自分史的なクリッピング史料
いよいよ前野先生のまとめ。3連チャン。幸せの状態とはどんな状態であるのかに関する様々な知見の考察を読んできたけど、知見を得ただけでは当然に幸せになれるとは限らない。では幸福度の向上方法とは何だろうか?
2020年11月11日 日経 やさしい経済学 幸せ中心社会への転換⑨~⑩
慶応義塾大学 前野 隆司
想定内だけど、幸福度の向上方法は様々な研究が行われ、様々な方法が提示されている。先ずはその一つとして紹介されているのが「介入研究」。これは被験者の集団を複数のグループに分けて、異なる行為をすることによる差を観察・研究するもの。
例示されているのは、例えば2つのグループに今日あった " 3つのいいこと" を書いてもらうグループと、" 別の何かを3つ書いてもらう " グループに分けて考察する。これを1週間続けて、後に幸福度のアンケート調査を実施し測定する。この結果も想定内ではあるけれど、" いいことを書いてもらったグループ " の方が幸福度が上昇したという。これは米国の心理学者マーティン・セリグマンによる研究結果だそうで、この研究結果以外にも色々な方法が研究されていて、それらを実行することで幸福度は高まると考えられている。
・主体的に自己決定する
・自己肯定感を高める
・楽観的にものごとを捉える
これらは自分の意識次第、心の持ちようで実現できること。
・笑顔でいること
・上を向いて大股で歩くこと
・散歩やスポーツをすること
これらは日常の心がけ次第。
その他にも動植物と触れ合うこと、ボランティア活動をすることなども効果があると。あくまでも自己体験ではあるけど、年齢を重ねると動植物を愛でる気持ちが大きくなってきた気がする。特にこのシーズンはわずかな期間でも桜を鑑賞することで心が洗われることも多い。
先生は幸福というのは身近な事柄であるだけに、様々な方法で向上することができるとおっしゃっている。例えば主体的・自主的に行っていることや、感謝していることを周囲の人と話しあったりするだけでも幸福度は向上すると。自分の思っていることを他者に表現することで、気持ちにいい影響が出てくるという感覚も理解できる。でもこの感謝表現って結構難しい。過剰だと逆に受け取られかねない。態度でいやいや感が出てしまっては相手に見透かれてしまうし。
ウェルビーイングの研究は1980年代から活況に。その研究で触れなければならないのは泰斗、米イリノイ大学名誉教授、エド・ディーナー先生だそうでディーナー先生は幸福度計測尺度SWLS(Satisfaction With Life Scale)を作成したと。
近い分野では、ポジティブ心理学があって、米ペンシルベニア大学のマーティン・セリグマン教授が始めた分野。また行動経済学でも多くの研究が進められ、米プリンストン大学のダニエル・カーネマン教授の幸せと収入の関係の研究。こうした数々の研究をもとに、ウェルビーイングの研究も進化している。
2021年、ダボス会議のテーマである「グレート・リセット」は今後どうなっていくのだろうか?「人々の幸せを中心とした社会への転換」を目指そうという考え方は定着していくのだろうか?
経済成長から心の成長を重視した社会への転換が必要な時代となっているということを理解しつつ、でも一方で戦争は終わらない。米国大統領選挙での影響も懸念される。トランプの再来はどうなるのだろうか?トランプー1.0という近況だろうか(スーパーチューズデーも終わったし、どうやらー1.0からゼロになってしまった)。
最後に前野先生はそうした中で、日本の役割に触れられている。
日本は古くは東洋の英知をそして明治以降は西洋の英知を受け入れてきたということを考えれば、古来の思想から現代の科学技術までをも受け入れ自分のものとしてきた歴史があるじゃぁないか!そこが強みではないのか!とおっしゃっています。世界の研究を真摯に受け入れ、そしてその成果を還元するという役割があることを期待されて結んでいる。問題はそのリーダーシップが発揮できるのだろうかと懸念は拭いきれない。
以前現役のころ、海外出張も多く色々な文化に触れることもできたけど、どうしても、各国の文化・思想の背景には少なからず宗教的な意味を感じることがあった。日本でもそれぞれの宗教で信者は相当数存在することは分かっているけど、特に仏教の在り方など、タイやベトナム、ミャンマーなどとは大きく違う印象を受けた。私見ではあるけれど、日本人には見えにくい宗教的な意義とかそれとの擦り合わせも必要な筈で、イニシアティブをとって日本の考え方などをどうやったら各国に拡散・普及・浸透できるのだろうか?
以前、幸せの国・ブータンが一時スポット・ライトを浴び、最近では北欧のライフスタイルがクローズアップされたり、流行には敏感なところがあることは否めない。諸外国の文化やライフスタイルを組み込むことには長けている面もある一方で、それらを加工し、工夫しながら定着、拡大という点においてはそこまでいっていないのではないか?と疑問に思う。
でも今の日本では、やはり潜在的には心が病んでいる人も多いのはないかという認識はあって、幸福とは何かを全体像として一括りにして掴むことは難しいのでは?と漠然と思いつつ、このシリーズを読み終えた。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?