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ITストラテジスト試験午後Ⅰの解き方④

 前回の「ITストラテジスト試験午後Ⅰの解き方③」に続き、今回も令和6年度午後Ⅰ問題、問1を読み進めていきます。
 今回は、[Aアプリの開発]の段落です。

[Aアプリの開発]段落①

 A社がA-IncLudeの主要な顧客として注目する世代は,1990年代以降に出生した若者世代である。他の世代と比較して顧客としての継続期間が長い可能性があり,顧客生涯価値が高いことを期待できる。生活においては多様な価値観と効率性を重視し,親世代が経験した経済不況の影響による将来不安を反映して,生活防衛や資産形成に潜在的な関心があると推定されている。
 しかし,この世代への金融サービス販売は進んでいない。

 [Aアプリの開発]段落では、A-IncLudeの主要ターゲットを若者世代としたこと、その2つの理由(顧客生涯価値が高い、生活防衛や資産形成に潜在的な関心がある)が明示されています。
 しかし、このストーリー内ではA社の目論見通りいかず、金融サービス販売は進みません。そしてもちろん、その「理由」の分析とその「解決」がストーリー内で進められていきます。

[Aアプリの開発]段落②

 しかし,この世代への金融サービス販売は進んでいない。テストサイトなどを用いた調査の結果,保険や投資などに関心をもって検索する人はいても,どの商品が良いかが分からないなど,多くは契約に至っていないことが分かった。また,申込書類など資料の取り寄せはスマートフォンで行えても,正式な契約手続として,手書きによる契約書の提出や本人確認書類の郵送が,契約の都度必要となるなどの煩雑さも原因と推定された。

  A社の目論見通り、若者世代に金融サービス販売が進まない理由は2つです。1つは「どの商品が良いかわからない」から契約してくれない。2つめは申込書類の取り寄せは簡単にスマホで行えても、手書き契約書の提出や本人確認書類の郵送が「煩雑(邪魔くさい)」ということです。

 ストーリーでは、この2つの課題を解決し、金融サービス販売を進めるため、Aアプリの開発に着手していきます。

[Aアプリの開発]段落③

 このことを踏まえA社は,次の機能を備えたAアプリを開発することにした。

① J銀行のネットバンキング機能をはじめ,A-Payやインターネット証券,インタ_ネット保険など,A社グループの全ての金融サービス機能を,Aアプリを通じて提供する。これらサービス機能は,サービスの追加に対応して順次追加する。
② Aアプリ内では共通通貨として,多様な決済にAポイントを利用できる。
③ 検索サイトやECサイトなど金融ザービス機能以外のA社グループのサービスもAアプリを通じて提供し,全てのサービスの利用履歴をAアプリに記録する。
④ 将来のサービスの追加に備え,十分な柔軟性と拡張性を確保する。
⑤ Aアプリに利用者が登録した個人情報などのデータを保存し,利用者の操作によって,以後のAアプリで行う処理に利用できる
⑥ AIによる家計分析を行い,顧客の志向に沿った生活防衛や資産形成を提案する。

 Aアプリには6つの機能がありますが、若者世代の2つの課題に対応する機能は2つです。
 1つめの課題「どの商品が良いかわからない」に対しては、機能⑥「AIによる家計分析を行い、顧客の志向に沿った生活防衛や資産形成を提案する」こと。これでどの商品を選ぶか迷う必要がなくなります。
 2つめの課題「手書きによる契約書の提出や本人確認書類の郵送が,契約の都度必要となるなどの煩雑さ」に対しては、機能⑤「個人情報などのデータを保存し,利用者の操作によって,以後のAアプリで行う処理に利用できる」こと。これで住所や名前があらかじめ記入された申込書様式が郵送されてきて後は印鑑を押すだけ状態になっていたり、スマホ上で契約まで行うことができて煩雑さ(邪魔くささ)が少しは改善されるのでしょう。
 そしてここで設問3です。

設問3〔Aアプリの開発〕について答えよ

(1)A社が金融サービスの新たな顧客層として若者世代に注目する理由を二つ 挙げ,それぞれ25字以内で答えよ。
(2) A社が次の機能をAアプリに備えることにした目的を,それぞれ35字以内 で答えよ。
 (ア)全てのサービスの利用履歴をAアプリに記録
 (イ)個人情報などのデータを保存

  (1)で問われているのは若者世代をターゲットにする2つの理由です。これは段落①で説明しました。理由の1つめは、「他の世代と比べて顧客生涯価値が高いから(19文字)」です。理由の2つめは、「生活防衛や資産形成に潜在的な関心があるから(21文字)」です。

 続いて(2)では、機能アと機能イをAアプリに備えることにした目的を問われています。これはもちろん、

若者世代をターゲットにしたのに目論見通りいかなかった。理由は2つ。その理由を解決するため、機能⑥顧客の志向に沿った生活防衛や資産形成を提案」機能⑤「個人情報などのデータをAアプリで行う処理に利用できる」機能を実装した

と繋がっていきます。繋がらないとお話にならない。

 では、ア「全てのサービスの利用履歴をAアプリに記録」機能をAアプリに備えさせたのか。個人情報を再利用できるようにするため? 違いますよね。
 サービスの利用履歴を見れば、普段どんなお金の使い方をしているのかわかります。暮らしぶりがわかります。ということは、機能⑥「AIによる家計分析を行い,顧客の志向に沿った生活防衛や資産形成を提案(34文字)」するのが目的ですね。

 ではイ「個人情報などのデータを保存」機能をAアプリに備えさせる理由はどうでしょう。答えは1つしかありません。この個人情報を使って、煩雑にならないよう契約手続きに持っていくためです。機能⑤「利用者の操作によって,以後のAアプリで行う処理に利用できる」ようにするためですね。
 しかし本文からそのまま抜き出すと意味が伝わりにくいでしょう。煩雑にならないよう契約手続きをさせるのが目的ですから、「利用者がAアプリで行う契約手続きに利用できるようにするため(29文字)」というように表現すると言いたいことが伝わるでしょう。


 今回は、令和6年度ITストラテジスト試験午後Ⅰの問1。作戦がうまくいかない理由とその対策をストーリーから読み取ることを解説しました。


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