
「でもでも、私たちが有利なのは変わらないし? ねぇディスグレイス=サンあいたっ」
「いい加減シャンとしなさい! ……コホン! ともあれ、彼女の言うとおり。桜を頂いた後は鳥を撃たねばなりません。つまり、貴方です」
「だろうな。……やれやれだ。本気で焼きが回ったもんだぜ、俺も」
シルバーカラスは苦笑する。リビングの空気が張り詰めていく。
◇3ターン目◇
「イヤーッ!」「イヤーッ!」
暗い室内を妖光が照らす。シルバーカラスは咄嗟に片手で顔を覆った。ディスグレイスの眼光。カナシバリの類か。
二対一。状況はあきらかに不利。のみならずもう一人の賊は既にヤモトを抑えにかかっている。ジリー・プアー(徐々に不利)というわけだ。
シルバーカラスの主観時間が泥めいて鈍化。片方はジツ、片方はイアイドー。多少の手傷を覚悟で後者を早急に片付ける他ない……
直後、胸に軽い衝撃が走った。
ディスグレイス:カナシバリ・マスタリー
(1.1.1.1.2.2.2.3.3.4.4.5.6.6)
シルバーカラス回避
(6)
ディスグレイス:バイオサイバネ
(2.3.6.6)(1.1.3.5.6)
シルバーカラス回避
(1.2)(2) ワッザ
サツバツ!判定
1d6 → 6 心臓貫通 嘘だろ……
シルバーカラス即死
残虐ボーナス1d6 → 6 【万札】6獲得
カルマ善のため1d6 →3 【DKK】3獲得
シルバーカラスは怪訝に己を見下ろす。悍しいバイオ触手が胸を突き破り体内に潜り込んでいた。「アバッ」思い出したように口から血が溢れ、触手を濡らす。
アブナイの意味を知れ。かつてのイアイドーの師から何度となく聞いた言葉が、今更のように脳裏に浮かぶ。シルバーカラスは自嘲した。そのインストラクションはもう身体に染み込んだと思っていた。他人のアブナイを案じすぎ、己が疎かになるとは。とんだお笑い草だ。
ミコーの女がこちらを見ている。嘲笑を浮かべるでもなく、哀れむでもなく。淡々と。
「ハイク。詠みますか」
「ゲホッ……不要、だ。それよりタバコ、持ってないか。『少し明るい海』……」
「残念ながら」
「そう、か……スマン、ヤモト=サン」
「イヤーッ!」
横合いから飛んだイアイが首ごと意識を刈り飛ばす。「サヨナラ!」シルバーカラスは爆発四散した。
◆◇◆◇◆
ゾッとするような静かさを、降り注ぐ重金属酸性雨が塗り潰していく。ディスグレイスは非難がましくシャープキラーを睨んだ。
「不要なカイシャクですよ。シャープキラー=サン」
「ンー? そんなことないって。残せるものがないとさあ」
軽い調子でセーラー服の少女がシルバーカラスの首を拾い上げる。その顔は妙に安らかであった。が、シャープキラーはそれを気にする風でもない。
「イヤーッ!」「ンアーッ!?」
キールバック専念フェイント斬撃→ヤモト
(2.3.5.5.5)
ヤモ回避
(1.1) L1→0 行動不能
キールバック【DKK】5 獲得
浴室のドアから内側から弾け飛ぶ。中から転げ出てきたのはヤモト・コキだ。彼女はなお、反抗の意思を持って顔を上げ……シャープキラーの抱える生首を見て硬直した。
「ア……」
「残せるものがないとさあ。変な希望を持たせちゃうじゃん? そういうのよくないと思うんだよね、私」
「……一理あるかもしれませんね。悪趣味には違いないですけど。ドーモ。ヤモト・コキ=サン。ディスグレイスです」
アイサツするディスグレイスにもヤモトは反応を返さない。ただ凍りついたようにシルバーカラスの……カギ・タナカの首を凝視している。浴室から現れたキールバックが声を上げた。
「もしやもう終わらせたのですか、お姉さま? 流石です!」
「ドーモ。……さて、長居は無用です。引き揚げますよ」
言って、無造作に触手でヤモトを包み込む。もはや抵抗する気も残っていないらしい。その様子をディスグレイスはアワレに思った。少しだけ。
Wasshoi!判定
(2.6)→8 > 5 ブッダは寝ています
先に退室していくディスグレイスとキールバックの背を見やり、シャープキラーはやや考えこんだ。そしてテーブルにあったライターを拾い上げ、ポケットから取り出したタバコ……『少し明るい海』をシルバーカラスの生首に咥えさせ、火をつける。
「ディスグレイス=サンじゃなくて私に聞いてくれればよかったのに。せっかく用意してたんだからさ」
微笑まじりの声は、重金属酸性雨に塗り潰されて消えた。
【ウィズアウト・ソング】終わり。評価編へ続く