
思い出の話
大好きな人がいる。
大好きな人がいた。
好きだったこと以外は忘れたけど
きっと大好きだったはずだ。
良い思い出も
悪い思い出も
段々薄れていってしまう。
僕は出不精なので、
人の眼に留まるもの以外はわざわざ消さない傾向がある。
カメラロールには過去の写真や動画がたくさん残っていて
容量がいっぱいになって整理するとき、ようやく存在を思い出す。
データの中の僕は幸せそうで
たくさん笑っていた。
そんな過去の自分を見て
『これは誰なんだろう』と思う。
その時の自分と今の自分がかけ離れていて驚くのだ。
なるほど、誰かを好きな自分はこんなにも幸せそうなんだと。
段々薄れていく思い出の中で
残るものは悲しい記憶が多くって
でも確かにこの時の僕は幸せだった。
ちゃんと、幸せだったんだ。
貴女は幸せだったのだろうか。
ありがとう、ごめんなさい。
さようなら。
そんな思いを馳せながらゴミ箱のアイコンをタップする。
さようなら。