オーストラリアでテレビデビューした話。-前編-
実体験に基づいたフィクションです。
(注)この話は、『④-1留学やワーホリそれ自体に失敗した人たちの話。』と同じです。マガジンで分類するために、別タイトルで同じ内容の記事が2つになりました。
「とうとう到着した。」
パスポート取得、ワーホリビザ申請、どれもが生まれて初めての経験だった。煩雑な手続きに何度もつまずき、出国日まで間に合わないと焦ったくらいだった。
でも、今日からワーホリ生活が始まる!不安よりも期待が大きかった。
はやる気持ちをおさえつつ、次々と運ばれるベルトコンベヤー上の荷物を凝視していたが、私の荷物はなかなか出てこない。
流れてくる荷物はどんどん少なくなり、とうとうベルトコンベヤーは止まった。
(えっ⁉嘘でしょ⁉)
Lost Baggage
荷物が紛失してしまったのである。
(落ち着け落ち着け)
パニックになりそうになりながらも、紛失対応窓口に並ぶ人の列の最後尾についた。
他の人がスタッフに何と言ってるか聞いて、私も同じように言おうと決めた。
私の英語のレベルは、出国直前に合格した英検4級レベルである。
荷物の大きさ、形状、色、ホームステイ先の住所、電話番号を身ぶりや手ぶり、筆記で伝えた。ちゃんと通じているか自信はなかった。
(2ヶ月どうしよう)
私は茫然自失しながら、入国審査までたどり着いた。
入国審査のスタッフは、
「(入国審査に)来るのが遅いし、荷物も少ない。どうしたんだ!」
と聞いてきた。私の英語のレベルは英検4級だ。これからの会話のやり取りは、スタッフは恐らくそう言ってたであろうと想像して書いている。
私は半泣き状態で、
「Lost Baggage!!」
と言った。
スタッフは、
「それはお気の毒に。」
と同情してくれた。
機内に持ち込んだ小さなバッグを開けると言われた。
Lost Baggageのショックが大きすぎて、私の脳内はほとんどそのことで一杯だったのだが、実はこのとき、私はある普通でない状況に置かれていたのだ。
フサフサのファーみたいなのが付いた大きなマイク、まぶしすぎるライト、肩にかつがれた大きなカメラ。
テレビ局のクルー!
しかも、撮影されている被写体の中心にいるのは自分だった!!
(つづく)
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