『往復書簡』(仮)26復信
Sさんへ
こんにちは。
いきなりだけど、その友だちを大切にした方がいい。僕じゃなくて、その人に龍の絵を観せるべきだと思う。
それはともかく、この半年くらいずっと考えていたことがあって、それを書いてみようと思う。神と仏についてのイメージなんだけれど、まあ、僕の勝手なものでしかない。誰にも話したこともないし、Sさんには荷が重いかとも思うけれど、書くことで整理させて欲しい。
まず、自分の存在を極限まで小さくして一つの点だと考える。神はその点に全方向から向かって来る矢印のイメージ。仏はその点から全方向へ放たれるイメージ。ここまでいいかな? そして今度は自分を宇宙全体にまで押し広げて考えてみる。その時、僕は神の胎内にあるイメージ。同時に仏によって裏打ちされたイメージ。
この時の宇宙とは、人間の認識の限界、つまり世界全体と定義する。
とすると、神と僕の関係性を考えると、自分というものが残る。これを仏と僕の関係性で考えると、自分の存在と仏とが一致する。
最初の点というのは、自分の存在と同義だから、これらのイメージをまとめると、神は包み、仏は宿るということになる。うまく伝わっただろうか?
また、難しくてわからないと言われるのがオチだなと、書きながら思った。
僕もまだまだ、勉強が足りないということだろうね。
今日の手紙は、よっぽど出すのをやめようと思ったけれど、至らない自分を晒すのも経験のひとつとして受け止めてみたくて、出すことにした。無理に感想は書こうとしなくてもいい。またこんな手紙を書くこともあるかも知れないけれど、これに懲りずにいて欲しい。
ではまた。
T
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