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激しい咳と気管支喘息によく効く漢方薬:麻杏甘石湯の解説


漢方が考える健康な状態を維持するメカニズム

季節の変わり目である3月や11月は、暖かい日と寒い日が交互に繰り返すために、自律神経が体温調整をコントロールできずに心身のバランスが乱れることがあります。

11月は加えて空気の乾燥が始まるので、身体の水分を奪われて身体の表面の肌や口、のどの粘膜が乾燥しがちになります。

私も最近、朝起きると夏にはなかった「口の中の乾燥」が気になるようになりました。口の中が乾燥すると細菌を増殖させるので虫歯になりやすく、口が渇けばのども渇くのでウイルスや細菌に感染しやすく、炎症を起こして風邪をひきやすくなります。

ウイルスや細菌による感染症のメカニズムはこれまでも解説してきましたが、今回は違った視点で「漢方が考える健康な身体のメカニズム」を解説します。

食べ物は消化吸収されて肝臓で利用可能なエネルギーに変換されて肺に運ばれると、酸素と結びついて「気」が生まれる、というのが漢方の考えです。

気は身体の隅々を巡り循環することで身体の各機能を動かして健康を保ちます。

身体が健康な状態では、身体の外へ潤いを届けるために身体の外へ向かう気と、内臓などを潤して栄養を届けるために身体の内へ戻ってくる気に分かれます。

この外と内へ戻る二つの気は身体の表面の「排気」の働きによって、身体のそのときの状態に合わせて調整されます。

漢方が考える鼻水鼻づまりが生じるメカニズム

ところが、気温の寒暖差など身体の外から極端な冷えや暑さによって生じた「邪気」が身体の内側へ侵入しようと試みて、気が邪気を追い払えずに邪気がそこへ留まってしまうと、身体の健康を維持してきた気の正常な循環が乱れてしまいます。

気の循環が乱れると、それに合わせて動いていた血や水(漢方では気血水が相互作用でバランスよく循環しています)の流れも乱れるので、身体の所々に流れの悪い部分ができてしまいます。

血の滞りは肩こりや肩こりが原因の頭痛であったり、あるいはだるさや倦怠感など全身症状が現れることもあります。また、水の滞りは足元ではむくみになったり、上部では表層にたまった水があふれて鼻水や鼻づまりなど風邪の症状が出てくることもあります。


漢方が考える発熱のメカニズム

気の循環が乱れ、同時に血水の循環も乱れると身体の健康はどんどん崩れていってしまうので、身体の外から侵入しようとする邪気を追い払うために、身体の内側から大量の気がやってきます。

大量の気は邪気との戦いを始めたものの、追い払うことができずにその場に留まり渋滞が起きると、大量の気が一ヶ所に長時間停滞することで熱が生じます。


漢方が考える咳が生じるメカニズム

人は身体が健康な状態のとき、呼吸をして肺に運ばれた酸素は「気」に変わり身体の隅々まで循環しますが、身体の外から邪気が侵入を試みて気の循環が乱れると、身体の外へ向けて気が出ていかず、新たに入ってきた酸素は身体の内側に降りていくこともできない上に、邪気を追い払うために大量の気が上向きに上昇するため気の流れが逆流して咳が止まらなくなります。

加えて身体の表面にある気を調整する排気が熱によって乱されてしまうと、これまで循環していた気が内側へ流れにくくなり、それも関係して気の逆流が起きてしまって咳が出る原因となります。

このように気の循環が乱れると血水の循環も乱れ、それが原因で熱が生じて発症する風邪や咳を「気の流れ」を強力に動かしながら身体の表面の熱を冷ますことで激しい咳を緩和する漢方薬に「麻杏甘石湯」があります。


麻杏甘石湯の成分その他詳細情報


麻杏甘石湯エキス錠
成分
15歳以上1日服用量18錠(1錠200mg)中、次の成分を含んでいます。

麻杏甘石湯水製エキス700mg中、
・麻黄2.0g:鎮咳、去痰、気管支拡張作用
・杏仁2.0g:鎮咳、去痰作用
・セッコウ5.0g:消炎、利尿作用
・甘草1.0g:抗炎症、胃腸調整作用

用法用量
次の量を1日3回食間に、水または白湯にて服用してください。
・15歳以上1回6錠
・7歳以上15歳未満1回4錠
・5歳以上7歳未満1回3錠

効能効果
体力中等度以上で咳が出て、ときにのどが渇くものの次の症状がある人:咳、小児喘息、気管支喘息、気管支炎、感冒(かぜ)、痔の痛み

相談すること
●次の人は服用前に医師や薬剤師にご相談ください
・発汗傾向の著しい人
・むくみや排尿困難の症状がある人
・高血圧、心臓病、腎臓病、甲状腺機能障害の診断を受けた人

また、1ヶ月くらい服用しても症状が改善しない、長期連用、その他ご不明な点は医師や薬剤師にご相談ください。


麻杏甘石湯の解説

麻杏甘石湯は4種類の生薬の相互作用で気の流れを強力に動かしながら、身体の表層の熱を冷まして引き降ろして、余分な水分を排除して咳を鎮めます。

1.麻黄は身体の内側から外側へと気を強力に発散させます。

2.杏仁は麻黄の強力な作用を利用して気を下向きに引き降ろすことで、気の流れが身体の内側から外側へ、外側から内側へと気の巡りを整えます。

3.セッコウは身体の表層の熱を冷やしながら、杏仁とともに気を下向きに引き降ろし、余分な水分も引き降ろして排除します。

4.甘草は各生薬の調整をして気の働きを支えながら、熱によって乾燥した部位に潤いを届けます。

このように麻杏甘石湯は邪気による気の乱れを強力に整えて、それによって生じた熱を取り除くことで激しい咳や気管支喘息を改善します。

激しい咳や気管支喘息は、空気の乾燥などにより気管や気管支がウイルスや細菌に感染、炎症を起こして空気の通り道が狭くなる、過敏に反応し気道が収縮することで咳が出る病気です。

かぜ薬によく配合される「エフェドリン」は麻黄から抽出された成分で、汗をかき体温を上げて免疫力を向上させる働きと同時に「気管支を拡張」させることで呼吸を楽にします。

現在、メチルエフェドリンを始め多くのエフェドリン製剤は「濫用のおそれのある医薬品」に指定されているので購入しづらくなっていますが、麻黄製剤は指定をされていないものの、服用には注意が必要です。

麻黄は気を強力に流すため、体力がなく気が不足している人や疲れやすい人が服用すると、少ない気が消耗されてしまうので急激な疲労感を感じるなどの副作用があります。

当然ながら麻杏甘石湯とエフェドリンが配合されたかぜ薬などの併用は厳禁です。

話は変わりますが、冒頭で食べ物が消化吸収されて肝臓で「エネルギー」に変換され、肺で酸素と結びつき「気」が生まれると解説しましたが、私の最近の朝食は100円のカットサラダのみです。

前日の食事は夕方までには済ませるので16時間以上経っての食事ですが、最近は昼前に空腹を感じることが多々あります。空腹感はエネルギー不足の身体からのサインです。

エネルギー不足のサインが点灯しながらも、それでも身体中のエネルギーをかき集めながら何とか今日もこの記事を最後まで完成させることができました。こうした積み重ねの一つひとつが私の自信となり、自信は食べ物とは別のエネルギーとなってやる気、元気の気の源となります。

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