見出し画像

『往復書簡』(仮)11往信

Tさんへ

夏休みになってのんびりしています。
暑いの、嫌いじゃない。

なんだかTさんとの差がどんどん開いて行くようで。
ちょっと焦ったりしています。

私は楽しいのが好きです。
Tさん、誤解しないでくださいね。
Tさんはそういうことを考えるの、楽しいのかなと思って。

ちょっと難しくて、全部をちゃんと理解できていないんだろうな、私。
そういうのって哲学ってことになるのかな? よくわからないけど。
 生きているもの全部、いつか死んでしまうって言われて、私は切なくなりました。
さすがに泣いたりはしなかったけれど。

ただ、それだけのことっていうのは、ちょっと私には受け入れられそうにはありません。だって、大切な人がいなくなるって、それだけのことって片付けられないと思うから。ちがうのかな?

私の学校では聖書の時間があるのだけど、神様はTさんには必要なさそうですね。そんなに私は強くなれないです。

別に洗礼を受けようとかは考えていないけれど、人間って罪深くて、か弱くて、でも愛すべき存在なんだと思っています。

そんなことより、夏休みの宿題がいっぱいあって、Tさんがいたら手伝ってほしいくらいです。8月には美術部の合宿があるので、本当はそれまでに終わらせたいのだけど、無理そうです。

毎日、本当に暑いので、お互い熱中症には注意しましょう。
では、また。

Sより


#小説 #書簡小説 #手紙 #手紙小説 #往復書簡 #往復書簡小説 #掌の小説 #短編 #短編小説 #コミュニケーション #コミュ障 #文通 #理想の文通 #リアリティなんていらない  

いいなと思ったら応援しよう!