
野良のライオンを飼育する方法#6 野良ネコ・インマイルーム
さっき知り合ったばかりの猫が、私の後ろを歩いている。
何も言わずに、とぼとぼとくっついてきている。
こうして見ていると、ただの猫にしか見えない。
決して、この猫が人間の言葉を話すようには見えない。
この猫は日本語で話すだけでなく、人の心を読めるようで、しかも私がバイトをクビにならない方法を伝授しようとしている。
そして、その交換条件に「3日、私の家に居候させろ」とまで言ってきた。
そして、バイトをクビになった可哀想な私は、この猫が私よりも何枚も上手だとみて言われた通りこの猫を家に招き入れようとしている。
「あら、みたちゃん。こんばんは。」
「オーヤさん、こんばんはー」
「バイトの帰り?遅くまで偉いわね〜」
オーヤさんは私が借りてる部屋の大家さん。
大家は言いにくいからオーヤさんと呼んでいる。
階段を登り、2階に上がって一番奥の部屋が我が家だ。
鍵穴に鍵を入れると金属特有のガチャガチャという音がして、ガッチャン。このアパート全体に鍵が開いた音が鳴り響く。
「おま、バレなくてよかったにゃ〜今のうちのオーヤさん。うちは動物ダメなアパートだから、バレんなよ。」
小声で後ろにいる猫に声をかける。
「心得た。」
今度はキィ…と高い音がドアから鳴る。
「ほら、入って入って。」
そう言って後ろを振り向くと、そこにいた猫はいない、
どこへ行ったんだ!?と辺りを見渡すと部屋の中から
「家の中の方が寒いんじゃないか?」
と、猫の声がした。
いまこの瞬間、私は動物禁制のアパートの規則を破ってしまったのであった。