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街の怪談、そして真実(後編)

昨日のつづき>

当時住んでいたあの家はとても私好みで、快適で、憧れて住んだ家だったけど、同時にあの一帯のなんとも言えないほの暗さを思うと、やっぱり決して「気のいい場所」と、手放しには言えない空気があることはたしかだった。
実際、あの家に住み始めてからしばらくして、当時の夫に女性問題とお金の問題が同時に発覚。直後に夫は蒸発、のちに離婚。同じマンションに住んでいた友人夫妻も、その数年後に離婚している。また、タクシーの運転手さんに聞いた話によると、かつて変装したり、箱に入ったりして日本からドラマティックに脱出した某自動車会社の社長も、あの家に住んでいたことがあるとか、ないとか。

そんないわくつきマンションのことを今になって思い出したのには、理由がある。受験シーズン真っ只中の娘が、このところ、勉強の息抜きに古地図を見ている。「この辺は軍事学校だったらしい」「浅草に”おいてけ堀”を見つけた」などと、隙あらば昔の都内に思いを馳せている。そんな娘とふいに、かつてのあの場所の話になった。あの場所は本当に斬首場だったのか? あの石碑は、一体なんだったのか?

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