のどの炎症患部に直接塗布する3つの有効成分を比較する:のどスプレーの解説
うがい薬とポピドンヨード
のどの炎症を鎮める市販薬には、経口摂取する「内服薬」の他にも炎症患部に直接塗布する「うがい薬やのどスプレー」、「のど飴やトローチ」などがあります。
うがい薬とのどスプレーについて調べたところ、のどの炎症を鎮める有効成分は同じものであることがわかりました。
有効成分が同じであれば、後は使い方が楽などの「利便性」が求められます。うがい薬について、考えられる利便性などの欠点を3つ列挙します。
1.うがい薬は「場所」を選びます
うがい薬は容器に入った薬液を水で薄めて使用しますが、これがなかなかめんどくさい。外出先に水がなければ使用できません。
そして薬液を水で薄めるためにコップなどの別容器が必要になります。キャップが付属しているものもありますが、そうでないものは移し変える別容器が必要です。
2.うがい薬は効果が薄い
うがい薬といえばイソジンなどのヨウ素が入った「ポピドンヨード」が有名ですが、このヨード液を用いた「うがいのかぜ予防」の研究が2002年に行われ、被験者を3つのグループに分けました。
・水うがい群
・ヨード液うがい群
・うがいをしない群
100人中のかぜの発症率は次のとおりです。
・水うがい群17人
・ヨード液うがい群23人
・うがいをしない群26人
また、データ間のばらつきをそろえる解析を実施して「うがいをしない場合」の発症率と比較しました。
・水うがい群は40%低下
・ヨード液うがい群は12%低下
この研究から水うがいはヨード液よりかぜの予防に有効で、うがいをしない場合と比べるとかぜの発症が4割減少することがわかりました
原因として考えられるのは、水うがいは水道水に含まれる「塩素」が何らかの効果を発揮したのではないか、ヨード液はそれに含まれる「ヨウ素」がのどの常在菌まで殺菌、あるいはのどの粘膜まで傷つけたのではないか、としていますが正確な解明までには至っていません。
3.ヨウ素は副作用、使用できない人が多い
うがい薬の有効成分である「ポピドンヨード」はヨウ素化合物の一種で、有効ヨウ素が1割程度含まれています。
ヨウ素の殺菌作用は強力で、細菌だけでなくウイルスなど多くの病原体を殺菌しますが、一方で長期連用すると「甲状腺機能が低下」するなどの副作用があり、注意が必要です。
また、ヨウ素は妊婦や授乳婦に「してはいけないこと」として使用が禁止されているのは、胎児や乳児の甲状腺に有害作用を及ぼすためとされています。
これまでヨウ素を含んだうがい薬で健康効果を実感したことがある人は、用法用量を守ってそのままお使いいただければいいですが、これから新たにうがい薬を購入しようとする人は、上記の利便性や副作用などに注意が必要です。
のどスプレーとアズレン、CPC
のどスプレーは口を開けて、ボタンを押して炎症患部に噴射するだけなので場所を選ばず、水に薄める必要もありませんが、一つだけ注意が必要です。
目が行き届かないのどへ噴射するので、最初は力加減がわかりません
力加減が弱ければ炎症患部に届かないし、ボタンを勢いよく押すと「オエッ」とえずくかもしれませんが、すぐに慣れます。
のどの炎症を鎮める有効成分としてアズレン(アズレンスルホン酸ナトリウム水和物)がよく配合されています。アズレンはのどの炎症を鎮めて、傷ついたのど粘膜を修復しますが、殺菌作用はありません。
アズレンの作用機序は、「白血球の遊走阻害」と「ヒスタミンの遊離抑制」による抗炎症作用を示すとありますが、簡単にいえば免疫細胞が関わる発熱やむくみの炎症反応を抑制することで、炎症組織に直接作用すると考えられています。
また、解熱鎮痛剤はPG(プロスタグランジン)の合成を抑制することで抗炎症作用を示しますが、一方で胃腸障害などの副作用が現れる場合があります。アズレンはPGの合成を抑制しないので副作用が少なく、のど飴やトローチなど多くの製品にも配合されています。
CPC(セチルピリジニウム塩化物水和物)は、レンサ球菌や黄色ブドウ球菌など細菌に殺菌作用を示しますが、ウイルスには効果がなく、ヨウ素の殺菌作用に比べれば穏やかで副作用も多くありません。CPCはのど飴やトローチだけでなく歯磨き粉にも使われています。
浅田飴AZのどスプレーSの成分その他詳細情報
浅田飴AZのどスプレーS 1070円(参考価格)
成分
1ml中、アズレンスルホン酸ナトリウム0.2mg
用法用量
・1日数回、適量を患部に噴射塗布してください。
・のどや口内の塗布のみに使用してください。
・ノズルを患部に向けて、「あーっ」と声を出しながら噴射してください。息を吸いながら使用すると、液が気管や肺に入ることがあります。
・万一誤って目に入ってしまった場合は、すぐに水やぬるま湯で洗い流して、眼科の診療を受けてください。
効能効果
のどの炎症によるのど荒れ、痛み、腫れ、不快感、声がれ、口内炎
保管及び取り扱い上の注意
・使用期限を過ぎた製品は使用しないでください。
・添加物にエタノールが入っているため、火気に近づけないでください。
・本剤使用後の一定時間は、呼気中に酒気帯び運転と判定される濃度以上のアルコール濃度が検出される可能性がありますので、運転中の使用はお控えください。
相談すること
・口内にひどいただれのある人は使用前にご相談ください。
・5日程度使用しても症状がよくならない場合は、医師や薬剤師にご相談ください。
その他不明な点は薬剤師や登録販売者にご相談ください。
ストナのどスプレーの成分他詳細情報
ストナのどスプレー
成分
100ml中、
・アズレンスルホン酸ナトリウム20mg
抗炎症作用によりのどの痛みや腫れを抑えます。
・セチルピリジニウム塩化物水和物300mg
患部を殺菌します。
用法用量
・1日数回、適量を患部に噴射塗布します。
・のどの炎症患部に噴射口を向けて、軽く息をはきながら1回4噴射程度、1日5回20噴射程度を目安として使用してください。
・万一、目に入った場合はすぐに水やぬるま湯で洗い、眼科の診療を受けてください。
効能効果
のどの炎症によるのどの痛み、腫れ、荒れ、不快感、声がれ、口内炎
保管及び取り扱い上の注意
・添加物としてエタノールが入っているため、火気に近づけないでください。
・使用期限がすぎた製品は使用しないでください。
・本剤使用後の一定時間は、呼気中に酒気帯び運転と判定される濃度以上のアルコール濃度が検出される可能性がありますので、運転中の使用はお控えください。
してはいけないこと
・長期連用
相談すること
・口内にひどいただれがある人は使用前にご相談ください。
・5日程度使用しても症状がよくならない場合は使用を中止して、医師や薬剤師にご相談ください。
その他ご不明な点は薬剤師や登録販売者にご相談ください。
のどスプレーの選び方
のどスプレーの有効成分は3つとすでに説明しましたが、含有量についても私が調べたかぎり同じものが多いようです。
・アズレンスルホン酸ナトリウム1ml中0.2mg、100ml中20mg
・セチルピリジニウム塩化物水和物100ml中300mg
有効成分と含有量が同じなら、次は「使いやすさ」です。うがい薬の場合はキャップのあるなしが目安になりますが、のどスプレーの場合はノズルの長さ、噴出の強さまで記載されていないので使ってみなければわかりません。
もしあなたの選んだ製品がのどの炎症に効果はあっても使いづらい場合は、有効成分はどこのメーカーも同じなので、別のメーカーの製品を選びましょう。
のどの炎症は、細胞やウイルスがのどの粘膜に付着することで起こります。のどの粘膜に付着させないためには次の2つの「ルール作り」が必要です。
・家に帰ったとき、夜寝る前、朝起きたときなど「ルール」を決めてうがいをすることでのどの粘膜は潤い、免疫機能が働きやすくなります。
・家に帰ったとき、外出先から戻ったときなど「ルール」を決めて手洗いをすることで、手に付いた細胞やウイルスを洗い流すことができます。
新型コロナの流行時に「飛沫感染」が話題になりましたが、飛沫感染は人から人へ感染するよりも、人からドアノブなどの「モノ」に付着して感染する「接触感染」のほうが多いようです。
飲食店でスタッフが掃除をするときにテーブルだけでなく椅子やソファーまでアルコール消毒をしていたのは、そこに付着した病原体を除菌殺菌するためです。
病原体は目には見えません。だからこそ、ルールを作って感染予防を習慣にしましょう。