「夏の果て」 作品解説
8/23〜8/29まで出展中の『真夜中すぎの展覧会4』展示作品、「夏の果て」の作品解説です。
「夏の果て」とは
季語。晩夏。夏の終わり。
夏の終わりとともに去り行く(帰っていく、又は還っていく)ものを惜しむ。
「夏の果て」は16点から成る連作です。
Twitterの制作過程の投稿などでお気づきの方もいたかと思いますが、額を取り外して中の線画を並べると、16点全てが繋がった一つの作品になっています。
左下から右上に向かう線の流れと額のグラデーションは、燃えるような夏の終わりとともに秋に移り変わっていく様と、お盆が終わり、現世に帰ってきた魂が再び帰っていく(還っていく)様を表現しています。
線画は、燃えるような暑い夏、迎え火と送り火、火葬の炎、そして魂が還っていく様をイメージして描いています。
作品全体に散らしたインクは、火の粉や灰が舞っているように、或いは魂の輝きをイメージして。
線の表現としては、左下に塗り潰しを多用、また線の密度を高くし、右上に向かうにつれて白く抜けていくように、また、線の密度も抑えるように描いています。
額の塗装について
今回の額塗装は「夏の終わり、秋の始まり」また、「夜の終わり、朝の始まり」をイメージして制作しました。
テーマに引き摺られて重たい印象にならないよう、メインに鮮やかな青色を置き、夏の夜空にも青空にも朝焼けにも見える色合いに、その中を火の粉や灰が舞い、光が反射してキラキラ輝いているように、青空の中に魂が溶けていくようなイメージを意識しました。
また、線画だけでなく、額にも繋がりを持たせたかったので、額も左下から右上に向かって、紺色から青色、水色から白色、そして薄らと黄色に色付いていくグラデーションになっています。
画面が繋がった連作を描く上での拘り
16点で一つの作品であると同時に、それぞれの作品が独立した1点の作品になるよう、1点毎に印象や表情が異なる作品になるよう、細かな描き分けをしています。
上記で記載したように、16点で一つの作品として見ると、左下から右上に向かう大きな線の流れが印象的な作品になります。
ですが、ミニ原画一点毎に見ると、カーブを描くように流れるもの(画像1)、左上から右下へ、または右下から左上へ向かう線の流れを持ったもの(画像2)、集結点を多く取り入れ、画面内全体の密度を高くしたもの(画像3)、また、塗り潰しを一切使用せず、且つ色を2色使用したもの(画像4)など、1点ずつ表情の違う作品になってます。
その他にも、上下の流れ(画像5)や、小さな曲線の集合体を多く使用したもの(画像6)など。
ぜひ、線の流れや密度、疎密のバランスや構図の違いなど、1点毎の表情の違いを楽しんでいただきたい作品です。
連作と銘打っている以上、16点のうちの1点でも欠けた(お迎えされた)場合、作品として不完全なのでは?
最初に述べた
『夏の終わり。
夏の終わりとともに去り行く(帰っていく、又は還っていく)ものを惜しむ。』
というコンセプトには、一つずつ作品がお迎えされて(無くなって)いくことで、夏が終わる(消えていく、または還っていく)という意味も込められています。
「夏の果て」は、作品が揃っていても、お客様に作品をお迎えされて空白が生まれても、一つの作品として成立する作品となっています。
「迎え火」「送り火」
今回『真夜中すぎの展覧会』では、「夏の果て」とともに「迎え火」「送り火」という対になる作品を展示しております。
「迎え火」「送り火」とは、名前の通り、お盆に先祖の霊を迎え入れる時、そして見送る時に焚く火のことです。
この2点の作品は、「夏の果て」を読み解く上での導入のような役割を持たせています。
ここまで、私はこういうコンセプトで制作しました、というお話をさせていただきましたが、絵を見る時、決して、作品の背景や作者の想いを読み取らなければ...と硬く考える必要はありません。
作品のタイトルやキャプションをヒントに、受け手の方一人一人が様々な解釈を見出せるのが抽象画の醍醐味の一つであり、面白いところだと思います。
どうか、作品を見て、触れて、貴方の解釈、創造力を楽しんでいただきたいです。そして少しでも、貴方の感情を動かすことができれば幸いです。
最後までご高覧いただきありがとうございました。
2020.08.26
サポートしていただき誠にありがとうございます。 応援のお気持ちを糧に、より一層の作品のクオリティ向上に努めて参ります。