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理系の松本穂香似30歳と新宿ランチデート
前回まではマッチングアプリ体験談というよりズッコケ珍道中と表現した方が適切ではないかと突っ込まれてもおかしくはないデートの連続であった。
しかし、今回ばかりは違う。タイトル通り、偽りないデートを遂行出来たのである。少しばかり乱筆にお付き合い頂ければ幸いだ。
出会うまでの経緯
アパレルショップらしき場所で試着をしている際の様子がプロフィール写真だった。照れた感じで少し俯いており、ハッキリとは見えなかったが松本穂香似の印象を受けた。(以降松本さんとする)
プロフィールもかなり書き込まれており、本気度も感じる。所々に知性を感じ、改めて基本情報を確認すると最終学歴は理系院卒であった。
私は人を選べる立場に無いが、この人と会ってみたいと強く思った。
当然、多くの男性が私と同じ感情を頂いているだろう。
その証にいいね数は560。
少なくとも560人の男がいいねを送り、プロフィールを見るのにも飽き飽きしていることは想像に難くない。はにかんだ笑顔のプロフィール写真、本気度が伝わる自己紹介文、知性と謙虚さを兼ね備えた松本穂香なんて誰でも会いたいであろう。
予想通り、道のりは平坦なものでは無かった。
マッチングアプリはお互い可処分時間を使って取り組むことであり、なおかつ女性は多くの男性からアプローチを受ける。経験上、1日に3,4回のやりとりが出来れば十分多い方だ。560いいねの松本さんは多忙であることが容易に想像できた。
1日1回やりとりが出来れば良い方で、2~3日に1回程度の返信が普通であった。しかし返信があるだけでもありがたい。
星野源や山田孝之を5,6回殴ったような男性が跋扈するマッチングアプリで、サザエさんのモブキャラのような顔面の私に返信してくれるだけ女神のような対応であった。
その他560人の動向が気になったが、私は自分の出来る事を遂行するだけだ、と必死に雑念を払っていた。その分、他の男性とは違う文章で差別化を図る事には必死になっていた(これについては別途記載)
松本さんはかなり慎重な性格であった。
幸いにもメッセージは定期的に続くようになっていたが、デートに誘うタイミングを見つけあぐねていた。このタイミングというのが千差万別で非常に厄介である。
同じタイミングで誘っても
「早過ぎる。遊びなれてるんですね」とか
「遅過ぎる。もういい人見つけちゃった」とか
人の数だけ答えがある。
色々な恋愛指南コラムを読んだが
「男はちょっと強引な方がいい!けど優しさを忘れずにね!」
などとのたまう記事にブチ切れそうになった回数は数えきれない。
こればっかりはセオリーが無く臨機応変に対応するしかない。
ついに私は勝負に出た。
「一度ランチでも行きませんか?」
返事が遅めなのは承知の上だったが、待つ間は悪い想像ばかりが頭をよぎった。
そしてついに返答を受け取った。
「一度電話してからでも良いですか?」
過去の柳原氏との事もあり、どんなにメッセージで盛り上がっていても、当日は一問一答になってはお互いにとって不幸である。というか私がもう耐えられない。私は電話を快諾した。
結果、電話はとても盛り上がった。
松本さんは会話のテンポが合うかどうかをチェックすると共に、自身の仕事についても理解があるかどうか確認しているらしい。
私は何とも思わなかったが、松本さんは確かに若干珍しい職業だった。過去には職業を告げただけで音信普通になった男性もおり、それがショックだったので予め了承してくれる人かどうかを電話で確認しているとの事だった。
そして私はランチデートにこぎつけたのである。
新宿のハンバーガーショップでランチ
JOURNAL STANDARDのグループが展開するハンバーガーショップでランチすることになった。
口元が汚れる&大きく口を開く料理はデートNGと聞いていたが、
・おしゃれで落ち着く所が良い
・肉々しいものを食べたい
との事でいくつか提案したお店の中から松本さんが選んだ。
私は良くも悪くも相手に期待しないようにしていた。柳原氏の一件からそれを学んだ。何なら柳原氏が復讐で松本さんを装い、一問一答の続きを迫ってくるかもしれないとさえ思っていた。
私は15分前に到着し、あらかじめ店の場所を確認した直後、スマホが震えた。
「すみません、少し早く着きました。今どちらですか?」
見渡すと写真通りの松本さんがいた。何よりも先に柳原氏ではないことに安堵した。
電話と同様に会話は弾んだ。
改めて自己紹介したり、メッセージで話した内容を深掘りしたりと自然と会話は続いた。
しかし1つの疑問が胸に残り続けた。
なぜこんな人がマッチングアプリをやっているのか。
もしや見た目はしずかちゃんでも中身はTV版ジャイアンなのかもしれない。失礼とは思いつつ、私は堪えきれず聞いてしまった。
「大変失礼ですが、なぜマッチングアプリを?使わなくても多方面からお声がかかりそうですが…」
「仕事や趣味で会う男性はあくまで同僚や友達として見てしまうんです。最初から恋愛関係として入らないと異性として見れなくて。でも合コンとかは苦手で…」
私自身はこの考えは持ち合わせてはいないが、当時同じシェアハウスに住んでいた女性も同様の事を言っていた。確かにそれでは理系学部や男性が多い職場環境でもなかなかパートナーを見つけることは難しい。
そんなこんなで1時間ほど経過し、お店が混みあってきた。
私は人混みが苦手&土曜の新宿なんてどんな店でも混むのが想定されるので、11時集合で提案していた。タイミングも良かったのでお店を出ることにした。
予想外の展開と衝撃発言
私は基本的にご飯代は全額負担している(理由は別途記載)
今回のランチも私が出したが、松本さんが少し申し訳なさそうだった。
「本当にいいんですか?」
「ええ、大丈夫です。せっかくの休日を割いてくれたので。」
「そうですか、ありがとうございます。ご馳走様でした。」
ここまではよくある展開だ。
が、ここで松本さんから思いもよらぬ発言が。
「ご馳走してもらったお礼にコーヒー飲みませんか。次は私にご馳走させて下さい」
スマートな提案に驚いた。
おごられるのが嫌な女性は一定数いると聞く。しかしながら強引に割り勘にしては空気を壊すため、同規模もしくは若干少額の何かで埋め合わせすることがあるらしい。私には初めての経験だった。
真意は測りかねたが、私たちはコーヒースタンドでもう少し話す事になった。
先ほど同様、お互いの身の上話や仕事や趣味の話をしていたが、松本さんから衝撃的な発言が。
「もしかして、ボランティア活動とかされてました?」
仰る通り、私は学生時代から海外ボランティア団体に所属していた。松本さんにはその事は伝えていないし、勿論プロフィールにも記載していない。
人に説明する際は便宜上”ボランティア”という言葉を使うが、社会的には”自己犠牲による無償の奉仕活動”と認知されているようだ。
私は自分が楽しいからやっていただけで、自己犠牲と感じた事は無い。経験者はその感覚が分かると思うが、初対面の方に説明するのは難しいので後々話す事にしている。
にも関わらず、松本さんは突然言い当てた。
ド直球な質問を受けて困惑していたが、隠す理由は無いので素直に答えた。
「はい、やっていました。なぜそう思ったのですか?」
「話し方や振る舞い方から、様々な年代の方と対話を重ねてきたんじゃないかと思いました。」
とんでもない観察眼と洞察力である。顕微鏡でしか見えない世界の微々たる変化を記録する人種の恐ろしさを垣間見た。
日和りの代償
コーヒーも飲み終え、お互いに少し話疲れてきた雰囲気も漂ったので解散することにした。
ここで問題が発生した。
先ほどの質問とその観察眼に日和った私は、連絡先も次のアポも取れないまま解散してしまったのである。
初回の黒木華とはLINEを交換し、次の日程も決めてから解散した。
先の質問の件も含め、松本さんの人格に圧倒されて日和ってしまったのである。
ここにきて「がっついてると思われたくない」という妙な意地が出てしまった。
「また会いましょう」とは言ってくれたものの、次回が本当にあるのか。
アプリ上では繋がっているが、それ以外の連絡手段は何も無いままである。
しかしながら日和った自分を責めている暇はない。
というのも、この後すぐに黒木華と2回目のデートが入っているのである。
この週末は土曜の昼に1件、夕方に1件。翌日もランチとディナーで2件入っている。凹んでいる暇など無い。
松本さんを見送った後、私はすぐに新橋へと向かった。
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