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風邪の後の乾いた咳や気管支炎の咳に効く漢方薬:麦門冬湯の解説


風邪の咳と気管支炎の咳の違い

風邪やインフルエンザ、新型コロナもウイルス感染による症状ですが、現在流行しているマイコプラズマ肺炎は細菌による感染です。

ウイルスも細菌感染も症状だけでは見分けがつかないので病院での「検査」が必要になりますが、検査にはお金がかかります。病院は強制はできないので、検査を断る患者には「風邪」と診断して一般的な風邪薬を処方します。

風邪の正式な診断名は「急性上気道炎」で、鼻やのどの「上気道」にウイルスが感染すると炎症を起こして発症する病気です。上気道があれば「下気道」があり、鼻からのど仏あたりまでが上気道、のど仏から肺までが下気道と呼ばれます。

空気中には酸素だけでなく花粉やほこり、ウイルスや細菌など多くの物質が含んでいて、私たちはそれを取り入れて生活しています。

酸素以外の異物は身体の「免疫機能」によって排除されますが、冬になって空気が乾燥すると鼻やのどの粘膜が乾燥して免疫機能が弱まると感染しやすくなります。

最初は鼻やのどの粘膜の炎症から始まり、感染力が強いとさらにのどの下の下気道にまで感染が広がっていきます。

呼吸は炎症が肺に近づくほど苦しくなります


のどの下の気道は「気管」と呼ばれ、途中から気管が枝分かれして「気管支」となり肺へ続きます。

気管支の直径は0.5mmととても細いので、気管支が炎症すると腫れるなどして空気が肺に送りにくくなり呼吸が苦しくなります。

炎症は少しの刺激で過敏に反応する特徴があります


のども気管支も炎症すると咳が出ますが、気管支は細く枝分かれする数も多いので、激しく咳が出る場合は気管支の炎症が考えられます。


急性気管支炎と慢性気管支炎

急性気管支炎は風邪やインフルエンザなどウイルス感染の延長で、鼻やのどの炎症がのどの下の気管や気管支粘膜まで炎症が広がって発症します。熱が下がった後の激しい咳が特徴です。

慢性気管支炎は気管支粘膜の炎症が慢性的に続く状態で、咳が出たり出なかったりが数ヶ月続きます。急性気管支炎の原因の多くは「ウイルス感染」ですが、慢性気管支炎はそれ以外の原因が考えられ、ほとんどは喫煙や大気汚染など長期的な有害物質の吸入とされています。

急性慢性にかかわらず、激しい咳が続く場合は原因を特定するために病院での検査が推奨されます。検査をすることで原因が特定して、適切な薬が処方されるので激しい咳が速く鎮まります。

ただし仕事が立て込んでいたり、夜中に発症したなど病院にいけない場合は対症療法として次の漢方薬がお勧めできます。

麦門冬湯の成分その他詳細情報



麦門冬湯エキス錠 2024円(参考価格)
成分
15歳以上1日服用量18錠(1錠200mg)中、麦門冬湯エキス1/2量2000mgを以下の成分より抽出。

・麦門冬5.0g
・半夏2.5g
・コウベイ2.5g
・タイソウ1.5g
・甘草1.0g
・人参1.0g

用法用量
次の量を1日3回、食前または食間に水またはお湯で服用してください。

・15歳以上1回6錠
・7歳以上15歳未満1回4錠
・5歳以上7歳未満1回3錠

効能効果
体力中等度以下で痰が切れにくく、ときに強く咳き込み、または咽頭の乾燥感がある人の次の症状:空咳、気管支炎、気管支ぜんそく、咽頭炎、しわがれ声

相談すること
次の人は服用前に相談してください
・水様性の痰の多い人
・むくみがある人や高血圧、心臓病、腎臓病の診断を受けた人

その他ご不明な点は医師や薬剤師にご相談ください。


麦門冬湯の解説

1.麦門冬湯が鎮める3つの咳
咳といっても多くの種類があります。
・乾いた咳と湿った咳
・痰が出る咳と出ない咳
・激しい咳とときどき出る咳、など

麦門冬湯は身体を潤して咳を鎮める漢方薬です


つまり風邪の引き始めの湿った咳や、透明な水っぽい痰が出る咳に効果はありません。

麦門冬はのどだけでなくその下の気管や気管支まで潤すので、気管支炎による咳にも効果があります。また、麦門冬湯で有名な鎮咳作用がこちらです。

風邪を引いた後の「残った咳」を緩和してくれる


風邪を引いた後の咳は鼻水などの余分な水分が排出された後なので、乾いた咳が多く出ます。乾いたのどに麦門冬湯を流し込めば、のどや気管支など身体全体が潤って効果が現れやすくなります。したがって、麦門冬湯が鎮める咳は次の3つになります。

・風邪を引いた後の乾いた咳
・痰がからんだ、痰が切れにくい咳
・気管支炎による激しい咳

2.麦門冬湯の成分の解説
・麦門冬:麦門冬は麦門冬湯の主要な生薬で、潤す作用により乾燥した気の上逆を潤して引き下げます。言い換えると、こみ上げてくる咳を含む気道を潤して咳を鎮める効果があります。

・半夏:気の上衝を引き下げます。上衝とは下にある気が頭に上ることで、本来の気は上から下に流れていきますが、病気によって気が滞ると下から上に流れ、頭痛やめまいが起こりやすくなります。また、半夏は乾燥してのどにからみついた痰を排出する去痰作用があります。

・人参:麦門冬を補助して乾燥を潤すだけでなく、半夏の乾かす作用も補助します。また、人参は疲労回復の効果があります。

・タイソウ:胸部を潤して気の上逆を緩和します。また、タイソウは胃腸を整える作用があります。

・コウベイ:弱った胃を潤しながら消耗状態を補います。

・甘草:気道の緊張した筋肉を緩和したり、気道の炎症を抑えます。また、甘草は胃腸を整える作用があります。

このように麦門冬湯は気の流れを上から下に修正して、のどだけでなく気管支を含めた身体全体を潤すことで乾いた咳を緩和します。

3.麦門冬湯は眠くならない
メジコンは乾いた咳にも湿った咳にも効果的ですが、それは脳の延髄にある「咳中枢」に直接作用して咳を鎮めるからです。しかし副作用として眠くなることがあります。

またメジコンの効能効果は「咳」のみで咳を鎮める効果は優秀ですが、痰のからんだ咳に服用するときは判断が難しいことがあります。

麦門冬湯は乾いた咳のみに有効で眠くならない優秀な咳止め薬ですが、湿った咳や水っぽい痰には効果がありません。

咳止めは薬の成分を理解した使い分けが重要になります


たとえば夜に激しい咳が出たら眠くなってもいいメジコンを、日中の咳は反対に眠くならない麦門冬湯など、生活に合わせた使い分けが必要です。

しかし激しい咳が何日も続くようなら、本人だけでなく周囲の集中力も低下して作業効率が下がるので、時間を作って病院で検査をしてもらいましょう。検査結果に合った鎮咳薬を処方してもらえます。

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