あざらしの輪2021.10.10
コロナ過で延期になったまま中止になるLIVEが多い中、ついに実現した「あざらし」のワンマン。
2021年9月29日に新作「TUBUYAKU」も発売され奇しくもレコ発LIVEともなった。
久しぶりの下北沢は緊急事態宣言も明けた日曜だけあって駅前は賑やか。
快晴のもと、街中の喧騒を抜けた先にある下北沢Lagunaへ。
開演はほぼオンタイム。
リラックスした感じでまずは「弱虫」「でんぱ人間」を披露。
定番曲「明日元気になれ」でMC。
いつものたどたどしいのかスムーズなのかわからない語り口で和やかな雰囲気。
ここで新曲「TUBUYAKU」が披露される。
SNSや配信などで何度も聴いている曲だが、やはり生はいい。
「TUBUYAKU」はあざらしの楽曲の中では少し異色のナンバーだ。
言葉のひとつひとつにメッセージという『棘』が付いている。
でもその棘は非難する棘ではなくあくまで問いかける棘だ。
個人的にはあざらしの楽興の魅力のひとつは「決めつけない」「押し付けない」ことだと思っているのだが、それは「越えて」(今回は入っていないが)のようなロックナンバーでも同じ。
そして、様々な表現を持つあざらしの楽曲を支える演奏陣が紡ぎ出す音こそがまさに「立体音響水族館」と呼びたい素晴らしい演奏なのだ。
あざらしの基本的なスタイルは所謂弾き語り。
常々、シンプルにギターと歌で紡がれた楽曲をバンドスタイルで再現する際に、大げさなアレンジになる事が多いと感じることが多いのだが、あざらしを支える3人は違う。
そこにあるのはあくまで曲を活かすためだけの音。
打音のひとつひとつが曲のメロディや歌詞に寄り添うドラム。
柔らかな曲もハードな曲もけして邪魔をしない。単に強弱が上手いとか言うレベルでは無く、支えながらの押し引きがあまりに自然にサウンドを支えている。
LIVEのオープニングからアンコール最後に至るまで正確なカッティングとフレーズで彩りをつけていくギター。
けして派手すぎずかと言って全く埋もれない。
今の音どうなってるの?というギミック的な音色も多々織り交ぜながらメロディと歌声をバックアップしている。
そして、ステージとフロアをキラキラと包むのがパーカッションだ。
ある時は広くある時は深く鳴る様々な音色が心地よい。
基本のセッティングだけでなく何処からかMAGICみたいに楽器と音が出てくる。
くるくる変わる音の万華鏡が狭目な箱を広く広く感じさせる。
何よりも、この3人があざらしを大好きなことが伝わってくるのがいい。
表情や手元、そして鳴らされる音から好きが伝わるLIVEはなかなかお目にかかれない。
揺られながら感じながらイメージしたのが、立体音響水族館だった。
言うなればメロディーと歌詞が、深海のサンゴ礁という土台で「あざらし」そこに乗って弾き語り、3人が周囲を泳ぎ舞いながら楽器を奏でる熱帯魚とでも言えばいいのか。
「双子座流星群」では見えるはずのない星が流れ「愛が育て花」ではお決まりの振り付けも相まって花が咲き乱れる。
手拍子も忘れて聞き入ってしまう瞬間が何度もあった。
新曲として披露された「歌っていたい」から最後は名曲「ビューティフルライフ」で締め。
終始和やかな雰囲気ではあるがやはり延期などもあったことでウルウルとした場面も。
あざらしとメンバーには目指す場所がある。
ぶれないその思いはファンも重々承知である。
いつの日かその場所で鳴り響く立体音響水族館を今から楽しみにしてる。