忍殺TRPGソロリプレイ【ヘッドハンティング・ウィズ・クロスカタナ】前編
◇前置き◇
ドーモ。しかなです。当記事はしかながニンジャスレイヤーTRPGのシナリオを遊んだ結果をもとに作成したテキストカラテ(二次創作)……いわゆるリプレイ記事となります。気楽に読めるよ。
今回挑戦させていただいたのは、ytti=サンの【アサルト・トゥ・オキュパイ・オブ・オフィス】です。
カイシャに赴いて交渉を成立させる、知的なシナリオだ。ただし社長はニンジャ! 来訪者(この場合は私のPCたちだ)もニンジャ! そう簡単に話が進むだろうか……?
挑戦者は本編内で発表していく。ではやってみよう。よろしくおねがいします。
◇オープニング、あるいはダンゴウ◇
「ドーモ、未来のシックスゲイツ=サン。相変わらずいい生活してるみてェじゃねェか。エエッ?」
「ドーモ。ソニックブーム=サン。……いきなりからかわないでくださいまし」
「ハッ! そこで嫌味の一つでも返してくるのがテメェだと思ってたがな」
カネモチ・ディストリクト郊外のヒメグシ邸……かつては幽霊屋敷などと恐れられていた屋敷のリビングにて、二人のニンジャが顔を突き合わせていた。
かたや改造ミコー装束の女ニンジャ。右袖から先はなく、隻腕のように見える。そのバストは豊満だ。彼女の名はディスグレイス。恐るべきソウカイ・ニンジャの一人であり、この邸宅の現在の主人でもある。
ニンジャ名:ディスグレイス
【カラテ】:8 【体力】:18/18
【ニューロン】:10 【精神力】:12/11
【ワザマエ】:4 【脚力】:4
【ジツ】:6(カナシバリ) 【万札】:41
近接攻撃ダイス:8
遠隔攻撃ダイス:4
回避ダイス:10
【特筆事項】:
【名声】:21
【DKK】:3
風呂により【精神力】+1
【装備】
パーソナルメンポ
【サイバネ】:
▲バイオサイバネ腕(片腕)
▽吸血バイオ器官
【スキル】:
●連続攻撃2、●時間差、●マルチターゲット
◉翻弄
★カナシバリ・マスタリー
★ブンシン・ジツ(Lv3)
★レッサー・イビルアイ
★★コブラ・ゲン・ジツ
★★★半神的存在:
このニンジャの【体力】は【カラテ】+【ニューロン】となる
★★★不滅
○信心深い
【説明】
右腕を五本の冒涜的バイオ触手に置換したニンジャ。
バイオ触手と強力なカナシバリ・ジツで相手を束縛・屈服させることを好む。
元は自らの性的嗜好を苦に自殺を試みたミコー。現在はもはや堕落あるのみ。
テーブルを挟んでその顔を見やっているのは、白のヤクザスーツを一部の隙もなく着込んだグレーター・ヤクザめいた男。実際、彼はそれ以上の男だ……ソウカイヤの極めて高位のニンジャ、シックスゲイツに名を連ねる一人であるのだから。ソニックブームである。
「まあいい。お前にお誂え向きの仕事を持ってきてやった。ありがたく拝聴しろや」
「それはもちろん。護衛任務ですか?」
「いや、ラオモト=サンのために交渉行ってこい。そういう経験も必要だからな……シックスゲイツにはよ」
交渉。ディスグレイスは眉をひそめる。あまり手掛けたことのないタイプのミッションだった。自分のジツがあれば、最終的になんとでもできるかもしれないが……
「かしこまりました。出向先は?」
「キキコミ社って知ってるか? 元は国勢調査だのなんだのを手掛けてた小さい企業だ」
「……ああ。最近社長が変わって急激に業績を伸ばしている、あの?」
「それだ。結構な業績を叩き出してやがるが、ソウカイヤの傘下じゃねェ。……つまり、将来的に厄介な勢力にもなりうる」
ソニックブームが机の上に身を乗り出す。
「ラオモト=サンも興味を示しておいでだ。威嚇ついでに交渉の場を設けて、コネとってこい。……っつうのが今回のミッションだ。表向きはな」
「……ほう?」
ディスグレイスが片眉を跳ね上がる。ソニックブームは口角を釣り上げた。
「テメェんとこの目敏いガキが気になる情報持ち込んできやがった。あいつも連れて自分の目で判断してこい。必要なら、構わねェ。ソウカイヤの流儀を見せてやれ。いいな?」
◇事前準備◇
ソニックブームの帰投後、グレアリング・オロチ・ヤクザクラン事務所を訪れたディスグレイスは一人電算機室でUNIXと向き合っていた。
(適性のあるニュービーにハッキングを専門履修させたほうがいいかしら)
左手のみで高速タイピングを行いつつ、ディスグレイスは思案する。部下にも高品質な生体LAN端子を埋め込んだものが数名いるにはいるが……まあ、それを考えるのは後でもよかろう。ディスグレイスはUNIXに集中する。
ディスグレイス:ハッキング
(1,1,2,3,3,3,4,4,6,6) UH成功
パワリオワー! 軽快な電子ファンファーレとともに、キキコミ社の監視カメラログが表示。ディスグレイスは目を細め、当日の動きについて予測を行なった。
社長室の両脇はオフライン区画と見え、その詳細は伺えない。とはいえ相手の動きがわかるだけでも上出来だ。穏便にこのミッションが進められるならば過剰な情報ともいえた。
ディスグレイスは改めてキキコミ社の現社長のデータを見やる。ハトミ・アラタ。数ヶ月前から社長に就任して以来、その敏腕を存分に振るい続けている若き俊英。ビジネスのタツジンといえよう。だが社長になるまでの経緯は今ひとつ判然としない。
ディスグレイスは数秒の黙考を経て、携帯IRC端末を取り出した。相手が何者であれ、まずは真っ当に会いにいくべきだろう。
アポを取得な
とはいえ、だ。ディスグレイスは椅子の背もたれに体重を預ける。ソニックブームの言葉を念頭に置くならば、何人か連れていくのがよかろう。一人目、二人目はすぐに決まった。さて三人目はどうするか。彼女は天井を睨み、しばし考え続けた。
◇移動な◇
そしてアポイントメントの日! ディスグレイスは防弾ガラスの向こうで過ぎ去っていく景色を眺める。然り、防弾ガラス。シックスゲイツの候補生ともなれば防弾ヤクザベンツが支給されるのだ。贅沢!
「余裕を持ってミッションに挑めるというのはいいものですね……」
「お姉さまの地道な努力の賜物ですね!」
隣に座る小柄な少女が嬉しげに身を擦り寄せてくる。彼女の名はキールバック。自他ともに認めるディスグレイスの側近である。
ニンジャ名:キールバック
【カラテ】:4 【体力】:4/4
【ニューロン】:7 【精神力】:8/7
【ワザマエ】:8 【脚力】:5
【ジツ】:3(カナシバリ) 【万札】:15
近接攻撃ダイス:4
遠隔攻撃ダイス:10
回避ダイス:9
【特筆事項】:
【名声】:10
風呂ボーナスにより【精神力】+1
【サイバネ】:
▲バイオサイバネヘッド(軽度)
▽生体弾
【装備品】:
*ブラッドカタナ*
*クナイベルト*
【スキル】:
●連射2、●疾駆、●時間差、●マルチターゲット
◉スリケン急所破壊
◉タツジン:スリケン
○信心深い
【説明】
ディスグレイスに拾い上げられたストリートチルドレンのニンジャ。
カラテには乏しいものの、持ち前のニンジャ柔軟性とニンジャ器用さで立ち回る。
ディスグレイスを姉と呼び慕う。ある種狂的な忠誠心の持ち主。
ディスグレイスは微笑し、彼女を左手で抱き寄せるとその頭を撫でた。くすぐったげに目を細めるキールバックに愛しげな眼差しを向けてから、もう一人の同乗者へと視線を向ける。
「それにしても、相変わらず貴女は妙なところから情報を引っ張ってきますね」
「アハハ! 世界はタノシイもの。ちょっとヤルキがあれば気になることなんていくらでも出てくるよ」
楽しげに答えたこの者の名はシャープキラー。アサシン養成機関『アシサノ私塾』をオリジンとするニンジャである。普段は独自行動に興じているものの、ディスグレイスの指示には従う。そういう類の性格の持ち主だ。
ニンジャ名:シャープキラー
【カラテ】:7(+1) 【体力】:8/8
【ニューロン】:5(-1) 【精神力】:5/5
【ワザマエ】:7(+1) 【脚力】:6
【ジツ】:1(カラテミサイル) 【万札】:1
近接攻撃ダイス:9
遠隔攻撃ダイス:5
回避ダイス:10
【特筆事項】:
【名声】:10
【DKK】:3
風呂ボーナスにより【精神力】+1
【装備品】:
ノダチ
【サイバネ】
▶︎ヒキャク
▷ブースターカラテ・ユニット
【スキル】:
●連続攻撃2、●連射2、●疾駆
◉タツジン:ノダチ
○キラーマシーン教育
○カジバヂカラ(カラテに+1補正)
【説明】
アサシン養育施設「アシサノ私塾」の出身者。
持ち前の身軽さをサイバネ脚で補強し、ノダチで敵を仕留める。
しかしもっとも恐るべきはその執念深さと残忍性だ。
朗らかな笑みを胡乱に思いつつも、ディスグレイスは確認する。
「とにかく、ハトミ・アラタが他のニンジャ組織に所属しているらしいということは理解しました。本人がニンジャかどうかまではわからないと」
「ウン。まあ本人がニンジャじゃなくても、護衛にニンジャをつけてるでしょ。仮にも社長だもの」
「……だから念には念を入れてあの子を連れてきたと。しかしお姉さま、大丈夫なのですか? その……あんなに詰め込んで」
「本人とも相談の上です。ああ見えて柔らかいので平気でしょう」
たぶん、とディスグレイスは心中で付け加える。本人は久しぶりに任務に同行できるので喜んでいた。それでいいだろう。きっと。
……とはいえ、任務が無事に終わったら久しぶりに時間を作ろう。備え付け冷蔵庫からマッチャを取り出しつつ、ディスグレイスは今後の予定を決めるのだった。
ディスグレイス『心身の充実』
1d6 → 4 【精神力】12→13
◇到着:受付窓口◇
「スミマセン。本日アポイントメントを取らせていただきました、オロチ・カンパニーのナダ・ヒメグシと申します」
「ナダ様ですね? 少々お待ち下さい!」
満面の笑みで迎えた受付嬢へ、ディスグレイスは同じく満面の笑みで返した。今の彼女は薄い黒のヴェールで顔を覆い隠し、着慣れたミコー装束ではなく黒のスーツで身を固めている。そのバストは豊満であった。
念には念を入れての正装である。そうでなくとも正式にアポを取っている。早々怪しまれることはない。
「……お待たせいたしました! ただいまお取り次ぎいたしますね!」
「お連れの方のお荷物をお預かりしましょうか?」
もう一人の受付嬢がそれとなく尋ねてくる。彼女が見ているのはキールバックとシャープキラーだ……キールバックはヒツギめいて巨大なトランクケースを、シャープキラーは身の丈を超える細長いケースをそれぞれ抱えているのである。
ディスグレイスは目を細める。ヴェールの奥、金色の光が輝いた。
「いいえ、お構いなく。このまま社長室の方へ向かわせていただきます」
「……アッハイ、シツレイいたしました……」
受付嬢の顔から一瞬だけ表情が失われる。受付カウンターの両脇に立ち尽くす双子めいてそっくりな守衛が揃ってディスグレイスへ顔を向ける。彼女は臆することなく、二人にも笑みと光を返した。
……数分後、受付嬢たちはふと我に帰る。来客があった気がするものの、なぜか記憶が朧だ。両脇の守衛は変わらぬ様子で正面を見据えている。互いに視線を交わして首を傾げつつも、彼女たちは気を取り直して業務へと戻っていった。
◇交渉?:社長室◇
「ドーモ。はじめまして。オロチ・カンパニーのナダ・ヒメグシです。本日は貴重なお時間を割いていただきありがとうございます」
「ドーモ、ナダ=サン。はじめまして! ハトミ・アラタです。お会いできて嬉しいですよ!」
両者は硬い握手を交わす。その力強さにディスグレイスは目を細め、ついでハトミの両脇に控える秘書たちへと視線を送った。どちらも美貌の持ち主である。
改めて今回の交渉相手に意識を戻す。ハトミ・アラタ。社長という立場にしては異例の若さ。出で立ち自体は自分と変わらぬスーツ姿だが、その生地や仕立てからかなりの高級品で身を固めていることがわかる。そのバストは豊満だ。
鮮やかな緑色の髪を揺らし、ハトミは真っ直ぐにナダを眺める。ナダは微笑を返した。
「我が社のような零細企業にも直々に対応してくださるなんて。恐悦至極ですわ」
「ハハハ! 貴女がたはタネのようなものです。つまり今こそ小さいがいずれ満開の花を咲かせるポテンシャルを持っている。貴重なビジネスチャンスをむざむざと逃すような真似はしませんとも!」
ハトミは断言した。その一言一言に揺るぎない自信が込められている。ディスグレイスは微笑を保ったまま、彼女の胸元を一瞥した。正確には、そこに飾られた小さなエンブレムを。
「さて、ご存知かもしれませんが、我が社が提供できるのは情報です。ネオサイタマのトレンドがどこにあり、どこへ流れようとしているか……きっと御社にも的確な情報という水源を提供できるかと思います」
「ふふ、ポエット。では……」
「最近の御社が推し進めている企業はどこです? モナカ・ディストリクトの製菓工場はやむなく潰れてしまったようですけど」
突然割り込んできた第三の声に、ハトミ・アラタは静かに向き直る。ナダとの握手を保ったまま。声の主、シャープキラーは楽しげだ。
「……アー、シツレイ。仰っている意味が掴めませんな。あのあたりに私どもと提供している企業はありませんよ」
「アレ? そうなんですか? おっかしいなあ……私の友達が見てるんですよね。あの工場の地下で。貴女が胸につけているのと同じ意匠のエンブレムを」
握られた手に力が籠るのを感じ、ディスグレイスは目を細める。ハトミ・アラタがシャープキラーを凝視している。その様と胸元の『天下』をモチーフにしたエンブレムを、じっと見つめる。
シャープキラーはからかうように付け加えた。
「スワッシュバックラー=サン。シルバーホイル=サン。バンブーニードル=サン。この中にお知り合いがいるのでは?」
「……貴様」
「貴女、きっと文句言う資格がありますよ。……侵入者くらいキチッと始末しろ。だから踏み込まれるんだ、ってね」
ギチリ、と軋むような音が部屋に響く。ナダは眉根を寄せ、己の左手にカラテを込め直した。ハトミ・アラタが振り向く!
「貴様ら!」
「そうそう。オロチ・カンパニーはネコソギ・ファンドともネンゴロにさせていただいております。……この意味がおわかりですよね? アマクダリ・セクト=サン」
「イヤーッ!」
次の瞬間、ナダの身体が宙に浮く! ハトミが片手一つで持ち上げ、シャープキラーへと投げつけたためだ! 「イヤーッ!」シャープキラーが軽く身を傾け、ディスグレイスは壁にウケミ! 無傷!
「やれッ!」
「「「「「「お引き取りッコラー!」」」」」
避難していく秘書たちと入れ替わるように左右の扉から現れたのは十を超える数のクローンヤクザ! BLAMBLAMBLAMBLAMBLAMBLAM! 銃火が室内を埋め尽くす!
「「「イヤーッ!」」」
ディスグレイス回避
(1,1,1,2,3,4,4,5,5,6) 成功
キールバック回避
(2,3,3,3,4,5,6,6,6) 成功
シャープキラー回避
(1,2,2,2,3,3,4,6,6,6) 成功
キールバックが傍に置いていたヒツギ・スーツケースを掲げ銃弾を防御! その隙間を縫ってナダとシャープキラーは廊下は退避!
「「「「「「スッゾコラー!」」」」」」
ザッ、ザッ、ザッ、ザッ! 非人間的統一感のリロードと隊列、そして前進、痰吐き! 廊下でカラテを構えるナダたちの前で、クローンヤクザたちが銃撃隊形を組む!
その中央、ハトミ・アラタが懐から取り出した木製メンポを取り出し装着。そしてナダを睨みつけアイサツを繰り出した。
「……ドーモ。ソウカイヤの皆さん。チーフオフィサーです」
「成る程、貴女自身がニンジャでしたか。ドーモ。チーフオフィサー=サン。ディスグレイスです」「キールバックです」「シャープキラーです」
「そちらも全員がニンジャというわけか。……舐められたものだ! たかだか三人で私をどうにかできるとでも?」
「あら、自信家なのは元からなのですね。ですが残念。三人ではないのです」
チーフオフィサーがわずかに訝しんだ。次の瞬間!「プハー!」穴だらけになったヒツギ・スーツケースが内側から開かれ、中から赤い影が伸び上がった!
ブルブルと身体を震わせ銃弾を払い落としたのは、童話のプリンセスめいたシルエットの持ち主。ただしその身体は赤一色で、装飾品代わりに己を飾り立てるのは無数の腕だ。虚ろな眼窩の奥から白い光を放った異形のニンジャが、カーテシーめいてドレスの裾めいた仮足を広げた。
「ドーモ! ブラッディリリーです! ねぇママ、あれは殺していいの?」
ニンジャ名:ブラッディリリー
【カラテ】:8 【体力】:17/16
【ニューロン】:6 【精神力】:7/6
【ワザマエ】:3 【脚力】:3
【ジツ】:0 【万札】:0
近接攻撃ダイス:8
遠隔攻撃ダイス:3
回避ダイス:8
【特筆事項】:
【名声】:2
オンセンボーナスにより【体力】と【精神力】+1
『ネクロカラテ』『ゾンビーニンジャ』
【スキル】:
●連続攻撃2
【説明】
リー先生の好奇心とディスグレイスの教育によって誕生した
異形のゾンビーニンジャ。その肉体は血でできたスライムめいている。
知能は高いが子どもめいており、ディスグレイスを母と慕う。
「ええ、その気でかかってください。相当なカラテの持ち主のようですから」
「またぞろ妙なものを……! 何人集まろうと同じこと!」
チーフオフィサーが油断ならぬカラテを構え、クローンヤクザたちが一斉にチャカ・ガンを構える。オフィスからタイピング音が響く中、廊下の空気が張り詰めていった。
【ヘッドハンティング・ウィズ・クロスカタナ】前編終わり。後編へ続く