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ITストラテジスト試験午後Ⅰの解き方②

 前回の「ITストラテジスト試験午後Ⅰの解き方①」に基づき、今回は具体的に令和6年度午後Ⅰ問題、問1を読み進めていきます。
まず、前文です。

前文

 A社は,検索サイト事業やECサイト事業を運営する企業である。積極的なサービ ス開発とM&Aによって,インターネットバンキング(以下,ネットバンキングという)やインターネット証券,インターネット保険などの金融サービス事業や広告事業,旅行仲介事業を傘下に収め,これまで金融市場をはじめとする様々な市場で事業を拡大させてきた。A社はこうした拡大を将来にわたり継続しながら,今後は顧客のあらゆる経済活動を,A社グループのサービスを組み合わせたデジタル空間で実現,循環させる,デジタル経済圏(以下,A経済圏という)の確立を目指している
 J銀行は,A社の子会社である。元は大手都市銀行の子会社として設立され,数年前にM&AによってA社の傘下に加わった,国内ネットバンキングのパイオニアである。シンプルで分かりやすいUIとサービスの安定性によって顧客を集め,インターネット専業銀行として独自の地位を築いている。

 ここでは、A経済圏の確立を目指しているというA社の目標と、A社がインターネットバンキング・証券・保険などの金融サービス事業や広告事業、旅行仲介事業を傘下に収めているというA社の強みが語られています。
 次に [A社の戦略] 段落です。

[A社の戦略]段落

[A社の戦略]
 近年,A社は新たなサービスとしてQRコード決済サービス(以下,A-Payという)の提供を開始した。A-Payは,申込みから利用開始,決済までを全てスマートフォンで完結できる利便性が評価され,多くの利用者を集めている。また,加盟店からは店頭取引に専用の決済端末を必要としない利便性が評価され,QRコード決済サービスの市場で大きなシェアを獲得し,国内キャッシュレス取引の拡大をけん引している。
 A社は,今後の金融サービスは,デジタル空間での取引が中心になると考えており,A-Payの成功を足掛かりに,“銀行,証券,保険などのあらゆる金融サービス機能を,デジタル空間で統合した総合金融サービス”(以下,A-Includeという)を提供することによって,A経済圏への顧客囲い込みを強化できると考え,次の施策を行うことにした。

・A-Pay利便性強化のための,A-Payの決済サービスとJ銀行の決済サービス連動
・顧客がA-IncLudeを利用するための,スマートフオン用のアプリケーションプログラム(以下,Aアプリという)の開発 
・A-IncLudeの実現に必要となる,」銀行勘定系システムの再構築

  [A社の戦略] 段落では、A-Payが多くの利用者を集めてQRコード決済サービスの市場で大きなシェアを獲得しているという強みと、総合金融サービス(A-Include)を提供してA経済圏への顧客囲い込みを強化するという戦略が語られています。さらに具体的に3つの施策に取り組むと語られています。
 ここで設問1を見てみます。

設問1 [A社の戦略]について答えよ

(1)A社がA-Includeを構築する目的は、A社のどのような戦略を実現するためか。35字以内で答えよ。

(2)A-Includeの提供にあたり、A社が生かすことができると考えた市場における自社の競争優位性を二つ挙げ、それぞれ35字以内で答えよ。


 まず(1)で問われているのは、A社の戦略です。ですから、A経済圏への顧客囲い込みを強化するという戦略が解答になります。
 次に(2)で問われているのは競争優位性、つまり強みを2つです。
 1つめは本文中から簡単に抜き出せる、QRコード決済サービスの市場で大きなシェアを獲得 です。
 2つめは少し工夫が必要です。A-Includeは「銀行,証券,保険などのあらゆる金融サービス機能を,デジタル空間で統合した総合金融サービス」です。そして前文に目をやると、A社は「インターネットバンキング(=銀行)やインターネット証券,インターネット保険などの金融サービス事業や広告事業,旅行仲介事業を傘下に収め」ていることがわかります。つまりA社の強みは、「銀行、証券、保険などのあらゆる金融サービス事業を傘下に収めていること」です。


 今回は、令和6年度ITストラテジスト試験午後Ⅰの問1。戦略と強みを意識して設問を解くことを解説しました。


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