『歯内療法 成功への道 CT時代の臨床根管解剖―三次元で捉える解剖学的情報と病態』より―「はじめに」
『歯内療法 成功への道 CT時代の臨床根管解剖―三次元で捉える解剖学的情報と病態』を2月4日に発刊しました! まだご覧になっていない方々のために「はじめに」をウェブ版として公開します.ぜひ,ご一読ください.(編集部)
2013年6月にヒョーロン・パブリッシャーズから「歯内療法 成功への道」シリーズの第1弾として『臨床根管解剖──基本的知識と歯種別の臨床ポイント』を発刊してから8年が経過した.歯内療法の基本である根管解剖に特化した書籍であったが,お陰様で多くの先生に手にとっていただくことができた.
また,本書にたくさんの付箋を付けて質問に来られる先生もおられ,実際に読み込んでもらえていることが著者として実感でき,非常に感慨深いものがある.
その『臨床根管解剖』のあとがきに,「近年のCTの進歩と普及はめざましい.それに伴い根管解剖の研究も,抜去歯を中心にしたものから,CTで撮影した像を解析した報告が増えている」「解剖学という本来は短期間には変化しないと考えられる歯の構造を対象とする学問も変化し続けている」と記載した.
筆者の診療室においても,2014年1月に歯科用コーンビームCT(CBCT)(ベラビューエポックス 3Df,モリタ,図)を導入した.主な使用用途が歯内療法で,治療対象歯とその周囲の形態観察を目的とするため,直径4cm×高さ4cmと直径4cm×高さ8cmのFOV(Field of View:撮像領域)であり,両側を同時に比較することはできないが,なるべく被曝を最小にした詳細な観察が可能と考えている.
筆者の臨床でのCBCTの使用経験が7年を超え,症例数も増えてきたことや,CBCTを使用した根管解剖に関する研究が世界の各地から報告されるようになり,さらにわが国の報告も出てきていることを踏まえて,今回『CT時代の臨床根管解剖』をまとめる機が熟したと感じた.
具体的な内容としては,論文等で報告されているCBCTにより観察された根管解剖の知見と,臨床におけるCBCT像を参考にすることにより可能となった治療あるいはその注意点について解説したい.
目で見えない根管を対象とする歯内療法は,マイクロスコープの普及に伴い見える治療が可能となっている.しかし,マイクロスコープでは根管内壁を含めて歯の表層が見えるだけであり,見えている部分から先の根管の方向・状態や歯の周囲組織の状態はわからない.
一方,CBCTは三次元で歯とその周囲組織を診査することが可能である.したがって,CBCTとマイクロスコープを使用すると,旧来の手探りの歯内療法とは異なった次元での治療の提供が可能となり,歯の保存に対して大いに貢献できると考えられる.
見える歯内療法(Visual Endodontics)を実現するための第一歩としてCBCTによる画像診断の長所と特性などの理解に本書が役立つことを期待します.
2022年1月
木ノ本喜史
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