キンセンイシモチを飼う
みなさんこんにちは。椎名さんです。椎名さんは2017年~2020年まで某海水魚飼育サイトを作成してきたが、その某海水魚飼育サイトを追い出されてしまった。
私は一般のマリンアクアリストが好むヤッコ(キンチャクダイ科)や、チョウチョウウオ科の魚はあまり好きではない。またサンゴ水槽で飼育するというのが好きなので、チョウチョウウオ科の魚を入れることができないというのもある。私が好きな海水魚はほかの人とだいぶ異なっており、テンジクダイ、スズメダイ、ハゼ、カエルウオ、ベラ、長物といった魚を好むのである。ここではそれらに特化した(ほかの魚を紹介しないとはいわない)、魚飼育の話をしたいと思う。
今回は私が好きなテンジクダイの仲間、キンセンイシモチの飼育法をご紹介したい。
キンセンイシモチとは
キンセンイシモチはスズキ系・テンジクダイ科・スジイシモチ属の魚である(コモリウオ目とされることもあるが、これは時期尚早であろう(コーラルフリークス誌26で書いた通り)。なおテンジクダイ科は現在ではハゼの仲間と近縁であると考えられている。
わが国では南日本太平洋岸、琉球列島で見られる普通種で、体側を頭から尾まで走る細縦帯がきれいである。
キンセンイシモチと近縁種
キンセンイシモチは従来はインドー太平洋に広く分布するとされてきた。しかしながらKuiter and Kozawa (2019)によれば、インドー太平洋に複数種がしられており、日本に分布するキンセンイシモチではこの図鑑ではOstorhinchus sp. 4とされていて、従来キンセンイシモチと同種とされ学名に使われていたO.properptusのほうはオーストラリア近海、パプアニューギニアなどの海域に生息するという。
スジオテンジクダイは腹方の青白い線が入るキンセンイシモチの近縁種で、古くからのアクアリストやダイバーであれば「キンセンイシモチ・ドット型」という名称でおなじみの種である。学名は従来はO.holotaeniaなる学名があてられてきたが、この学名の種はインド洋産のものとされ、現状日本に生息するスジオテンジクダイは学名については「名無しさん」である。また東南アジアからはアカホシキンセンイシモチという種も輸入されてくる。これは尾柄付近に赤い模様が入るのである。
キンセンイシモチの飼育
キンセンイシモチの飼育システム
飼育システムは強制ろ過でもナチュラルシステムでも問題ない。ただしナチュラルシステムについては魚を多く入れられるシステムではないので、シビアなサンゴを飼育するのではなければ強制ろ過システムでよいだろう。
キンセンイシモチの水質
キンセンイシモチはテンジクダイ科としては水質悪化に弱いように思う。したがってできるだけ高いろ過能力を有するシステムか、負荷が少ないナチュラルシステムでの飼育が望ましい。60cm水槽なら上部ろ過槽を使用するのが望ましい。外部ろ過槽(パワーフィルター)はパワーがイマイチなので、単独で使用するよりも上部ろ過槽との併用が望ましい。そうすればクーラーとの接続などのメリットも大きい。
キンセンイシモチの水温と病気対策
キンセンイシモチは大体20~27℃くらいの水温で飼育したい。最適は25℃で、水温が一定であることが飼育に重要である。水温の上下が大きいと白点病などに罹りやすい。ほか殺菌灯を導入することも可能であるが、殺菌灯は導入すると水温が上がりやすいというリスクもあるため、できるだけ水槽用クーラーとの併用が望ましい。
キンセンイシモチの餌
自然下では動物性プランクトンや、口に入る小魚などを捕食するが、飼育下では浮遊性の配合飼料などいろいろ食べてくれるので助かる。どうしても食べないときは水温は適正であるか、あるいはほかの魚に怯えていないかチェックしたい。またたまに冷凍のプランクトンフードを与えると喜んでたべる。
キンセンイシモチをお迎えする
キンセンイシモチを購入する
キンセンイシモチを購入するとしては比較的よく入荷する。そのため価格は安価である。したがって入手性自体はよいのだが、雑に扱われやすい傾向がある。つまり飼育する個体はしっかりとチェックするようにしたい。体側に白いスレ傷があったり、お腹が凹んでいる、背肉がついておらず頭が大きく見える、鰭が溶けているなどの個体は絶対に危ない。また入荷してすぐの個体も避けたほうがよいだろう。実際に筆者も輸入されたばかりのアカホシキンセンイシモチを数日後に死なせてしまった経験がある。
キンセンイシモチはよく似た種とあわせ、西太平洋から頻繁に入って来るが、近年は沖縄から入ってくることもある。沖縄産の個体は、輸送距離が短く状態よく届くことが多い。
キンセンイシモチを採集する
キンセンイシモチは採集することもできる。南日本太平洋岸では浅瀬で群れていることがある。大きな網を広げて採集できるが、スレ傷に弱いため網でスレるのを防ぐために、網をあげず空っぽの容器で水ごと掬いバケツにうつすとよい。
成魚に近いものは夕方から夜に釣れることがある。ただし針を飲み込んでしまったものは飼育には向かない。また釣れた個体を飼育しようと思うなら、魚をコンクリートや磯の上に直置きするのは絶対に避ける。
キンセンイシモチを混泳させる
キンセンイシモチは温和な魚であるが、口に入る魚は食べてしまうこともあるので注意したい。ほかの魚はおとなしい魚とは可能であるが、スズメダイやメギス、ゴンベの仲間など小さくても気が強い魚も多いので、これらの魚との避けたほうが無難である。同種や同じテンジクダイ科魚類同士の混泳はサイズに差があると失敗しやすい。
サンゴとの相性は特に問題はない。沖縄のソフトコーラルやインドネシアのハードコーラルなど、浅い海のサンゴとならばどんなサンゴとも相性がよい。捕食性のイボヤギやヤギなど、陰日・捕食性サンゴとの飼育ではキンセンイシモチがサンゴにあげた餌の残りを捕食するため都合がよい。ただしこれらのサンゴは初心者向けとはいえない。