ラストナゴム・死ね死ね団中卒市長と思春期の私
新型コロナウイルスで大変な事になっている昨今、持病のある方は特に重症化しやすいと不安を煽られる記事をよく目にする。
よく聞くのは心臓病糖尿病、そして肺癌患者と言った所か。そんな中、唯一肺癌患者として知る所の死ね死ね団ボーカラー・中卒市長が気にかかった。
中卒さんは84年に死ね死ね団を結成、メンバーチェンジを経ながらずっと新宿ロフトドーム(彼等の曲での名称)に立ち続けた。
企画にはブレイク前のPIERROTやFANATIC◇CRISISが出ていた頃もある。ジャンルは問わず、新人バンドの登竜門的存在だった。
これを検索で引っ掛けて読んでるようなファンの方には解るだろうが、その企画ライブが毎回えらい凝ったタイトルでして…ここで私の備忘録を一つ。
約20年前、当時中学生の私はNACK5の某深夜番組から流れてきた曲が忘れられず、雑誌で調べて生で観れるライブがある事を知った。
なけなしのお年玉を握り締め、U和駅デパート内のぴあへ10時に間に合うよう勇んで出陣。
受付用紙に必要事項を書いている間、「氣志團のチケットないの!?」と怒鳴り込み、秒殺されました(訳)と丁重に断られていた田舎ヤンキー系お兄さんがいた。
散々悪態を口にしながらヤンキー退場後、何事もなかったかのように受付のお姉さんが確認の為公演名を口にする。
「〇月〇日新宿ロフト、『下着強奪速度5』でよろしかったですか?」
支払いを済ませ逃げるように帰路に着いた。
それこそ下着を強奪した奴みたいに。
もう、よろしいも何もよぉ……。思春期の未発達な精神には刺激が強すぎた。
後日そのライブへ足を運ぶと、ステージ上にそのタイトルの書かれた巨大札が煌々と掲げられ、皆その下で曲を披露していた。死ね死ね団出演中はそれに加え『BOØWY』の文字も背景に貼ら…
…あ、違う。なんかアレ最後『A』もついてんじゃん。
ドリンクチケットと引き換えで貰えるメロンシャーベットをストローで吸い込みながら
「…ボウヤ…?」と疑問符が頭から離れなかった。
因みにお目当てはその後トリに出た犬神サーカス団。
その後も度々対バン、時にワンマンで中卒市長を見掛け、アンケートを書けば自宅に黒塗りの封筒でステッカーやフライヤー、ご丁寧に年賀状まで届いた。
物販に私の本名入り缶バッジが勝手に売られており、驚いて仕方無く買い取った事もあった。スタッフさん曰くアンケート記入者の名前で作ったんだそうで、色んな方の名前があった。あれ売れ残ったらどうしてたのかな……。
因みに『営利目的ライブ ようこそお金たち!ファンの掴み取り』シリーズ企画はかなり長く続き看板ももはや見慣れる程だった。
彼等のCDも何枚も購入。
その中のこのアルバムに『菊屋(ハート)に火を点けて』という曲があり、まあそれは俺がいつも煙草を買う酒屋が菊屋というんだよといった内容の煙草への愛を綴る曲なんだが、最後はこんな歌詞で締め括られる。
《 俺はちなみにマルボロを吸う
何故こんな歌詞を書くのかというと
ファンに差し入れでもらうため
俺はどんな事でも 歌詞にするのさ 》
そして、物販に来た常連ファンが「おはようございまーす」と挨拶代わりに赤マルの箱を差し出す光景をよく見るようになった……
皆悪気はない、それは解っていても肺癌になった報を聞いた時は
「ほら!!あんな歌詞書くから!!!」
恐らく皆思ってた、色々思う所もあり。昔からそういうキャラだから仕方ないんだけど。
どうかコロナで悪化する事なく、またLOFTの市松模様客席からあなたの神々しいお姿を拝見、何という眩しさだとまた目を潰したい所です。
戦え死ね死ね団。
KEEP THE SINESINE DAN。