のどの痛みでかぜ薬がNGな理由:トラネキサム酸製品の解説
のどが痛くなる原因
コロナのピークはデータ上では過ぎたといっても、発熱外来は現在も一日数十人がひっきりなしに受診している状況を鑑みると、まだまだ油断はできません。
コロナは風邪と比較されることが多いですが、コロナの症状は風邪とよく似た「発熱」「咳」「のどの痛み」の3つの症状が現れます。症状に個人差はありますが、私が調べた範囲で印象に残ったのは次の症状です。
コロナに罹患してから3日程度、のどが痛くてつばも飲み込めない
ここまでの症状だとさすがに受診必須ですが、風邪でものどが痛くなるときがあります。では、なぜのどが痛くなるのでしょうか。
のどの痛みは炎症によって腫れて痛みが出てしまうから
つまり、のどが痛ければ炎症している可能性が高く、のどの痛みを抑えたければ炎症を抑える必要があります。では、なぜのどは炎症するのでしょうか。
のどの炎症の原因は「感染」「乾燥」「酷使」の3つあります
感染はウイルスや細菌が免疫細胞より勝ってしまうと、のどの細胞が破壊され炎症を起こします。
乾燥は空気の乾燥がのどの粘膜を乾燥させて免疫機能を低下させます。冬は空気が乾燥しやすく、加湿器で部屋の湿度を上げるのは「のどの乾燥」を防ぎ、のどを潤すためです。
酷使はスポーツ観戦で大声を出したり数時間熱弁をふるうなど、のどに負担がかかって起こる炎症です。声がかすれるなどの症状がありますが、ウイルス感染とは違い発熱や咳はあまり見られないので、のどを休めれば回復します。
のどの炎症で問題なのが「感染」と「乾燥」です。ウイルスや細菌による感染は通常、空気の乾燥する「冬」に流行します。
空気の乾燥によるのどの乾燥の他にも、体温が下がることで身体全体の代謝や免疫機能が低下すること、ウイルスは低温低湿度の環境下で増殖することなど、冬はのどが炎症する条件がそろっています。
コロナ禍のテレビでは感染予防対策として「うがい」「手洗い」「マスク」の3つを繰り返し推奨してきましたが、それには科学的根拠があります。
うがいは乾燥したのどを潤して免疫力を高め、のどの粘膜に付着した異物を洗い流すことで「飛沫感染」を防ぎます。
手洗いは咳やくしゃみでウイルスを含んだ飛沫がドアノブなどに付着して、それに接触すると感染する「接触感染」を手洗いによって防ぎます。風邪の多くは空気中の飛沫感染よりも、飛沫によって付着したものに接触する接触感染のほうが多いといわれています。入り口にある「アルコール消毒」は接触感染を防ぐためのものです。
マスクはのどの保湿に効果があります。マスクをすることで自分の息がマスク内にこもり、口周りの湿度が高くなります。その湿った空気を吸うことでのどの乾燥を防ぎ、加湿器と同じ役割を果たします。
また、マスクは相手の飛沫を防ぐことはできませんが、マスクが防波堤となり自分の飛沫を減少させることはできるので、接触感染の減少にもつながります。
コロナが感染症区分で2類から5類になりマスクの装着は自己判断となりましたが、感染症予防で気をつけることを挙げていきます。
・人ごみの多いところは避ける。咳をする人とは距離を置く。止むを得ない場合はマスクをしてのどを保湿して感染予防をする。
・家に帰ったら手洗い、うがいを徹底して毎日行う習慣をつける。
手洗いうがい、マスクによるのどの保湿。感染予防はこの3つしかありませんが、この3つが重要です。
のどの痛みが起こるメカニズム
3つの感染予防を行い気をつけていても、ストレスや睡眠不足など「その他の要因」で感染する場合もあります。では、実際にウイルスや細菌がどのようにのどの粘膜を炎症させるのか。その過程を見ていきます。
1.ウイルスや細菌がのどの粘膜に付着して感染すると、のどの細胞が破壊される。
2.のどの細胞が破壊されると「プラスミン」という酵素が発生する。
3.患部でプラスミンが増殖すると、炎症や痛みを引き起こす物質を誘発して血管が拡張する。
4.腫れ、痛み、発赤、熱感の「炎症反応」が患部で起こる。
感染予防でのどに付着した異物を排出しても、すべてを排出できるとはかぎりません。長期間、または大量に異物を吸い込めば感染して患部が炎症を起こします。
のどの炎症が発生する原因はプラスミンで、トラネキサム酸はプラスミンの発生を抑制することで炎症を鎮めます
市販薬にはのどの炎症に特化したトラネキサム酸を配合した製品がありますが、その中から2つを選んで解説します。
ペラックT錠の成分他詳細情報
ペラックT錠 1320円(参考価格)
成分
15歳以上1日服用量(6錠)中に次の成分を含有しています。
・トラネキサム酸750mg
炎症やアレルギー症状が起こったとき、体内で異常増加した酵素プラスミンを抑え、口内やのどの痛み、腫れなどの症状を改善します。
・カンゾウ乾燥エキス198mg(原生薬として990mg)
生薬の甘草のエキスで主成分のグリチルリチン酸は炎症やアレルギーを抑える作用があります。
・ビタミンB6(ピリドキシン塩酸塩):50mg
・ビタミンB2(リボフラビン):12mg
・ビタミンC(L-アスコルビン酸ナトリウム):500mg
ビタミン類は皮膚や粘膜の機能を正常に働かせる作用があります。ビタミンB2により尿が黄色くなることがあります。
用法用量
次の量を1日3回、水またはお湯で服用してください。食前、食後のいずれの服用でもかまいません。
・15歳以上1回2錠
・7歳以上15歳未満1回1錠
効能効果
咽頭炎、扁桃炎、口内炎
してはいけないこと
1.本剤の他に、甘草またはその主成分のグリチルリチン酸を含有する内服薬を併用すると、次の副作用が現れる場合があります。
・むくみ
・血圧上昇
・筋疾患(ミオパチー)
2.本剤の他にトラネキサム酸を含有するかぜ薬、鼻炎用内服薬、解熱鎮痛剤、鎮咳去痰薬を併用すると副作用が現れる場合があります。
3.長期連用しないでください。
相談すること
次の人は服用前に相談してください。
・むくみの症状がある人
・高血圧、心臓病、腎臓病の診断を受けた人
・血栓のある人、血栓を起こすおそれのある人
・5日程度服用しても症状がよくならない人
その他ご不明な点は薬剤師や登録販売者にご相談ください。
のどぬーる鎮痛カプセルの成分他詳細情報
のどぬーる鎮痛カプセル 1100円(参考価格)
成分
15歳以上1日量(9カプセル)中、
・イブプロフェン450mg:解熱鎮痛成分
・トラネキサム酸420mg:抗炎症成分
・乾燥水酸化アルミニウムゲル208.5mg:胃粘膜保護成分
用法用量
次の量を1日3回、なるべく空腹はさけて水またはお湯で服用してください。服用間隔は4時間以上あけてください。
・15歳以上1回3カプセル
効能効果
咽頭痛、頭痛、歯痛、関節痛、腰痛、筋肉痛、肩こり痛、月経痛、悪寒や発熱時の解熱など
してはいけないこと
1.次の人は服用しないでください。
・15歳未満の小児
・出産予定日12週以内の妊婦
2.本剤を服用している間は次の医薬品を服用しないでください。:他の解熱鎮痛薬、かぜ薬、鎮静薬
3.服用前後は飲酒しないでください。
4.長期連用しないでください。
相談すること
1.次の診断を受けた人は服用前に相談してください。
心臓病、腎臓病、肝臓病、全身性エリテマトーデス、血栓のある人、など。
2.次の病気にかかったことがある人は服用前に相談してください。:胃・十二指腸潰瘍、潰瘍性大腸炎、クローン病
3.5回程度服用しても症状がよくならない場合は服用を中止して相談してください。
その他ご不明な点はご相談ください。
のどの痛みでかぜ薬がNGな理由
かぜ薬には「のどの痛みによく効く」と宣伝しているものがありますが、本当にそうでしょうか。
かぜ薬とは「総合感冒薬」ともいわれ、かぜの4つの症状「発熱」「咳」「くしゃみ」「のどの痛み」を和らげる有効成分がすべて入っている、とても便利な薬ですが問題が2つあります。
1.かぜ薬は症状がない有効成分も入っているので、副作用が起きる場合があります
のどの炎症による違和感が強ければ、2つの抗炎症成分が入った「ペラックT錠」、のどの痛みが強ければ抗炎症成分と鎮痛成分の入った「のどぬーる鎮痛カプセル」が最善の選択です。
咳やくしゃみの症状がないのにかぜ薬を服用する必要はありません。また、咳やくしゃみの有効成分の多くは「眠くなる」副作用があるので注意が必要です。
2.かぜ薬は有効成分単体の含有量が少ないこと
かぜ薬にもトラネキサム酸が入っているものもあるそうですが、含有量が違います。
・ペラックT錠は市販薬最大の750mg
・のどぬーる鎮痛カプセルは420mg
かぜ薬は多くの有効成分を含有する必要があるため、一つの有効成分の含有量は少なくなります。含有量を多くすれば錠剤が大きく飲みづらくなり、患者が飲まなくなります。
含有量が少なければ効き目も少なくなり、それどころか必要のない有効成分のせいで副作用が出ることがあるので、薬選びは注意が必要です。
のどの痛みにかぎらず咳が強く出る人は「咳止め」を、くしゃみが止まらない人は「鼻炎薬」を、総合的に効くものよりも症状に絞った薬を選びましょう。