
種を蒔く
2年ぶり、大学時代の友だちと再会する日。コロナ前は、共に活動していたのだけど、コロナ後は顔を合わせる機会もあまりなく。彼女は変わっているだろうか、何から話そうか。不思議と落ち着いた気持ちで、待ち合わせ場所へ向かった。
短いような長いような2年の月日。1年先に社会人となった彼女と、仕事や生活、心境の変化などを、絶え間なくゆったり語り合う。
丁寧で、細やかで、隅々まで目が行き届く。淡々と物事に向き合う彼女が憧れだった。そんな彼女が、わたしのことをずっと憧れだったと何度も何度も伝えてくれた。いろんな人との出会いと行動力を以て、道を切り拓いているように見えて、と。
足らない部分があるから、人は惹かれ合う。
突っ走ってきたこの数年間、わたしは良くも悪くも過去を振り返らなかった。あたらしい景色や人との出会いに恵まれた反面、あまりに忙しなく動いて、もらったものを受けとれきれずこぼしてしまったことも多々あったように思う。指の間からこぼれ落ちた砂は、風で飛ばされて視界に入らない場所へと消えていく。立ち止まって見つめなおす時間と勇気が必要だ。
たかしまサーカスのお話も聞いてもらった。チームのなかでの役割や動き、各々の魅力の引き出し方。
「全体を把握するには時間がかかるし勝手が分からないと、やりたいことも言い出しづらいのかも」「じぶんは言われたままにやってみて気づくこともあったから、まずは声を摘んでお願いしてみるのも手かな」
たかしまサーカスまで日が近づいている現実に引っ張られ、どう在りたいかが薄まっていた。長い目でみて続けること。それが文化を根付かせ、育む一歩となる。自然の時間の流れに合わせた生活から感覚的に分かっていたはずなのに。
イベントも本のある場づくりも続けていきたい。そのために、高島へもう一歩踏み出そう。
彼女が、人と生き物の間に立つ翻訳者となるため、感情の揺れや躓きの言語化を試みるように。
わたしも、あなたの好きを教えてほしいから、土をつくり種を蒔く試みを始めるよ。

交わることから生まれる