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【書評】『日本歯科評論別冊 CAD/CAM冠・CAD/CAMインレー―失敗しない保険治療のために押さえておきたいポイント』

月刊『日本歯科評論』では,当社発刊本の書評を随時掲載しております.2023年7月号に掲載の「HYORON Book Review」を全文公開いたします.(編集部)

山本雄嗣/鶴見大学歯学部 保存修復学講座 教授

「CAD/CAM 冠・CAD/CAM インレー 失敗しない保険治療のために押さえておきたいポイント」が月刊『日本歯科評論』の別冊として刊行された.1990年代より報告されはじめたCAD/CAM システムは,その後のデジタル技術の目覚ましい進歩によって大きく発展した.     
そしてわが国では,2014年に小臼歯に対するCAD/CAMレジン冠が保険収載となり,2022年にはほぼすべての単独歯補綴/ 修復が収載されるに至った.

このCAD/CAMに代表されるデジタルデンティストリーは,これからの歯科臨床において必ずや主流となる技術である.
その技術について書かれた本書を一言で表現するならば,「至れり尽くせりの書」と言えよう.

編著者の坪田有史先生が序章の「本書のねらい」の中で,現時点での保険のCAD/CAM 修復のすべてを網羅することを本書の目標として掲げておられるが,まさにそれが達成された内容である.
執筆者らには現在の接着歯学,歯科材料学そして歯科臨床をリードする面々が名を連ね,臨床家が知りたいであろう内容を事細かく,かつ写真や図表を数多く取り入れており,読者に優しい編集となっている.

本書は,単にCAD/CAM修復の臨床手順や注意点,勘所を記したものではない.
「基礎編」「臨床編」「主要各社の製品紹介」の三編から構成されているが,マテリアルサイエンスや臨床術式,製品説明に留まらず,タイトルに「失敗しない保険治療のため」と謳っていることからCAD/CAM修復が保険収載に至った経緯,保険診療実施のための留意点,金銀パラジウム合金修復と比較した現状などがわかりやすく説明されている.

CAD/CAM修復の保険に係る事柄を容易に確認でき,基礎編に記されている材料の物性,そして各社の製品紹介と合わせることで,幾種類もあるCAD/CAMブロックから材料を選択する際の助けとなるであろう(ブロックの選択に関して歯科技工士に一任するのではなく,歯科医師も関わってほしい……).

基礎編には材料の物性のみならず,接着について記載されている.CAD/CAM修復は接着なくして成立しない.
以前はCAD/CAM冠は脱離しやすいという報告がされていたが,それを払拭すべく細かく解説されている.
本編を通じて,著者らが修復物と支台歯/窩壁を如何にしてより確実に,そしてより強く接着させるかを伝えたいという気概を感じる.この内容を臨床に充てがっていただければ,脱離との遭遇は激減するであろう.

臨床編には実に綺麗な口腔内写真や模型写真が掲載されている.カラフルなスキャン画像の効果も相俟ってか,とても楽しく読み進むことができる.
文面から内容把握するのではなく,画像から直感的に理解できるように編集されたのではないだろうか.
具体的な臨床器材の提示とともに説明がなされているので,上述のブロック選択のみならず,接着材料の選択にも役立つこと請け合いである.

すでにCAD/CAM 修復に明るい先生方, そしてこれからCAD/CAMに力を入れようと思われている先生方に,この至れり尽くせりの好書をぜひ手に取っていただきたい.オススメです!
一人でも多くお読みいただき, これからのCAD/CAM修復を一層輝かせてほしい.

関連リンク
『日本歯科評論別冊 CAD/CAM冠・CAD/CAMインレー 失敗しない保険治療のために押さえておきたいポイント』(坪田有史 編著)

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