ラーメン屋さんでの感動体験
夏が来ると思い出す。
子供がまだ小さかった頃の話。
私と、夫と、当時8ヶ月くらいの子供とでラーメン屋さんに行った。
人気店だったせいか、人が次々と入ってくる。
真夏の暑さで、熱気を閉じ込めた店内の窓は水滴にまみれ、ラーメンを食べてる人からも大粒の水滴が流れていた。
そこは札幌でもかなり有名な汁なし坦々麺屋さん。
私と夫はいつも通り注文をしてから、私は子供に離乳食をあげ始めた。
もちろんお店の許可は取っている。
しばらくして汁なし坦々麺が運ばれてきた。
見た目も美味しそうな汁なし坦々麺。思わず涎が出そうになる。
がしかし、私は離乳食という大きなミッションを達成しなければこの美味しそうな坦々麺を食べることができないのである。
夫は『先にいただいちゃうね?俺が食べ終わったら交代するからね?』と言い、坦々麺をかき込む。
こどもはまだ食べ終わらない。
あー、いいなー。
あー、あたしも食べたいなー。
あー、美味しそうだなー。
あー、お腹すいたなー。
そんなことを思いながら離乳食をあげ終えた。
やっとこの時が来た!
私も、この坦々麺を食べる時がきたんだ。
もう冷めてしまった。が、そんなの関係ない!
冷めたものを食べるなんて子供がいれば日常茶飯事だ!!
ずるずると汁なし坦々麺をすする。
おーーーー!痺れる美味さじゃないの!!
すごい美味しいじゃないの!!
なんて少し食べたところで店員さん。
『あの、よろしければこちらの温かいものをお召し上がりください。』
ん?一瞬何か分からなかった。
『いえ、もう食べてしまってますし、勿体無いので大丈夫です』
『大丈夫ですよ、そのままで良いので、温かいもの食べられませんよね、子供が小さいと』
そう言って、温かい汁なし坦々麺を置いていってくれた。
冷たいものでも大丈夫、十分美味しいと思ってたけど、温かいそれは遥かに美味しかった。
家でもよく冷めてしまったものを食べていた。
忙しくて、そんなのしょうがないと思っていた。
美味しさと、痺れる辛さと、店員さんの心遣いに私の目から大粒の水滴が出そうになった。
心が痺れた。
どうにかお礼がしたかったので、自販機にある冷たいドリンクを買ってお礼をした。
『いいんですいいんです!またいつでもいらしてくださいね!』
だって。
やだ、もう。泣ける。
痺れる辛さと、この心の温かさは一生忘れない。
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