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『往復書簡』(仮)10復信

Sさんへ

心配させて申し訳なく思っています。 髪の毛の話、悪いとは思いつつ笑ってしまった。女の人は大変ですね。僕は寝癖がついていても気にならないけど。
快適さは人間にとって、ひとつの幸福ではあると思う。でもそれだけではないし、もっと言えば、それでは幸せになれない人間もいると思う。多分、僕は後者だろうと思います。
僕はわかりたい人間なんじゃないかと考えるようになった。何をわかりたいか。それは、わからないこと全てです。例えば、人間とは何なのか。漠然としているのはわかっているけれど、どうしても頭から離れない。どうしようもない。
Sさんのいう、どうやって生きていくのかという問いとは、似ているようで全く違う。また、よくわからないと言われそうですね。
僕は読む本が変わりました。今、僕は本の中に答えを探している。見つかるような気もするし、無駄な努力という気がすることもある。よく、答えは自分の中にあると聞くけれど、自分の情動や経験できる範囲なんて限られているし、本を読むことによって様々な発見や気づきがある。自分を知る道だと思っている。
僕は、だけど。 SさんにはSさんの道があるのだと思う。
死について考えるのが怖いというのは、多分、普通のことだと思う。考えたくないという気持ちも、わかっているつもりです。
ただ人間は、いや、命あるものは全て、必ずいつか死を迎えるということ。これはどうしようもない事実です。 そんなことを考えていては安心して暮らせないと思うかもしれない。けれど安心と言うのは、その人それぞれの心の持ち様なんじゃないかと思う。怖がる必要はこれっぽっちもないよ。
そういうものなんだと受け入れてしまえばそれでいい。それだけのことだと思う。


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