かつて自分が働いた「社員が掴み合いのA社」と「社員が仲良しのB社」のその後
自分がかつて働いたA社は、東京の下町の問屋街の雑居ビルにある学習塾でした。教材は塾自前で開発、自宅に持ち帰った仕事も自己申告で賃金がもらえます。取締役レベルの人間も各校舎の教壇に定期的に立つというルール。社員同士は仲が良いということはなく、会議での掴み合いは日常茶飯事。ところがなぜか適材適所な人員配置になっていて、生徒も合格者もどんどん増えていき、創業10年ちょっとで売り上げ数十億の会社になりました。
そのあと転職したB社は、老舗の専門出版社でした。社員同士は仲が良く、社内結婚率も高いのですが、社員同士の仲の良さが「お互いのやってることに疑問を持たない」という暗黙の協定を前提にしたものでした。そしてその風潮は「社員の和」を重視する2代目が社長になってさらに加速しました。
結局この会社はどうなったかというと、給与も福利厚生もことごとく切り下げられ、実家が裕福で実家から会社通いの独身女性や独身男性ばかりの会社になりました。しかも、「お互いの仕事にツッコミを入れないルール」なので、自分が担当した商品の売り上げも把握してません。つまり、家族持ちの営業マンや、自分の仕事の成果にこだわりのある編集長といった「守るべきものがある社員」はことごとくいなくなってしまいました。売り上げはどうなったか?3分の1になりました。
A社とB社を分けたものは何だったのでしょう? 業種の違い?社員の能力?経営者の能力の違い?
どれももちろん当てはまると思うのですが、個人的には、その会社のカルチャーが「仕事上の摩擦や衝突が、私怨(個人的な恨み)に直結しやすいかどうか?」というのがポイントだったのではないかと思います。
ある経営学の教科書にも出てくる有名なエピソードですが、アメリカの大手自動車の経営者が、製造現場を見て回った時に、ある職工から「俺の道具に触れるな」と怒鳴られてしまいます。普通の経営者なら「けしからん、奴をクビにしろ」となるでしょう。ところがこの経営者は「この現場は、信頼できる」と呟いだそうです。その後、この会社は全米有数のメーカーになりました。
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