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【誇れ】2024.11.02


(※文章中の選手名は全て敬称略で統一しています。
また、文章中の下線部をクリックするとゴールシーンなどの動画に飛ぶことが可能です。 ぜひその動画を見ながらお楽しみください。)

王座奪還か、初戴冠か 


マッシモ・フィッカデンティ監督(当時)のもとで、名古屋グランパスがルヴァンカップを初めて制覇してから3年が経った、2024年11月2日。

3年前と同じ景色を、わたしは見に来ていた。

JリーグYBCルヴァンカップ決勝、名古屋グランパスvsアルビレックス新潟。
場所は東京・国立競技場。
奇しくも昨年の『鯱の大祭典』と同じ場所、同じ組み合わせでの試合。

決戦の相手となる新潟は、クラブ史上初となるタイトル獲得へ向けてあと1勝。
準決勝では川崎フロンターレを2戦合計6-1で撃破し、この国立へとやってきた。
クラブ史上初の決勝とあって、このタイトルにかける熱量も半端ではない。
この歴史的な瞬間のために、この日の新潟~東京間の新幹線は臨時で増発されたほどだった。

一方の名古屋は準決勝で、横浜F・マリノスを2戦合計4-3で下して決勝へ。
3年ぶりの王座奪還を目指すと同時に、今季で退団する守護神ミッチェル・ランゲラックの名古屋ラストシーズンに華を添えるべく、『ミッチとともにタイトルを』を合言葉に、ここまでやってきた。

名古屋ゴール裏に掲げられた横断幕には『クラブ 選手 ファン 全力で2024に星を』の文字。

両チームにとって絶対に負けられない戦いが、あと少しで始まろうとしていた。

響く声、声、声

当日昼11:00、ワクワクと怖さが入り交じった独特の感覚を持って、友人(3年前、前田直輝の1点目を見逃した彼です)と共に国立競技場に到着したわたしは、3年前を少し思い返していた。

2021.10.30、きっと一生忘れないであろう日付と歓喜の瞬間。

あの時はコロナ禍。
声出しも不可、座席もひと席空けての運用となっていてスタンドには空席が目立っていた。

この時の様子はendoさんのnoteに詳しいので、まだお読みになられていない方はこの機会に是非。

……わたしにとってのルヴァンカップ決勝は、ずっとこの2021年のイメージで止まったままだったからこそ、やがてわたしは圧倒されることになった。

満員の国立に響く新潟、名古屋、両チームサポーターの大声援。
音が壁になってせり出してくるかのごとく、声が、チャントが響いている。

我らが名古屋ゴール裏の声援だって負けていなかったはずだが、特に新潟ゴール裏の迫力にはひっくり返りそうになった。
ずいぶん長いことサポーターをやってきて、音がせり出してきているような感覚を覚えたのは初めてだったように思う。

それだけの熱量が、あの日の国立に集まって、ひとつの熱狂を作り出していたのだと思う。

みんなが愛してるのは──!!

到着してからずっと決勝の雰囲気に酔いしれていると、キックオフはあっという間に近づいてきて、両チームの選手紹介がスタート。
基本的にアウェイ参戦がメインのわたしからすれば、ルヴァンカップは両チームホームの特別仕様。
ホーム、豊スタの雰囲気を感じることが出来る最大の機会だ。

上記の動画はまさにあの日、国立で流された名古屋側の選手紹介。
ぜひこの動画を見て、その熱量を感じてみてほしい。

……わたしはあの日以来、これを見ると泣く体質になってしまって、見るたびに涙がこぼれる。

おそらくそういう方はわたしだけではないと思うのだが、特に終盤のプレーオフラウンドからの軌跡がズルい。
グラぽさんの記事にも書かせていただいたとおり、関東での試合が多く、いつもよりしっかりとルヴァンカップに挑むグランパスを応援することが出来たシーズンだったわたしからすると、泣くなと言われる方が無理である。

さらにこれに続いて始まったGLAPとコールアンドレスポンスの迫力にまた感動。
これに続いた選手入場の時点でもう涙腺が決壊しそうだったことをここに記しておく。
我ながら早すぎると思いはするけども。

2-0は危険なスコア

試合開始前に降っていた雨はやんだらしく、曇天模様のなか、鋭く笛の音が響いてキックオフ。
天下分け目の関ヶ原とでも言うべき試合が始まった。

──前半31分、突然のチャンス。
相手のパスミスを名古屋の韋駄天、FW永井謙佑が見逃さずにきっちりと捉えてゴールへ押し込んで名古屋先制、1-0。

さらに10分後の前半41分、今度は名古屋MF椎橋慧也の縦パスがエリア内にいたMF稲垣祥へ届く。
稲垣がヘディングで繋ぐと、これをFW和泉竜司が引き取り、横パスで繋いで再び永井!!
完璧な崩しから決まった永井の2点目で名古屋2-0。

前半はこのいい流れのまま終了。
友人は『良かった先制点見れて……』と3年ぶりのトラウマ回避に安堵し、和泉と永井が長年の推しのわたしは2点目の和泉から永井という流れに歓喜した。

ここで話すと長くなるので多くは語らないけれども、きっとこの日の2点目に感動したのはわたしだけでは無いはずだと思っている。

──そんないい流れだったからこそ、わたしはこの時忘れていた。
2-0は危険なスコアだということを。


ハーフタイムが明けて後半がスタートすると、一転してだんだんと試合が新潟ペースになっていった。
それに呼応するようにして新潟のチャントの迫力も増していく。
これはちょっと怖いぞ……?と思った矢先、新潟のダニーロ・ゴメスの綺麗なクロスに谷口海斗が合わせてゴール、2-1に。

しかしまだリードはこちらにある。
諦めてはいけない。

試合は何度もピンチを迎えつつも、スコアが動くことなく、2-1のまま後半ATに突入。
このまま行けば王座奪還である。

しかし、ここで新潟の選手と途中出場の名古屋MF中山克広の接触が発生。
VARの結果、PKとなり、これを相手FW小見洋太が決めて、まさかの2-2。

試合はこのまま決着がつかず、延長戦へもつれ込んだ。


延長戦

長くサポーターをしてきたが、この日が実は初めての延長戦の観戦経験。
90分で決着がつかないというのはこうも落ち着かない気分になるんだ、とこの時初めて知った。

わたしの心臓はバクバク言っていて収まる気配がない。
寿命が少し縮んでいてもおかしくは無さそうである。

そうして少しのブレイクを挟んで始まった延長戦は、いきなり動くことになる。

延長前半3分、MF山中亮輔がクロスをエリア内へ。
一旦は相手DFにクリアされるものの、最後は中山克広がシュートしてゴール!

名古屋勝ち越し、3-2。

爆発するかのごとく喜ぶ名古屋側サポーターたち。

しかし新潟も前半終了後のブレイクを挟んだ延長後半5分、カウンターから最後は小見洋太が決めて、3-3に追いつく。

なんともう一度スコアは振り出しにもどり、延長戦でも決着はつかないままで、ホイッスルが鳴り響く。
こんな試合は初めて見る。なんて試合なんだ……!

そうしていよいよ分からなくなってきたこの試合の結末は、大会開始以来32年の歴史のなかで、8度目となるPK戦に全てを委ねる形となった。


そして

両チーム5人ずつで行われるPK戦は、いつの間にかまた降ってきたらしい雨のなか、名古屋サポーターが熱く声援を届け続けていた側のゴールで執り行われることとなった。

もうここまで来たら祈るしかない。
緊張して泣きそうになっているのを抑えてピッチへ声援を送る。

名古屋1人目、無事成功。
続いた2人目のキッカーは、今日の試合でも先発し今季で日本へ別れを告げるGKランゲラック。

ルヴァンカップ準々決勝、サンフレッチェ広島戦で、同じくPK戦にもつれ込んだ際にも2人目のキッカーを務め、見事に決めてみせたランゲラック。
その試合後のインタビューで監督が『彼が1番チームでPKが上手い』と答えていて驚いたのも記憶に新しい。

聖地国立、このタイトルのかかった大一番、ミッチとともにタイトルをと掲げてやってきたその舞台で、キッカーを任される我らが守護神の姿は、いつも以上に頼もしく見えた。

そして沸き起こった大迫力のミッチェル・ランゲラックコール。
相変わらず泣きそうになりつつも、その大声援に加勢する。
そして彼の蹴ったボールはしっかりとゴールへ吸い込まれていった。これで名古屋は2本成功。

その後もPKは続いていき、名古屋4-4新潟で迎えた最終局面。
名古屋の5人目は今季、前年のルヴァンカップチャンピオンであるアビスパ福岡から移籍してきたFW山岸祐也。

5人蹴って決着がつけばその時点で終わりとなるPK戦。つまりこの山岸のPKが決まればその瞬間、名古屋グランパス3年ぶりの王座奪還が決まる大事な局面である。

山岸へ大声援が送られるなか、祈るように手を組んで、目を離さないようにピッチを見つめる。

緊張感が最高潮に達したその時、山岸の蹴ったボールがゴールネットを揺らしたのが見えた。

優勝だ!!!

一目散に山岸の元へ駆け出す選手たち、スタッフ、歓喜の渦となる名古屋側スタンド。
わたしは安堵して泣いた。

3年ぶり2度目の王座奪還。
5つ目の星がユニフォームにつくことになったその瞬間は、3年前と同じ景色でも、3年前とは全く違う歓喜の輪が、国立競技場に広がっていた。

JリーグYBCルヴァンカップ 決勝
名古屋グランパスvsアルビレックス新潟
3-3(PK 5-4)


……もう2週間以上前のことなのに、まだまだ全然余韻が抜けないままだ。
試合中はとにかくハラハラしっぱなしだったが、
ルヴァンカップの歴史に残る好ゲームとして、きっとこれからもこの決勝が語り継がれていったらいいなあと思う次第である。

以上、2024ルヴァンカップ決勝レポでした。
お粗末さまでした。

優勝決定後のゴール裏

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