ものづくり屋 #1 サーフボードケース 岡山編
本日は「ものづくり屋」さんとしてのお仕事風景を紹介します。
2015年に SHIHO TANAKA ART を立ち上げて、初めは絵画や版画をやっていましたが、それだけでは商売あがったり。 現実はそう甘くはありません。
そこで色々な事をやりました。6年目の今も、マガジンが増えていく様に様々な仕事をやっています。
なので、初めてお会いする人に「お仕事は何ですか?」と聞かれると凄く困ってしまいます。
現在は、絵画・版画・看板・デザインが主な仕事になっていますが、全てに共通するのが「ものづくり」をやっているということです。
「こんなのできますか?」とお客様に言われた仕事はほとんど断っていません。
恐らく、欲しい、けど作っているところ・売っているところがないのではないか?と推測しています。
私自身、物を作ることが大好きだったので、探しても無い様な物は「作ってみよう!」と考えます。でも、もし作る時間がなかったら?どうやって作るかわからなかったら? そこで私の仕事が生まれていくのだと考えています。
特に昨今、大量生産などにより、物や物のデザインは一元化されつつあります。私は人と同じ物を持つのが嫌いなタイプなのでよく解るのですが、1つしかない自分だけのものが欲しい人も沢山います。カスタムオーダーですね。
そんなこんなで、サーフボードファクトリーのお客様の要望によりカスタムサーフボードケースを作ることになりました。その様子を紹介します。
1. まずはじめに
まず、前提として、サーフボードファクトリーではサーフボードをカスタムオーダーできるということです。 お客様の身長、体重に合わせては勿論、形、色、細かくオーダーできます。それを、ハンドシェイプと言って手作業で1本1本シェイパーと言われる職人が削って作ります。
現代ではマシンシェイプと言って、数値をデータ化してボタンをポンで機械で量産して作っているものも多く存在しますが、サーフボードをハンドシェイプでカスタムオーダーするお客様は、自分だけの1点ものが欲しい方ばかりです。
そして、問題はそのボードを入れるケースです。 ケースは大手のスポーツ用品店、ネット通販、サーフショップ等どこでも買えるのですが、細かく寸法をオーダーされて作ったサーフボードに対して、ケースの長さや形はそんなに細かいサイズではないのです。
一般的に売られているものに、カスタムオーダーされたボードを入れると、ノーズという先っちょの部分の形も色々、長さも色々、形の違う大きいケースだとダボっとするんですね。
それが嫌だ!というのと、やはり皆んなと同じは嫌だ!ってことです。そこでピッタリとフィットする専用のケースを作ろうということです。
2. ヒアリング
今回、2人のお客様に注文をいただき、お聞きしたのは、お二方のサーフィンのスタイルです。
これは興味深く、面白かったです。
サーフィンをされている方はよく解るかもしれませんが、どんな場所でサーフィンしているかでサーファーの生態は全く違いますね。
私は、宮崎県に住んでおり、学生時代、自転車の頃からサーフィンをしています。免許をとって車になっても、ほとんどボードをケースに入れたことがありません。
家から海までは、そこからここ。ケースが必要ない文化なのです。
そして、今回のお客様は岡山県にお住まいのサーファーの方でした。
お話をお聞きすると、岡山県は瀬戸内海ですのでサーフィンをする波はほぼありません。
それで、サーフィンには四国か日本海(鳥取など)へ行くそうです。
車で数人乗ることもあるそうで、ボードは屋根のキャリアに載せるとのことです。
そして、高速道路を走ります。
同じサーファーでこんなにもスタイルが違うなんて、まさしく文化です。
話は長くなりましたが、次の製作にてその文化に合った特徴を紹介していきます。
3. 製作
ピッタリとフィットするボードケースを作るには、ボードの現物が必要です。
ですが、ボードの完成と一緒にお渡ししたいのでファクトリーでボードを作る時に使うテンプレートというものを借ります。厚みや反りなどの細かい寸法も聞きます。
このテンプレートを使ってボード全体の形をトレースします。
これは、別のケースの時の写真なのでボードの形が違っていますが、こんな感じで形を布に写します。
センター、幅、計算… 私は計算が大の苦手でして、頭から煙が出そうでした。
このネイビーのキルトの生地がケースの内側になります。
キルトのステッチ(糸)の色を活かしたかったので、完成では裏側の白い面が見える面になります。
外側に出る表面は別の生地、丈夫な帆布生地を使ってデザインしました。
シルクスクリーンでサーフボードファクトリーのロゴを刷ります。
お客様はお二方でしたので、ショートボード用とロングボード用を製作しました。
まず、ロングボードの特徴は、車のキャリアに積んでの走行中、紐などがバタバタするのが嫌だということで、短めに持ち手をつけました。
それと、側面はジッパーを大きく取りました。これは、YKKさんに最大の長さの指定の色のジッパーを注文しました。(持ち手の色と合わせたかったので)
ロングボードは長さが2m以上ありますので、ケースに入れるのが大変です。
長いジッパーからテール部分まで大きく開く様、テールはマジックテープをつけました。 バタバタしないようにくるんと巻いて、両端にカチッと留めれるパーツをつけました。
完成です!
ショートボードの方は、オンフィンと言ってフィンがボードに固定されて一体化されているタイプです。(フィンの部分は取り外して様々な形に取り替えるボックスのタイプが一般的ではありますが)
フィンを外に出してしまおう!ということで
補強を加えつつ、出しました。
周囲はロングボードと同じ仕様で出し入れし易さ重視です。
ロングボードも同じ加工をしましたが、ボードに傷がつかないようにジッパー内側には当て布的なパーツをつけてあります。
ロゴを配置
全体はこんなデザインにしました。
ケースに入れてもボードの形が変わらないというのは、ありそうで無かったものです。そりゃそうです、1点もので、ミシンこそ使えど手作業です。やらないですよね。でも、誰もやらないから無いんです。
好評をいただきましたので、調子に乗ってフライヤーまで作って、その後、数点作らせていただきました。ありがたやありがたや。
その後の数点は、またこのマガジンで書いていきます。
お付き合いありがとうございました。