【今日の論文】脳性まひ者の運動制御における視覚情報と固有感覚情報
概要 成人脳性まひ者および健常者を被験者とし、視覚及び固有感覚を手掛かりとした位置のマッチング課題を行った。脳性まひ者は固有感覚情報のみを利用する場合よりも、視覚情報を利用して課題を行う際に誤差が増大し、異種感覚統合の困難が生じた。
固有感覚情報 …体の動きに関する情報を伝えてくれる感覚。
(ex:関節、筋、腱の動きを検出する、力に関する感覚)
■脳性まひ
〇アテトーゼ型
…不随意運動、筋緊張、知的発達は比較的保たれる。
〇痙直型
…四肢の動きが少ない。筋緊張高い。知的発達はさまざま。
〇失調型 …体の震え、バランスの悪さ
〇混合型 …上記の2つ以上のタイプが混合している。
(症状例)手足のまひ、体が硬い、反り返り、飲み込みやかむ力の問題、てんかん、視覚障害 など
方法
被験者 脳性まひ者3名、健常成人12名。
手続き テーブル、椅子ともに最適な作業空間設定であるとされる差尺で調節。肘をテーブル上につけたまま机上のハンドル2つを握ったときに肘関節が90度になるように設定。
(1)感覚統合に関する条件(視覚+固有感覚) 被験者は非利き手側のハンドルを動かしターゲットを設定した後、利き手側のハンドルをその脇に並べる。利き手側の視覚情報は遮断。
(2)視覚 片手を膝におき、実験者によって設定された非利き手側のターゲットを見ながら利き手側のハンドルをその脇に並べる。利き手側の視覚情報は遮断。
(3)固有感覚 被験者は非利き手側のハンドルを視覚情報が遮断された状態で動かしターゲットを設定した後、利き手側のハンドルを視覚情報が遮断された状態でその脇に並べる。
(4)固有感覚:静止時 被験者は利き手側のハンドルを視覚情報が遮断された状態で動かしターゲットを設定した。実験者は非利き手側のハンドルを被験者に見える状態で少しずつ動かす。ターゲットと同じ位置に実験者によって動かされるハンドルが到達した時点で実験者に合図を送る。
(5)視覚記憶 実験者は非利き手側のハンドルを動かしターゲットを設定する。被験者はターゲットの位置を5秒間で記憶。ターゲットに関する視覚記憶、両手の感覚が遮断された状態で、ターゲットに関する視覚記憶に基づいてターゲットの位置まで動かす。
結果と考察 脳性まひ者群において、視覚情報を利用して巧緻運動を行う際に課題成績の低下がみられ、異種感覚統合の困難が生じていた。アテトーゼ型では、運動中の視覚フィードバックよりも運動開始以前のターゲットに関する視覚記憶に依存して、巧緻運動を行うスキルが発達している。また、視覚運動協応動作がアテトーゼ型まひ者の筋緊張・不随意運動増大をもたらしうることを示し、視覚記憶に依存した運動方略の有効性を示唆した。
感想
・脳性麻痺者の指導には視覚的にモデルをみせてから、はいやってみて!がいってことか。動作中にやるっていうのはそこまで有効ではないと。
・脳性麻痺への支援、指導について考えるのにとても参考になりました。
・脳性麻痺の~型を絞って研究するだけでも、十分参考になるデータが取れそう。というか、そっちの方がわかりいい気がするが…。きっと、知的発達障害とおんなじ感じで、型で分けられるようなものではないのだろう。混合型もあるし。スペクトラム、的な。
文献情報
石濱裕規. (1999). 脳性まひ者の運動制御における視覚情報と固有感覚情報の役割. 理学療法科学, 14(2), 47-53.