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そんなの友達じゃない。銀座の一夜

モノの値上がりが著しい。
大好きなコスメもお菓子もどんどん値上がり。
生活費も影響が出てくる。
さてさて、そんな中でもコスメの新商品は
変わらず次から次へと登場する。

業種は違うが、企業に勤める経験があるものとして、コスメは確かにかわいい、素晴らしい商品もある。しかし基本的には
私たち、あなたに合わせて作ってはいない。
これからの季節は、この色が流行るよ!という
ムーブメントを起こすのがミッションであり、
そこに私たちは乗っているのだ。

お揃のうれしさ、切なさ

自分の肌に合わなくとも、かわいくて買ったコスメもいくつかある。
また、インフルエンサーや人気のアカウントの方が
買ってみた、使ってみたコスメを自分も試したくて
いわゆる『〜買い』で買ったものもある。
それによってあの人やこの人ともお揃ということで共通の話題ができ、共感したり、SNS上のリプ、会話が弾む。
しかし、それは一瞬のことである。
間違いなく、他人はお揃とリプした後、
三日後には相手のことを忘れている。
カードの支払い、お子さんの教育費、今日の夕飯
どうしようか、など日常の事に忙殺されて
ともすれば自分が買ったコスメの事も忘れてるかもしれない。
共感すること、またコロナ禍を経て人との繋がりや縁は大事だと思うので否定はしないが、これだけでは友達というにはあまりに薄い。
コスメを買って共感するだけで、あの子が買うから私も買う…。
子どもの頃、みんな持っていて私だけ持っていない!と母にねだったあの頃や
やっと手に入れて、みんなの仲間に入ろうとしたら
もうその輪の中では次のブームが到来していた。
なんて事はないだろうか。

銀座の一夜、それは友達じゃない。

仕事のお付き合いで、銀座に連れて行ってもらったことがある。
ママさんは私を見るなり
『あなた、肌がきれいね。ちゃんとケアしてるでしょう』と言われたことがある。
私も思わず、嬉しくなり
食事やスキンケアの話になった。
さすが銀座で30年近く、店を構えているだけあって
人の見方が違う。
『あなた、メイクとかすることある?』
と聞かれた。
一瞬、え?と戸惑ったものの
目元や口元を観て何か感じたようだった。
それからいろいろとコスメの話をした時に
先に述べた、お揃いや『〜買い』の話になった。
間髪入れず、ママさんは言った。
『そんなの友達じゃないね』と。
ここからはママさんの持論なのだが
モノが買えた、同じモノで仲間というのは
何かの拍子ですぐ途切れる仲。
本当の友達は、気遣いなくだけど深入りしない
関係ができること。
またコスメにしても、人の好き好きだけども
いいブランドを一つ、これならこれ!と
決めて使い切ること。あれこれ使うのは
本当にブランドの凄さを分かってなかったり
使いこなせてないことにもなる、と。
世の男性をもてなし、話を聴くことに徹するママさんが初対面に近い私にここまで話すことで
稲妻に撃たれたような気持ちになった。
ママさんは、お店の奥にいる女性を呼んで
『ねぇ◯◯ちゃん、化粧品、何使ってる?』
と聞いた。
すると、お店の人は
スキンケアは洗顔、日焼け止め、朝夜のパックは
欠かしていない。
コスメは、とベースメイクこそデパコスだったけれども、メイクはプチプラを使っているとのことだった。
透き通るような肌、知性を感じる顔立ち。
決して語学や日本経済新聞を読んで勉強している事もひけらかさない。
世の男性が得意げに話すことも、笑顔で黙ってうなずきながら話を聴く。
そして決して人の機嫌を損なわない。
本当の美しさとは何かを見知った気がした。

女性が嫌がることはやめなさい

ママさんは
メイクをすることは男性でもあることだから
いいと思う。だけども
女性から見て明らかに嫌がるような事は
やめておいたほうがいい。とかく、SNSや動画など
面白い事、過激な事に人気が集まるけれども
それは一時のことだけ。
普通に、目立たなくとも女性としての振る舞いを
続けたほうが、後々長続きするし、本当の
友達ができるかもしれないよ。と言われた。
その姿勢、その矜持は30年近く続くお店の構えでもあるのだろうなと思った。
お店には目立った装飾はないけれど、品のあるママさんとお店の方、清潔感があった。
そして震災や経済危機、パンデミックなども乗り越えた強さと美しさがあった。
私がXやInstagramの投稿をなるべく女性のような目線を意識して作ったお弁当や食事、コスメの話題に振り切った理由もここにある。

フォロワーから友達へ

ママさんはSNSをやっているけれど、フォロワーの数にはこだわっていないと言い放った。
ここに本当の友達はなかなかいないよね、と。
人生の最後に身近に会える、または物理的に離れていてもLINEやオンラインで話せる人がいたら
その人は大切にしなさいね。と微笑みながら
水割りの氷を手早く取り替えていた。
そして、私に
あなたは女性ではないけれど
女性から悩みを相談されたときにじっくり聴く
答えは言わなくていい、とにかく聴くことができたら、自然と友達もできますよ。
と微笑み、私を誘ってくれた先輩のテーブルに向かった。
ほんの10数分の出来事だった。


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