書評『日本歯科評論増刊/かかりつけ歯科医として知っておきたい 小児の齲蝕・歯周疾患・歯の形成不全』
外木徳子/千葉県千葉市・とのぎ小児歯科
小児歯科でより求められる知識と技術
歯科医療従事者の弛みない努力と啓発活動により小児のう蝕は激減しました.
しかし一方で,う蝕の二極化も大きな問題となっています.
つまり,リスクの低い小児に対しては,その状態をいかに長く保っていくか,そのモチベ―ションを維持する指導が必要ですし,リスクの高い小児に対しては,適切な処置とその後のフォローアップ,そして本人はもちろん,保護者を含めた意識の改革が必要不可欠です.
このような状況の中で,小児を診ていくうえでの専門的な知識と技術はますます必要とされてきています.
そして,少子化が問題となって長い時間が過ぎましたが,子どもの数が少なくなった今だからこそ,個々の環境や状態に寄り添って,治療や指導を丁寧に行うことが求められています.
そういったニーズに応えたのが,今回発刊された『かかりつけ歯科医として知っておきたい小児の齲蝕・歯周疾患・歯の形成不全』です.
編著者である土岐志麻先生(全国小児歯科開業医会会長)と菊入 崇先生(日本大学歯学部小児歯科学講座教授)の豊富な臨床経験と幅広い人脈を活かして,それぞれの分野でのエキスパートが“小児歯科の教科書プラス臨床の勘所”を漏らさず書きあげた,貴重な一冊がここに完成しました.
小児歯科の幅広い内容に対応
学生時代の教科書を改めて読み直すような背筋をまっすぐにして読む内容と,それらの基礎を踏まえたさまざまな処置方法が臨床経験の豊富な先生方によってわかりやすく示されています.
写真と図を満載している点も理解を深めるためにありがたい一助となっています.
研修医をはじめ,かかりつけ歯科医として小児歯科臨床に力を入れてみようと思われている先生はもちろんのこと,ベテランの先生も基本に立ち返って読める一冊です.巷に蔓延している不確かな情報ではなく,しっかりとした基礎の上に立った情報が的確に提供されています.
小児の診療を手がけて困った時に,小児歯科専門医に聞いてみたいことの答えが,本書の中に充実しています.
また,この本の特徴の1つとして,今まであまり取り上げられなかった分野にも踏み込んで,丁寧に書かれていることが挙げられます.
たとえば,最近多く見られるようになった形成不全歯の対応について一編で取り上げていますが,これほど丁寧に取り上げている内容は珍しいと思います.
さらに,小児の歯周疾患が近年増加していますが,なかなか情報がないのが実情です.この点を積極的に取り上げているのも本書の大きな特徴です.
小児を診るうえで必須の本の誕生
小児歯科は幅が広く,奥が深いものです.子どもは決して大人を縮小したものではないことをもう一度思い直して,ぜひともこの本を手に取って見ていただきたいと思います.
本書は,かかりつけ歯科医として小児を診るにあたって知っておかねばならない知識から最新の情報まで満載しています.
診療室の棚に置いて,いつでも取り出して見る心強い診療のパートナーとなるに違いありません.
小児歯科臨床に携わるうえで手放せない一冊がついに誕生しました.
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◆『かかりつけ歯科医として知っておきたい 小児の齲蝕・歯周疾患・歯の形成不全』(土岐志麻・菊入 崇 編著)
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