黒木華似のブルース・リー好き28歳女性と美術館デート
10月末、1年ぶりに六本木に足を運ばせた。人混みを避ける生活になってから一度も来ていなかった。自分とは縁の無い六本木になぜ訪れたかと言うと、マッチングアプリで知り合った女性とデートが決まったからだ。
デートまでの経緯
アプリを始めた翌週の土曜日、デートが決まった。自分でも信じられないくらいの驚異的スピードでのアポ獲得だった。
アプリ登録後、早々に女性側からいいねをもらった。
正面からの写真が1枚と、カフェでのスイーツがいくつか設定されていた。プロフィール文は一画面に収まるくらい少なめ。
3年前のペアーズでは女性側からいいねをもらうことなど、夢のまた夢だった。
「・・・業者では?」
やたらと前のめりなメッセージが来ることも一層不安を煽った。
しかしネットワークビジネス系の類ならば二言目には
「自由な生活楽しんでます!」
「不労所得最高!」
などと聞いてもいないことをのたまう。きっと彼らの仲間ではない。
プロフィールが簡素かつ胡散臭いテンプレも無い。恐らく一般人だろう。
久しく恋愛を意識した女性と会うことがなかったので、期待せずにリハビリを兼ねて会ってみようと思った。
集合場所:六本木
本日の集合場所は六本木の東京ミッドタウン内、サントリー美術館。
初めて訪れる場所だったので、予定より30分前には到着して場所を確認していた。
・時間に余裕を持つ
・道に迷わない
はプラス要素にはカウントされにくいものの、マイナス要素にはならない(と信じていたので)デートの際は徹底していた。
デートの始まり(開戦)
「美術館の入り口につきました」
女性からアプリ上でメッセージが届いた。近くのベンチでスマホを眺めていた私は顔を上げ、送り主を探した。私と同じように誰かを探している女性がいる。
「withの〇〇さんですか?」
声をかけた女性は西武新宿線(西東京寄り)に住んでいそうな"黒木華"似だった。簡単に挨拶を済ませ、美術館デートが始まった。
入り口をくぐり抜けた瞬間に、初対面の人と美術館に行くことが初めてと気づき、急に焦りだした。そもそも美術館はあまり話すことができない。しかも作品への向き合い方や鑑賞方法は千差万別である。お互いの違いが浮き彫りになる場所を選んでしまったことを少し後悔した。
「これ綺麗ですね」
「こんな時代にこんな発想あったんですね」
「当時はどんな反応があったんですかね」
小さな声で、気取らない会話が繰り広げられる。
美術館を提案したのは私だが、美術の知見は全く無い。
「これは〇〇時代の△△が~」とか言われたらブッダスマイルで乗り切ろうと思っていたが、杞憂に終わった。初対面の人とは思えないくらい、気楽に美術館を楽しむことができたことに驚いた。
カフェで改めて自己紹介
美術館を楽しんだ後、もっと彼女のことを知りたいと思いお茶を提案した。
黒木「アプリ、最近始めたんですね。もう何人かと会いましたか?」
私「いえ、黒木さんが最初です。何人かと会いましたか?」
黒木「実は結婚相談所にも登録していて、そっちで何人かと会いました。」
黒木「結婚相談所に登録されている方に会うのは初めてです。本気度の高い男性が多そうですね。」
黒木「本気度は高いのですが…同年代は皆無だし、良くも悪くも癖のある方ばかりです。結婚相談所も含めて、今まで会った中であなたが一番まともです笑」
私「私でまともだったら今までどんな人と会ってきたんですか笑」
といった流れでお互いの恋愛経験や恋愛観を共有した。まとめると、
・結婚願望が強く、結婚相談所にも登録したがまともな人が少なすぎる。
・アプリは同世代が多いので利用しているが、会うまでのメッセージが面倒なので早々にアポを取るようにしていた(前のめりだった理由はこれ)
・元カレとは結婚への意識が異なり別れた。(黒木さんが「私と結婚するメリット」をプレゼンまでしたのに、そのプレゼン後に引かれてフラれた。)
といった感じである。
プレゼンのエピソードは驚いたが、私は好感を抱いた。そんな面白いことをする女性は滅多にいない。趣味や好きな映画、音楽も同世代ゆえに共通することが多かった。何より話しやすい。
また会いたいと思い、帰りにLINE交換を提案したところ、快諾いただいた。
今まで知り合った女性のLINEアイコンは大体キラキラしたものか、パステルカラーの何かだったが、想像の斜め上をいく画像が目に飛び込む。
ブルース・リーの銅像の下で、同じポーズを取る彼女。
カメラ目線もピースも笑顔もなく、ブルース・リーと同じ方向を向いてファイティングポーズをとっている。殺気すら漂っている。
「ブルース・リー好きなんですよ。好き過ぎて香港行っちゃいました。」
それ男子中学生が中二病を患ったまま大学生になって最初のバイト代でやることやん。話しやすい理由が分かった。この女性は男性的思考の持ち主だ。元カレへのプレゼンにも納得がいく。
私自身はどちらかというと女性脳寄りだと思う。しかし今までお付き合いした女性はTHE 女性思考で、若干それに疲れていた私には非常に魅力的に思えた。ブルース・リー好き黒木華と次回のデート日だけを決め、LINEで何するかを決めることにして解散。
アプリを始めて1週間、最初に出会った人がこんなに素敵な人とは。
というかこれで終わりで良いんじゃないかとさえ思った。
実際は17人中の1人、まだまだ序章であることに気付きもしなかった。