見出し画像

【著者が語る この1冊!】 『写真でマスターする リライニング適材適所―新義歯から痛い・外れる・割れた義歯まで』

月刊『日本歯科評論』2022年6月号に掲載する「HYORON Book Review EX」を,発刊に先がけて全文公開します.ぜひ,ご一読ください.(編集部)

村岡秀明/千葉県市川市 むらおか歯科・矯正歯科クリニック

このたび,ヒョーロン・パブリッシャーズから『リライニング適材適所』 を出させていただきました.ここでは,その内容について概略を申し上げたいと思います.

大事な義歯の“3要素”

義歯製作の上で大事な要素として,「辺縁の形(辺縁形態)」,そして「咬合面」がありますが,もうひとつ,3つ目の要素があります.
それは,「内面の適合」です.咬合関係をしっかりさせて,義歯の形もよく出来ているのに「何か,やっぱりしっくりこない」ということは,皆さん経験があるのではないでしょうか.実はこれが「内面の適合」に関係しています.

義歯の製作過程では,さまざまな狂いが生じます.印象材の狂い,石膏の狂い,そして何よりもっと大きいレジンの膨張収縮による狂いです.
それが「内面の適合」となって現れてきます.

「咬合面と辺縁形態はよく出来ているのに,何かぴったりこない」と感じたとき,私は新義歯の装着時にもリライニングをしてしまいます.なぜ,それほどリライニングを行うようになったのか,それは私自身の義歯体験が元になっているのです.

私の義歯装着体験


若い頃から義歯には興味がありましたが,数年前,あるきっかけで上顎に両側遊離端義歯を作っていただきました.それはスタディグループでの勉強用ではあったのですが,それが私の義歯装着体験の始まりです.
上顎に義歯を入れてしばらくした頃,下顎の義歯体験をしたくなってきました.最終的な目標は下顎の総義歯体験ですが,徐々に欠損を増やしていき,支台のパーシャルデンチャーになりました.

自分で義歯を入れてみて一番困ったことは,「食べて痛いところがある」ことでした.
そしてもうひとつ,「内面に食べ物が入ってしまう」ことです.
イチゴのツブやゴマなどが義歯の辺縁にあると,反対側で噛んだときに義歯が持ち上がり,そのとき内面に入ってしまうのです.こうなるともう何も食べられません.義歯を外すしかないのです.

一時は義歯安定剤を多用して持ち上がりを防いでいましたが,新しいリライニング材が各社から出始め,それを試してみたところ,とても具合が良いのです.これが,リライニングを重視するようになった原点です.

リライニングの“適材適所”


この自分の体験から,リライニングの良さを再発見し,それからはより多く行うようになりました.

また,総義歯とパーシャルでは,リライニングの考え方が少し違います.さらに細かくいうと,上顎と下顎でもリライニングのテクニックが少し違ってきます.

それらのことを自分の臨床経験とケースを含めて,リライニングの要点を写真を中心に紹介させていただきました.
これまでさまざまな義歯の本を作ってきましたが,自分が患者さんと同じ痛みを味わい,食べることに困ったとき,はやく,確実に治すことの重要さにあらためて気づかされました.
ぜひ,多くの先生方にお読みいただきたいと思います.

関連リンク
『写真でマスターする リライニング適材適所―新義歯から痛い・外れる・割れた義歯まで』(村岡秀明 著)
※シエン社でのご購入はこちらから

月刊『日本歯科評論』のSNS
LINE公式アカウントFacebookInstagramTwitter


いいなと思ったら応援しよう!