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工事のフジヤマさん【ショートショート】


毎朝おじさんがいる。

毎朝ぼくの「あさのつうがくろ」に工事のおじさんがいる。

ぼくは、学校にいくのに、そこを通らないといけはい。

おじさんは、いつもみんなに言う。

「おはよう。今日もかっこいいね。」

「今日の靴、真っ白ですてきです。」


だれでも褒める。

朝からだれでも褒めてくれる。


だから、ぼくたち小学生にも、大人にも大人気。

みんな朝はいそがいけど、なんかおじさんに会いに行っているような気がする。


でも、おじさんのことをよく知ってる人はいない。
たぶんぼくのお父さんくらいの年れいで、ケッコンはしてなさそう。
どこにすんでいるのか。
なんでこのお仕事をしてるのか。

同じクラスのけんちゃんは、工事のおじさんの名前を聞いたんだって。

おじさんは、フジヤマさんっていうんだって。


名前がフジヤマってだけ。下の名前も、かん字でどう書くかも知らない。


でもフジヤマさんはこのぼくたちといっしょにすごしてて、いつもあの場所にいる。
そして朝、何かほめてくれる。


ぼくは今日、
「かっこいいぼうしですね。」
とほめてもらった。

ぼくは、
「いってきます、フジヤマさん。」

初めて、名前を言ってみた。

「今日もありがとう。」って言いたかったけど、言えなかった。
なかなか言えないのは、横断歩道が短いせいだ。



朝からみんなにしあわせをくれるフジヤマさん。

ぼくと、みんなに、いい1日を願ってくれている。


今日は、学校で「大人にお仕事インタビューしよう」という宿題がでた。

ぼくは真っ先にフジヤマさんに聞こうと思った。

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