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『往復書簡』(仮)17往信

Tさんへ

こんにちは。
街路樹の話、なるほどなぁと思いました。そんな風に感じるなんて、やっぱりTさんは自分の世界がある人ですね。私が同じ場面に出会ったら、たぶん木がかわいそうって思う気がする。悲しい気持ちになって、すぐに目をそらして、逃げ出してしまう。そして、見たことを忘れて、見なかったことにしてしまう。そんな気がします。

文化祭が終わって、なんだか抜け殻になってしまったみたいにボーッとすることが多いです。私は心も体も、エネルギーが足りないのかもしれません。 油絵はまあまあの出来です。自分で言うのもなんだけど。すごくがんばれたことが嬉しいです。先輩にやればできるみたいなことを言われてしまいました。今までがんばってなかったってことになってしまうんだけど、でもそうかもしれないなぁと思いました。 だって、初めて本当に描きたいものを描いたから。もう同じようには描けない気もしています。何を描いたらいいのか、わからないんです。

Tさんが言うほど、私は絵に関して、特に描くことについては情熱も実力もありません。前にも書いたけれど、絵を観ている方がずっと好きです。
ただ今回描き上げて感じたのは、画家の人たちがその絵に何を託しているんだろうって。そういう絵だけではないとは思います。それは人によって違うのは当然だと思うし。たまに公募展に行った時に思うのは、テクニックのあるデッサン力がすごい人と、色の配分や色彩感覚は完璧なのにって人がいて。すごいなと思う絵は両方揃ってる気がします。でも絵画なんて、正解はないし、鑑賞する人が好きなら、その絵はそれだけの価値を持つんだと思います。

Sより


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