『往復書簡』(仮)21往信
Tさんへ
こんにちは。
おっしゃる通り、今回の手紙は本当に難しくて、何度読んでもよくわからないことばかりでした。でも、地球が私たちの師だというのは、わかる気がします。
私たちの目に映る世界は、人間が作り出したものばかりのように感じる日もあるけれど、空を見上げれば太陽や雲や、夜になって星や月が輝くのを見ていると、私は自分が地球の一員なんだ、他のたくさんの生き物と一緒に守られているんだって、温かい気持ちになる瞬間があります。
あと、色について思い出したことがあるので、それを書こうと思います。
確か小1か小2の時だった気がするけれど。木の葉の色はだいたい緑色ってことになっていて、でもいろんな木があって、それぞれの緑色は鮮やか黄緑色のものもあれば、濃い緑もあるし、少し茶色がかったものや、あせたようなものもあって。
そうやっていろんな緑があるのを見ている時に、ふと自分の目に写っている一枚の葉の色は、他の人の目にも同じ色として写っているのかなって。
私の目と誰かの目は違う目だから、私が感じている緑色と誰かが感じている緑色が同じだっていう保証はないんじゃないかなって。
そう思ったら、なんだかとても不思議な気分になったのをはっきり覚えています。
あらためて考えてみても、確かめる方法ってないような気がするし。
Tさんにはこういう経験はありますか? 本当に、不思議だなぁって思います。
話は変わりますが、4月から私たちも高校生になりますね。
やっとケータイ持たせてもらえることになったのですが、今どきガラケーしかダメだって言われてしまいました。何度もお願いしたんだけれど、ダメでした。
でも、成績がよくなったらスマホにしてもいいって約束をやっとしてもらったので、勉強がんばろうと思います。今、私は中の下くらいなので、すごくがんばらないと無理そうだけど。
それに、今から進路の選択に迷っています。
将来どうするかについて考えても、はっきりしません。ただ、理系はちょっと向いていないと思うから、だぶん文系になるんだろうな。
美術部の友だちは、絵の専門学校に通い始めるみたいです。
早い人は中1から塾に通っているし、高1からはみんな予備校とか塾とか始めるって言っています。
私は学校に通うので精一杯なので、親も何も言わないし、まだいいかなって思っているけれど、考えが甘いのかな?
返事はいつでも大丈夫です。
忙しいってことなのかなって思ってます。
では、また。
Sより
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