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サカナクションの映画、観て来た。


SAKANAQUARIUM 2024 “turn”

11月29日、Youtubeにベルクソン『物質と記憶』読解動画をあげた。

3箇月くらい、ずーっと読んでいた。動画が完成したときはもうフラフラ、久し振りに家にいたくなくなった。

モネが来ているらしく迷ったものの、サカナクションのライブ映像がちょうど公開されたとのことで、「ああ、これにしよう」と即決。新宿のバルト9で観てきた。

珍しいよね、こういうタイプの映画。

「Dolby Atmos(ドルビーアトモス)」という音響にこだわった作品で、特別料金¥3700也。機械の操作を間違えたかと思って、いったんスマホで料金を確認してから買い直した。おっさんが一人でウロウロ、挙動不審だったと思う。平日昼間、周囲に誰もいなくてよかった。

私は40年生きていて、一度もプロのミュージシャンのライブやコンサートに行ったことがない。付き合いで、知り合いの演奏を観にライブハウスへ何度か足を運んだことがある程度。「行きたい」より先に、チケット取るの大変そうだし……に類するネガティブな考えばかり思い浮かぶ。

そんなんだから、観ながら「こういうコンテンツ、増えたらいいな」と思った。凄く良かった。思わず指とか顎でリズムを取っていたし、ここで声出したり踊れたりしたら気持ちいいだろうな……と思う場面もあった。具体的には「ショック!」ね、あんなに盛り上がる曲だとは。

序盤から「ユリイカ」まであっという間、そこから何曲かまったり、「ホーリーダンス」でまたグワーッと盛り上がって最後まで一気という感じだった。「ショック!」以上に驚かされたのが「ホーリーダンス」、私は今回のライブバージョンの方が断然好き。あんなにライブ映えするなんて知らなかった。

頑張れ、山口さん

記念にフィルムもらえたよ。

山口さんが2022年7月から体調不良で2年も活動休止していたこと、失礼ながら(?)私は今回の映画で初めて知った。

「グッドバイ」を作っている最中のしんどさをラジオで涙ながらに振り返ったという記事はどこかで読んだ憶えがある。最近うつ病を患っていることをカミングアウトして話題になっていたので、頑張ってほしいな……と思いながら聴いていた。普段からよく聴いてはいるのだ。「『バッハの旋律を夜に聞いたせいです。』」「ミュージック」「ユリイカ」あたりは特に。

サカナクションというバンドはもちろんのことながら、山口さんの存在感が薄れて感じられたことがまったくなかったので、舞台背景にある大画面に
復活!」という文字が映し出されたときはポカンとしてしまった。

実際はどうか分かりっこないけど、サカナクションって、山口さん含め、目立ちたがり屋がいない珍しいバンドだと思う。俺が俺が、私が私がという我の強さをまったく感じなかった。山口さんを中央に据えて5人一列横並びというフォーメーションが象徴的だったし、良い意味でしっくりきた。

みんな落ち着いている。wikiで検索してみたら、みんな80年代前半生。年相応に成熟しているというか。芸術家オーラは確実にあるんだけど、無駄に発散させていないのはきっと、そういう自分を客観視したら恥ずかしくて悶絶してしまうからじゃないかと、そんな妄想を膨らませてしまうくらい落ち着いている。だから庶民的というか、物凄く距離を近く感じさせてもらえる。

何が言いたいかというと、山口さんの苦しみって才能を持て余してクスリに走ってしまう式のミュージシャンにありがちなものではなくて、才能に溺れない理性・良識を兼ね備えた人格者だからこそ抱えざるを得ないものなんじゃないか。もうちょいズルしたり、甘えたりできたら回避できるけど、それが出来ない誠実さがそのまま不器用さになってしまっているというか。

メンバーに対して「これからは頼ります」みたいなことを言っていて、その自分自身や音楽に対するストイックさあってこその「ミュージック」だったり「ユリイカ」だったりするのだろうから、メンバーも自らの無力さに打ちひしがれる夜があるんじゃないか……と、これまた妄想を膨らませてしまった。私みたいな俄かファンにもそんな物語を感じさせる映画だった。

私は83年生なので、山口さんとは同世代だ。
幸福なことだと、改めて思う。


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