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小倉名画座の模様替え
2024年4月の終わり。
名画座が模様替えをした。
名画座には提灯がついている。
温かい暖色の照明が小倉の路地裏を照らし、道行く人たちを歓迎している。
日焼けし色褪せた提灯が名画座の佇まいと相まり、よりレトロな空気を放っている。
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いつの頃からだったか、丸谷さんが提灯の色について話すようになった。
「提灯の色を橙色から、青色に変えようと思っている。名画座のある通りをサイバーパンク風にしたい。」
「あー面白いんじゃないですかね。」
小倉駅周辺に漂う空気、景観をブレードランナーの世界観だなと思っている僕は、その案に面白さを感じ即答した。
それから僅かな期間を経て、名画座の模様替えが行われた。
中国のECサイトから、ゆらめく青色のLEDが大量に送られてきていた。
早速、電球の取り換えを行う。
丸谷さんと犬童さんの連携でさくさくと交換が行わる。
僕は取り換えのフォローをしつつ、写真を撮る。
犬童さんが大活躍した。
テープライトも送られてきていたが、こちらはうんともすんとも言わず、初期不良だった。
テープライトは後日また取り付けたが、微妙な色合いで没となった。
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電球の交換が終わった。
青色というより赤紫に近い色合いの提灯が灯る。
ゆらゆらとゆらめく提灯の灯りを眺める3人。
少しだけの感動のあと、丸谷さんが口を開いた。
「微妙だったかも。」
「これはこれで、いいんじゃないですか。」
的な返事をしたと思う。
かくして小倉名画座の模様替えが完了した。
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夜になった。
寒々しくゆらめく青色の灯りが、どこか不気味さを感じさせた。
サイバーパンクというよりは、おどろおどろしい。
お化け屋敷と言われれば、信じてもおかしくはない。
当日は小倉爆笑劇場の開催日。
続々と名画座に集合する芸人たち。
特段感想もなかったとは思うが、あえて言うなら少し不気味がっていた。
来場されたお客さんはどう思っていたのだろう。
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確か翌日だったと記憶している。
提灯の灯りが元の橙色に戻っていた。
やはりどこか違ったのだろう。
小倉名画座、春の終わりの一幕である。